なぜ、ビルの4階にある「浅草横丁」が強烈な集客力を誇っているのか?

 

「浅草ラブ」をアピールしてもらう

浅草横町を運営するのはHi-STAND(本社/東京都品川区、代表/戸田博章)。戸田氏はバーテンダーから転じて飲食業や飲食業プロデュースを行うスパイスワークスホールディングス(SWHD、後述)の前身に入社して、店舗運営からブランドマネージャーを歴任。2012年に独立し、2014年に会社を設立した。現在、飲食店19店舗、180人の従業員を率いている。

戸田氏が“ビルの4階にある横丁”の集客対策として考えたことは「TikTok、YouTubeでバズらせること」であった。戸田氏はこう語る。

「新しくできた施設がテレビで紹介されると40代50代の人がやってきます。しかし、MZ世代(ミレニアル世代とZ世代)といわれる20代から30代半ばの世代はTikTokとYouTubeから情報を得ている。そこでここでバズると『この風景と同化したい』ということで、そこに行く動機が強烈に高まる」

戸田氏は1981年1月生まれでいま41歳だが、ライフスタイルや考え方はMZ世代そのもの。このような意識をもって若い従業員を束ねている。この度浅草横町を運営することになって、「是非やってみたい企画」に取り組んだ。

「それは『浅草横町のアンバサダー募集』。オープンが7月1日で、その1カ月前の6月1日から8月31日まで『#浅草横町』『#浅草』の投稿をしてもらい、『どれくらい浅草ラブなのか』をアピールしてもらう。最初400人くらいのインフルエンサーから100人に絞りバズらせる。最終的に5人に絞る。このように、ここと浅草をバズらせることによって“横丁”が4階にあっても集客できるのではないかと思っていた」

この試みは思いのほか強烈な集客力をもたらしているようだ。それが月商計画に対して2倍のレベルで推移している状況に表れている。現在、食材のストックから人員配置に至るまで予想外のことが起きていることから、運営者としてはオペレーションを鍛える絶好の機会をもたらされた。

4階のお祭りがビルの中から外を巡る

浅草横町をプロデュースしたのは戸田氏の前職であるSWHD(本社/東京都台東区、代表/下遠野亘)。約100店舗の飲食店を運営するほか、飲食店の内装設計及び商業施設の環境デザイン、宿泊施設の運営、商業施設の企画プロデュースを事業としている。代表の下遠野氏は「飲食」に関わるトータルプロデュースが評判を呼び多方面で活躍している。

同社に東京楽天地から相談があったのは3年前のこと。同社では東京楽天地のグループ理念「東京下町の大衆に健全な娯楽を提供する」ということに大いに共感して、何とか具体化したいと考えた。しかしながら、物件が“ビルの4階”ということで大いに悩んだ。

そして。その解決策として打ち出したことは、「ビルの中と外の街が一体化すること」であった。下遠野氏はこう語る。

「日本の商業施設はこれまで外の空気を遮断して、一つのビルで完結していた。しかし、商業施設は街と一体化する必要がある。4階にある“ビル中横丁”でお祭りをテーマにするのであれば、そのお祭りはビルの全体を練り歩き、ビルの外にあふれ出すような感じで打ち出していかないと」

壁も天井の至る所が“お祭り気分”でにぎやかになっていて飽きさせない

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実際に浅草横町ではこのように下遠野氏がイメージする通りのことを実践している。7月1日のオープニングの時は、浅草サンバカーニバルが浅草横町から下の階にあるユニクロを巡って浅草の街の中を踊り巡った。その後は、よさこい、阿波踊り、エイサーなどが巡っている。

フロアの中にメインステージがあり定期的にイベントが行われ、踊りは下の階から外の街へと踊り巡る

フロアの中にメインステージがあり定期的にイベントが行われ、踊りは下の階から外の街へと踊り巡る

このビルにはファサードが国際通り方面と浅草寺側と二つあるが、エレベーターがある浅草寺側のファサードが浅草横町をアピールするものになっている。1、2階を占めるユニクロも浅草オリジナルの店になっている。こうしてビルは浅草横町と一体化している。

店舗の中央部にエスカレーターがあって、ここが吹き抜け構造となっていて混雑していても窮屈な印象を与えない

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