「持ち家vs賃貸」論争に終止符か。投資のプロが「日本の住宅ローンは危険」と断言する理由

 

厳しい経済情勢下で住宅ローンの返済期間が延びている!

最近は、金利引き上げに戦々恐々としている人が増えていますが、それとともに危惧されるのは、住宅ローンの借り入れ期間が延びていることです。

住宅金融支援機構の調査によると、2019年度の新規貸し出しの約定貸出期間は平均27・0年でした。

3年前の2016年に比べて1年半ほど延びています。

借入期間が延びればその分、総額での 利息分も増える ことになります。

また、新築の場合、昨今原材料や人件費の高騰もあり、物件価格も高騰しています。

それだけ借入額そのものも増えているわけです。

さらに問題なのが、購入時の年齢が上がっていることです。

国土交通省『住宅市場動向調査』によると、2009年には首都圏の分譲住宅購入者(世帯主)の平均年齢は37.6歳でしたが、2021年では42・6歳になっています。

昔は、ローン完済時の年齢が60歳そこそこを想定していましたが、現在金融機関によっては、 完済時年齢が70歳以上 を超えて想定しているものまで沢山あります。

65歳の第2定年退職後の乏しい年金収入 になってから、いったいどうやって住宅ローンを返していくつもりなのでしょうか。

そのせいか、 親子の2世代にわたる超長期ローン をすすめる金融機関までもが増えています。

2009年から2021年までの12年間で、住宅購入の年齢タイミングが5年も遅くなっているのは、由々しき事態なのです。

当然、完済時期も後ろ倒しになっているわけだからです。

40代前半の男性会社員(正社員)の平均給与(所定内給与額)は月36・4万円で、年収は606万円です。

返済負担額(年収に占めるローン返済額の割合)の上限は35%といわれていますが、適正は20~25%といわれています。

退職金を当てこんで、40代からでも住宅ローンを組もうとする人も少なくないわけです。

しかし、退職金でローンを返済するのは、せいぜい4分の1ぐらいまでにしたほうがよい──というのが、老後資金を見据えた際の賢明な考え方です。

住宅ローンを一気に完済することで、その後の老後資金がなくなったら大変だからです。

その時はその時で、何とかなるだろう──などと思っていても何ともならないからです。

老後には、年を重ねるごとに、医療費や介護費、住宅の修繕費や葬祭費など、いろいろかかってきます。

臨時支出に備えるべく、退職金は出来るだけ残すことが、安定した老後生活にはベターなのです。

42歳で3000万円の住宅ローンを1%の固定金利で30年借りた場合、月々10万円の返済を行っていても、60歳定年時には、1300万円の残債が残ります。

そして、65歳の年金受給開始時でも700万円程度が残るのです。

収入も乏しいのに、どうやって住宅ローンを返済するのでしょうか。

リバースモーゲージという、いったん家を売却し、死ぬまで賃料を支払う──という方法もありますが、それは家の価値があっての話です。

たいてい、住宅ローンを完済できる頃には、肝心の家のほうがボロボロになって、価値がない状態──というのが通り相場なのです。土地値が低ければ、絵にかいた餅でしょう。

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