では“途上国”はどうでしょうか?
エネルギー価格の高騰と、欧州のなりふり構わない天然ガスの買い占めによって苦しめられましたし、ウクライナの穀物の輸出が滞って食糧危機も叫ばれましたが、その穴をなんとロシアが埋めだしました。
小麦をはじめとする穀物については、ウクライナと1位2位を独占する穀倉地帯を要していますし、欧米がブロックしたロシア産の石油天然ガスはインドやトルコを経由して南アジアやアフリカ、そしてラテンアメリカ諸国に安価で提供され始めたことで、危機を脱したとの見方が強くなってきました。
これらの国はロシアが戦争を起こし、ウクライナに侵攻したことについては一様に非難していますが、世界的な危機を引き起こしたのは、欧米諸国とその仲間たちによる一方的な制裁による副作用という理解が共有され始め、感情的な側面での国際情勢の勢力図が書き換えられ始めています。
戦争により、今年は小麦などの穀物の作付けができなかったウクライナは、もちろん来年も収穫を望むことは出来ませんが、侵略したロシアは通常運転を続けていますので、来年以降の食糧マーケット(穀物など)の様相も変わってくるかと思われます。
外貨へのアクセスは、欧米諸国による制裁で切られていますが、実際には中国やトルコ、南米諸国、そして中東アラブのみなさんがカバーしており、ロシアは収入源を絶たれている状況ではありません。また在庫の枯渇が噂される武器弾薬も、イラン・北朝鮮からの供給網が出来ていますし、半導体やその他の資材もあるルートから入ってくるようなことが起きれば、ロシアの軍備の再増強も行われるかもしれません。
最近行った軍事専門家や戦略家を含む検討を追うと、ロシアが本当に不利なのかが分からなくなってきましたが、皆さんはいかがでしょうか?
来週末に迫ったクリスマスイブには、ロシアがウクライナに侵攻してから10か月が経つことになりますが、ウクライナをはじめ、世界中で起こっている絶望的な案件に解決策が与えられるきっかけが見つかればと切に願います。
以上、国際情勢の裏側でした。
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