ゼレンスキーを待つ地獄。ロシアは本当に不利な状況に置かれているのか?

 

そして興味深いのは、ロシア国民からプーチン大統領への支持とウクライナへの攻撃への支持はここ最近、また回復基調にあることです。予備役召集を行った際には、国民にとって“政府がどこかで行う戦争”という他人事が、“自身の家族が戦地に送られるかもしれない”という自分事に変わって反対運動も起こりましたが、すでに“プーチン大統領とこの戦争に反対するロシア人”は国外に出ており、国内に残った国民は召集にも応じていますし、ウクライナによるロシア攻撃のあとは、最近、ウクライナのレズ二コフ国防相も認めたように、ロシアへの攻撃をウクライナが行ったことがわかったことで、ウクライナを徹底的に叩く必要性を叫んでいると言われています。

ゆえに、ロシア政府は一切国境を閉鎖しておらず、ロシア国民の周辺国への移動も制限していませんが、一時期のようにロシア脱出を図るロシア人は出ていないため、ロシア政府の友人の表現を借りると、「ロシアは通常運転を行っている」のだそうです。

プーチン大統領はそのような声に押され、口では核兵器の存在を強調しつつも、通常の戦略に則った攻撃のステップを着実に実行しているようです。

5つ目は【欧米諸国のウクライナ支援疲れが表面化してきた】ことでしょう。

バイデン政権は、近々、ウクライナからの要請を元に、パトリオットミサイルを供与し、ロシアからのミサイル攻撃に対する防空力を高める動きをしているが、それが可能なのは2022年内だと思われます。そして来年初めに新しい議会が開かれると、予算権を握る下院のマジョリティを共和党が握ったことで、アメリカによるウクライナ支援(財政支援)にはブレーキがかかることになるでしょう。しかし、軍事支援については、共和党もバックに軍事産業がいるため、恐らく変わることはないと考えますが、欧州からの支援が滞る中、アメリカ一国による支援が突出していることに危機感を覚える声が国内で高まっている様子です。

しかし、先述の通り、欧州各国にも今、結束してウクライナをバックアップできる状況ではないことと、ウクライナ戦後を見込んで、すでに動き出している各国の思惑とは違い、ウクライナが頑なに停戦協議を拒む姿に対して「もうこれ以上は支えきれないし、ひどいインフレとエネルギー危機、食糧危機に直面する中、さらなる支援を実施することを国内向けに説明できない」というジレンマから、じわじわとウクライナからの要請から距離を置いています。

2023年、ロシアによるウクライナ侵攻を機に生じた世界的なインフレとエネルギー危機、食糧危機は、世界を苦しめ続けることになると思われます。

その中でもアメリカは政策金利の利上げも一段落し、来年には経済も回復することでインフレも収まるとの見込みがあり、日本ものらりくらりと乗り越えるという見立てがされていますが、欧州については一人負けの様相で、来年の冬にはこのままいくと地獄を見る可能性があるとの分析が出ています。

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