強烈な皮肉。石破茂が10年ぶりの国会質問で岸田首相に放った言葉

 

【5・文民統制のあり方】

かつて竹田五郎さんという統幕議長がおられました。当時は統合幕僚会議議長といっていました。空将であります。自衛官の最高位の方だ。この方が、ある雑誌のインタビューに答えて、専守防衛というのは極めて難しい防衛姿勢である、国土が戦場になるリスクもある、そして、同じ効果を得ようと思えば物すごくお金がかかるのだというふうに雑誌のインタビューに答えられました。鈴木善幸内閣の頃であります。防衛庁長官は大村襄治先生であったと記憶をいたしております。事実上解任になりました。

その2年前のこと、陸将でありましたが、栗栖弘臣さんという統幕議長がおられました。この方が、有事法制がなければ自衛隊は超法規的に動かざるを得ない、だから有事法制をきちんと整備をしなければならぬという発言をしました。この方も事実上解任になりました。

私は、こういうのが正しい文民統制の在り方だと思っていないのです。私は、制服組、いわゆる軍人、日本でいえば自衛官、実際に私も安全保障には随分関心を持ち、それなりに勉強もしてきました。しかし、命を懸けて、自衛隊員の服務の宣誓どおりに、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって職務の完遂に務め、もって国民の負託に応える、その言葉のように船に乗ったこともなければ、飛行機に乗ったこともなければ、戦車に乗ったこともない。命を懸けてその職務を全うするのが自衛官たちであります。

私は、軍事専門家たる自衛官が国会においてきちんと証言ないしは答弁することが正しい立法府による文民統制の在り方だと思っています。制服を着た者が国会に来ないことが正しい文民統制だと私は全く思っておりません。

【6・必要最小限度とは】

その上で、専守防衛というのは如何なる軍事的合理性を持つものかということは検証できていないのです。

ある方がこのように言っておりました。専守防衛というものの本質は持久戦である、いかにしてアメリカが来援するまでの間持ちこたえるかということが大事なのだと。それはそうでしょう。でも、そのためには、人員、燃料、弾薬、食料、これが十分でなければ持久戦を戦うことはできない。そして、我が国は国土の縦深性を欠いておりますので、国民保護ということを徹底していかなければ、それは専守防衛なぞというものは貫徹できるものではございません。

かつて自衛隊でこんな川柳がはやったことがあるそうです。たまに撃つ弾がないのが玉にきず。冗談ではない。だけれども、そのような川柳が歌われるような、そういうような時代がありました。今そうであってはならないとは思っております。

専守防衛というのは極めて難しい。これをどうするかということであります。専守防衛ということを説明するときに、必要最小限度という言葉が使われますね。必要なのは分かる。じゃ、何が最小限度なのだということ、これをきちんと測るような便利な物差しが世界のどこにもあるわけではございません。ここからここまでは必要最小限度よと。装備もそうです、権限もそうです。必要最小限度だからという言葉を使うのは、自衛隊は戦力ではない、なぜ戦力ではないか、必要最小限度だからだ、必要最小限度だから戦力ではない、戦力ではないから陸海空軍ではない、こういうロジックが使われますね。私もそのような答弁をしたことが何度もございます。

この専守防衛という考え方と、自衛隊は戦力ではない、軍隊ではない、このロジックは非常によく似ているのですね。だけれども、北朝鮮に対して必要最小限度のものが中国やロシアに対して必要最小限度かというと、そんなことはあり得ないのだ、防衛力というのはそんなに簡単に増勢できるものではないのだということであります。

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