もちろん、山県の時代と現在とでは、時代状況も政治状況も大きく違う。それでも、安倍氏や菅氏がどんな政治を目指していた(いる)のかに、つい思いをはせてしまうのだ。ちなみに、この本にはこんなくだりがある。
彼らの政治支配は、彼らの権力意志を満足させるだけではない。支配的地位をあくまで守りつらぬくことこそ、彼らの信念によって真に義とされるのである。そのことは、彼らの闘志を鼓舞する。そして、彼らを狂暴にさえもする。歴代の「藩閥政府」が自由民権運動に対して加えた弾圧が苛烈残忍をきわめたのもまた、怪しむに足りないであろう。
うるさい国会も司法も無視し、何事も「行政の総合的判断」で決めてしまいたい。そんな「令和の超然主義」を地で行くような安倍・菅・岸田政権の性格をよく示したとも言える一場面だった。
弔辞が終わった後に、さらに驚く場面があった。会場からまさかの拍手が起きたのだ。
一応、ここは葬儀の場だろう。一体、この振る舞いは何なのだ。いくら何でも悪ノリが過ぎないか。読売新聞は「葬儀会場では異例の拍手に包まれた」と肯定的に記述していたが、これが令和日本の「普通」なのか。
「菅氏完全復活か!」とはしゃぐ一部報道を横目で見ながら、筆者は心底気持ちが萎えている。
image by: 首相官邸