ゼレンスキーを待つ地獄。ロシアは本当に不利な状況に置かれているのか?

 

一つ目は【停戦協議がしばらくは再開される見込みがない】と思われることです。

皆さんも以前よりご存じの通り、ゼレンスキー大統領は「ロシアに奪われた領土を取り戻すまでは戦い続ける」と宣言し、前線にいる兵士たちと国民を鼓舞して徹底抗戦を呼びかけていますが、それは停戦に向けた働きかけという観点からは、もしかしたら適切ではないかもしれません。

またウクライナのレズ二コフ国防相は、ウクライナの顔として各地を回り、欧米諸国への支援の上積みを訴えていますが、その際、「ロシアが侵略したすべての領土を取り戻すまでは、協議のテーブルに就く用意はない」との立場を繰り返し、こちらでも徹底抗戦の構えを崩していません。

母国を隣国の暴君に侵略され、その不条理に立ち向かい、勇敢に戦うのだという姿勢は、個人的には心から支援したいと感じ続けていますが、紛争調停のお手伝いをする身としては、「そういいつつも、水面下では対話のチャンネルをキープしておいてくれるといいのだが…」と切に願っています。

しかし、残念ながらその“直接対話のためのチャンネル”は、非公式なものも含め、知る限り全く存在しておらず、今のところ、直接的な対決(軍事的な衝突)による反転攻勢しか策が見えておらず、していることとしては、そのキャパシティーを支えている生命線とも言える欧米諸国、特に米国からの支援が遅延なく到着することに賭けているようにしか見えません。

当の米国も先日のポーランドミサイル落下事件以降、ウクライナを見捨てるところまで行っていませんが、バイデン大統領からの“ロシアとの協議再開”の要請も拒絶したことを受け、アメリカは独自にロシア政府との協議に乗り出しています。詳細についてはお伝え出来ないのですが、“ウクライナ戦争の終わらせ方”についての話し合いでは、いろいろと具体的な内容も出てきているようです(聞いている内容の中には、私は納得できない内容もたくさんあります)。

そのような姿勢にウクライナ政府は苛立ち、怒りも爆発させているようですが、欧米諸国からの対話への呼びかけにも応じず、代わりに「この戦争は、ウクライナの戦争」と言い放つ姿勢には、NATOサイドの結束にもずれが生じてきているようです。

ロシアとウクライナの間の協議・仲介の任にフランスがずっと関心を示していることは変わっていませんが、この姿勢がドイツのショルツ首相のフランス離れを引き起こし、マクロン大統領の取り組みに対抗するかのように、同じ日にG7首脳との電話会議を主宰し、対ウクライナ支援の重要性(資金支援)を共有するという動きに出ています。

ただ懸念は、欧州各国はすでにウクライナ支援を、軍事面でのサポートから、紛争終結後のウクライナ再興に重点を移しているように思われます。

そしてそれは、“今のウクライナの苦境に対する支援”ではないという点がとても気になるところです。

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