糖質制限食の提唱医が考察。哺乳類の母乳に「乳糖」が含まれるワケ

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生まれたばかりの赤ちゃんの栄養源「母乳」。いまではミルクもありますが、長く唯一の栄養源だった母乳の成分を示し、その意味を考えるのは、糖質制限食の提唱者として知られる江部康二医師です。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では、特に母乳の中の糖質に「ガラクトース+ブドウ糖」で構成される「乳糖」が80%以上含まれていることに注目し、考察を深めています。

母乳の栄養

今回は、母乳について考えてみました。日本食品標準成分表2015(七訂)によれば、人乳100gあたり、

  • 熱量 65kcal
  • 炭水化物 7.2g
  • 利用可能炭水化物(単糖当量)6.7g
  • 脂質 3.5g
  • タンパク質 1.1g

くらいです。

糖質が総カロリーの44.9%、脂質が総カロリーの48.46%、タンパク質は総カロリーの6.77%です。糖質もそこそこ含まれていますが、かなりの高脂質食でもあります。

宗田先生のご研究により、新生児のケトン体値は、平均240.4μmol/L(312例、生後4日)であり、成人基準値(85μmol/L以下)の3倍-数倍レベルです。

新生児のケトン体はこのように高値であり、エネルギー源として利用されています。母乳が高脂質食なので、母乳育児中の乳児の血中ケトン体値は、成人基準値よりはかなり高値となります。

一方、糖質も、日本糖尿病学会推奨の50-60%には及ばないものの、そこそこの含有量です。乳児の肝臓の糖新生機能はまだ未熟なので、母乳から一日何回も糖質を補充して、特に赤血球などのために血糖値を確保する必要があるのでしょう。

ヒトが吸収できる単糖には、ブドウ糖、果糖、ガラクトースがあります。人乳あるいは哺乳類の乳に、乳糖が含まれていることの意味は何か考えてみました。乳糖は「ガラクトース+ブドウ糖」で構成されています。エネルギー補給だけならブドウ糖だけでもいいようなものなのに、ガラクトースが必要なのには、理由があるようです。

乳糖が母乳の糖質の80%以上で、全エネルギーの約38%を占めます。乳糖以外には微量のグルコース、ガラクトース、種々のオリゴ糖などを含有しています。

母乳は乳腺で血液からつくられます。乳糖分のエネルギー量を全てブドウ糖で賄うとすれば、かなりの高血糖になり、母体にとって危険なので、ガラクトースを加えて乳糖としたのだと思います。

以前、獣医さんのサイトでみたのですが、乳糖(ガラクトース+ブドウ糖)の中のガラクトースが、免疫物質を母乳から乳児に移行させるのに有用とされていますので、その意味もあるかもしれません。

また、ガラクトースは、急速に発達する乳児の中枢神経系の完成に重要な役割を果たすとされています。

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(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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