2023年、あまりにも「異常」な日本の雇用環境を変えるために徹底すべきこと

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年頭の記者会見で「賃上げ実現」への強い思いを語った岸田首相。果たしてそこには、中小企業の従業員や非正規労働者の賃上げも含まれているのでしょうか。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で、健康社会学者の河合薫さんは、今年4月に中小企業も対象となる残業代の割増率アップに期待しつつも、残業代込みでしか当たり前に生活できない人が多くいる日本の現状を問題視。企業側の様々なサポートの動きもほとんどが正社員対象であるとして、非正規差別をなくすために必要な3つの決め事があると訴えています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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割増賃金率アップ、男女賃金の差異、非正規問題…。2023年、本当に変わろうとしてますか?

2023年がスタートしました。今年は、昨年のパワハラ防止措置の義務化や育児介護休業法などの改正に続き、これまでの働き方を変える法律が施行されます。

もっとも注目すべきは、割増賃金率のアップです。長時間労働の抑制という観点から、2010年4月以降、大企業においては月60時間超の残業について、その割増率が50%となっていますが、中小企業にも4月1日から適用になります。

働く人には、過去3年間の賃金請求権が発生しますので、残業代などの不払い問題への注目が高まり、トラブルが増加するかもしれません。

といっても、そもそも日本の長時間労働は異常でしたし、残業込みの賃金として月収が支払われていたのもおかしな話です。

コロナ禍では「残業代を前提に生活している人たち」が、厳しい生活を強いられました。マンションのローンが払えなくなり、泣く泣く手放した人も少なくなかった。本来、過重労働は「働く人の健康」とセットで考えるべき問題なのに、常に「賃金」とセットで語られてきてしまったのです。

長時間労働で失われた命を鑑みれば、遅きに失する感ありありですが、4月からの施行により、世界の常識が日本にも通用するように願うばかりです。

当然、長時間労働が抑制されれば、残業込みの賃金は減ることになります。企業が賃上げをしない限り、生活苦を訴える人は増えてしまうでしょう。

東京商工リサーチが実施した2023年度の賃上げに関するアンケート調査によると、2023年度に賃上げを実施する予定の企業は81.6%。規模別には大企業の85.1%に対し、中小企業は81.2%と若干下がりますが、2年連続の8割台です。引き上げ幅については「2~5%」が41.5%で最も多く、「2%未満」35.8%、「5%以上」4.2%と続いています。

また、帝国データバンクの調査によれば、「2022年11月の段階で従業員に対して特別手当(インフレ手当)を支給した企業が6.6%あり、検討中なども加えると26.4%になる」とされています。

この程度の賃金アップでで日本の賃金が先進国並みになるとは思えませんが、企業にはがんばって賃上げをしてもらいたいです。

ちなみに2021年度の日本企業の内部留保の額は、516兆4,750億円で過去最高を記録しています。「たくさん貯めこんでいるのに賃金に反映されていない!」という意見に対し、「内部留保は必要なものだ!」と反論する識者も目立ちます。しかし、「三方よし」こそが生産性向上の起点ですから。経営者には「賃上げをなぜ、するのか?どうすればできるのか?」と筋道をたてて考えていただきたいです。

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