マスク過信で密集の愚。日本がこの夏世界一のコロナ流行地になったワケ

 

マスクを過信しすぎて、“密集”を生み出していないか

一方、日本では「マスク対策」を過信しすぎて“密集”を生み出してはいないか。

コロナ禍直後、「3つの密」すなわち「三密」の回避がうたわれた。三密とは、「密閉」「密集」「密接」を表わす状況。

ところが、それがしばらく経ち、「とにかくマスクを」という“マスク大好きな”日本人がマスクを過信しすぎて、三密の回避を軽視しているようだ。

事実、世界ではこの夏でもリモートワークによる業務が進められているのだが、日本の商習慣ではリモートワークは軽視された。

さらに、そもそも老人保健施設や保育園など集団感染が生まれやすい施設の人員配置基準が日本は極めて緩く、もともとこれらの施設で“三密”が生まれやすい状況であることは間違いない。

また“日本独特”の感染対策として、最後までエアロゾル感染が無視された。新型コロナは空気中を漂う微粒子である「エアロゾル」を介して、感染するであろうことが示唆されている。

その場合、家庭用のマスクだと小さい粒子についてはシャットアウトできず感染対策をしては不十分。

そのため、WHO(世界保健機関)も、マスクだけでなく手指の消毒や距離の確保・換気・空気清浄機の設置などの対策が必要であると指摘。

しかし、日本ではとにかく“目に見える対策”すなわちマスクの着用だけが促進された感が否めない。

参院選終了までコロナ対策“放置”か

感染拡大の予兆はかねがねあった。実際、地方では感染の拡大が6月から始まる。たとえば島根県。6月28日に1日の新規感染者数が過去最多の350人に達し、7月14日にはその3.3倍の1,600人にまで拡大。

しかし政府の対策は鈍かった。政治ジャーナリストの泉宏氏は東京新聞(7月15日付)の取材に対し、

「岸田首相は、国民に行動制限への拒否感があるのを感じ取っている。選挙の前に国民に嫌われることはしたくない。だからウィズコロナで進めようと心に決め、行動制限もしない方針ありきでここまできた」

とし、コロナ対策について「何もしない」ことがもはや“参院選対策”であった可能性も。

ただ、日本は人口当たりの病床数では世界最多を誇るのにもかかわらず、最終的にコロナ病床に使用されたベッド数は、全体の3%にとどまる。

現行の医療法や感染症法は、日本の全病院の8割を占める民間病院に対して政府が一般病床をコロナ病床に転換するよう命令する権限は与えていない。

さらに問題の本質は、わずか300人ほどしかいない医系技官の官僚と“感染症ムラ”に住む住人たち。彼らが、感染症対策の決定権を独占してきたがために、コロナについての問題が改善されない。

医系技官の“天下り先”でもある保健所がPCR検査をコントロールしたいがために、PCR検査数がなかなか増えなかったのも問題だ。

引用・参考文献

(*1)「WHO “新規感染者は日本が世界最多” 1週間当たり約97万人」NHK NEWS WEB 2022年7月28日

(*2)「日本のコロナ感染者、世界最多 WHO発表に専門家『海外収束時に急増』1週間97万人」東京新聞 2022年7月28日

(*3)東京新聞 2022年7月28日

(*4)忽那賢志「マスクを着けている人が多い日本の新型コロナ感染者数が世界最多なのはなぜ?その2 ハイブリッド免疫とは」Yahoo!ニュース 2022年8月21日

(*5)忽那賢志、2022年8月21日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年10月23日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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