9月21日に行った演説で、核兵器の使用について「ハッタリではない」と述べたプーチン大統領。ウクライナ4州の併合式典でも核使用を示唆しましたが、はたしてロシアによる核攻撃はあり得るのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、その可能性を検証したニューヨーク・タイムズの記事を翻訳する形で紹介。「ここ数週間が非常に危ない時期」であり、予断を許さない状況にあることを強調しています。
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予断許さないロシア核使用
ロシアが徴兵をはじめて多くの若者がロシアから脱出するために国境に殺到しています。
国内の不満は高まっています。
そしてプーチンが東部4州の併合を発表した直後、その戦略的要衝であるリマンからロシア軍は撤退せざる得えない状況になっています。
プーチンの面目が丸つぶれです。
そんな中でロシアによる核使用が現実の可能性として急浮上しています。
まさに「予断」を許さない状況です。
ニューヨーク・タイムズ、10月1日の記事から抜粋要約します。
参考:In Washington,Putin’s Nuclear Threats Stir Growing Alarm
9月30日の演説でプーチン氏は、米国とNATOをロシアの崩壊を求める敵と呼び、ロシアの領土(現在はウクライナ東部の4地方を含むと宣言)を守るために「利用できるすべての手段」を使用すると再び宣言した。
プーチン氏は、77年前にハリー・S・トルーマン大統領が日本の広島と長崎への原爆投下を決定したことを世界に想起させ、「彼らが前例を作った」と付け加えた。
10月1日には、ロシア南部のチェチェン共和国の強権的指導者ラムザン・カディロフが、プーチン氏はウクライナで「低収量の核兵器」の使用を検討すべきだと述べ、ロシアの有力者で初めて公然と核攻撃を要求した。
米国防総省は、2月のウクライナ紛争が始まったときよりも、今の方がはるかにその可能性を心配している。
屈辱的な撤退を繰り返し、驚くほど多くの死傷者を出し、ロシアの若者を徴兵するという不評を買った後、プーチン氏は明らかに、核兵器による脅威がロシアの力に対する敬意を回復するための方法であると考えている。
ロシアの軍事アナリストの中には、黒海のような遠隔地で戦術核を爆発させてデモンストレーションを行う、あるいは実際にウクライナの基地に対して戦術核を使用することを提案する人もいる。
プーチン大統領は先月、「これはハッタリではない」と述べ、核兵器の先制使用はロシアの軍事戦略に不可欠な要素であることを示唆した。
それに対して先週末バイデン大統領の国家安全保障顧問であるジェイク・サリバン氏は、核兵器の使用はロシアにとって「破滅的な結果」につながると答え、モスクワとの非公開の通信で、米国は米国と世界がどう反応するかを「明示してきた」と付け加えた。
元ロシア大統領で、プーチン大統領の安全保障会議のタカ派副議長を務めるドミトリー・A・メドベージェフ氏は先週「ロシアがウクライナに対して核兵器を使用せざるを得なくなった場合、ロシアへの直接攻撃は全面的な核戦争につながる恐れがあるためNATOが軍事介入する可能性は低い」と主張した。
プーチン氏が併合地域で屈辱的な敗北を喫した場合、米国政府は、プーチン氏が核兵器の使用を検討することを懸念している。
実際、ロシア軍は鉄道の戦略的要衝であるリマン(モスクワが併合した地域)から撤退しており、ロシアはウクライナ東部で地力を失いつつある。
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