ゼレンスキーを待つ地獄。ロシアは本当に不利な状況に置かれているのか?

 

三つ目は【ロシア・プーチン大統領が仕掛けているウクライナ国民の日常の破壊は非常に長期化し、心理的に長い影を落とすことになる】と思われることです。

ついに意図的にウクライナのエネルギーインフラなどを破壊するように命令しているとプーチン大統領が自ら認めましたが、インフラへの徹底的な攻撃やポーランドからの補給路の遮断を目的とした攻撃は、着々と、そして黙々と進められています。

この攻撃は、核弾頭も搭載可能な高性能誘導ミサイルであるX55によって行われており、ピンポイントでインフラ施設、石油備蓄施設、そして鉄道網、道路網という補給路を破壊しています。

結果、1日に1,000万トンの補給が必要とされる支援のうち、9割を担うポーランド経由の補給手段に対する破壊が最優先され、リビウ周辺は集中攻撃に晒されています。あまり報道されませんが、この補給路の修復は追いついておらず、また代替案も見いだせていない状況のようです。

確実にロシア軍による攻撃は、軍事戦略上の第1段階と言える「軍への直接的な攻撃」から第2段階の「国民生活の維持に必要な機能、つまりインフラ施設の破壊」に移されていると思われます。

結果、ウクライナ国民の生きる希望を打ち砕き、飢えと寒さを通じて、国民を絶望の底に叩き落するという恐ろしい作戦が進められています。そして、補給キャパシティーの著しい悪化と、物資の不足は、ゼレンスキー大統領に究極の選択を迫ることになります。

これまでの発言通りに「ロシアに奪われた領土を取り戻し、ロシアを追い出すまでは徹底的に戦う」のであれば、限られた物資は前線の軍に優先的に供給されることとなり、その結果、一般市民は飢えと寒さから死を迎えることになります。

逆の選択をしたら、国民からの支持は上がるかもしれませんし、共に戦うというムードは演出できるかもしれませんが、前線で多大な犠牲を強いられながら祖国防衛のために戦う兵士たちを見捨てることになってしまいます。

どちらに向かっても、ゼレンスキー大統領に待つのは地獄というのが、プーチン大統領とロシア軍が実行している第2段階から第3段階、つまり【リーダーシップの破壊】と言われる戦略です。

ロシアからの天然ガス供給がストップし、エネルギー危機が生じるとの恐れからLNGsなどを世界中からかき集めることで何とかこの冬は越えられそうな欧州各国ですが、ウクライナにはその余力はなく、じわじわと生存のためのChoke pointを抑えられ始めています。

かつてのナポレオンによるロシア遠征や、ナチスドイツによるロシア侵攻をロシアの寒い冬が阻んだという話は有名ですが、その教訓から、戦略上「冬将軍は、補給路を確保しているものに味方する」と言われます。

この点では、ウクライナからの反転攻勢を受けている南部ヘルソン州も、ドンバス地方も、そしてクリミア半島も、ロシアからの補給路はまだ確保されており、とても変な気分ですが“ウクライナ軍による攻撃に対して冬ごもりをして堪える”のはロシア軍と当該地域の勢力という構図が見え、先ほどの戦略上では「冬将軍はロシアに味方する」のかもしれません。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • ゼレンスキーを待つ地獄。ロシアは本当に不利な状況に置かれているのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け