「バフムト陥落」でプーチンの勝利。それでもウクライナ戦争を終わらせない米国が覇権を失う日

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5月29日に公開された動画メッセージで、近い時期の反転攻勢開始を示唆したゼレンスキー大統領。しかしながら「ウクライナ戦争はすでに決着済み」という見方もあるようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、バフムトの陥落でロシアの勝利が決定したのにもかかわらず、この戦争が意図的に長期化されている理由を詳しく解説。その結果として今後の国際社会にもたらされる「新しい枠組み」についても考察しています。

ウクライナに集まる武器弾薬を破壊。露が企む西側全体の非武装化

5月20日、ロシアの民兵団(傭兵団)ワグネルと政府軍が、ウクライナ戦争の最後の激戦地といわれたドネツク州のバフムト(アルティモフスク)を陥落(解放)した。

(この街は帝政時代にバフムトと呼ばれ、ソ連がアルティモフスクと改名し、ウクライナの米傀儡・反露政権が2016年にバフムトに戻した。露側はアルティモフスクと呼び続けている。米傀儡・反露の日本ではバフムトと呼ばれている。今は併合されてロシアの一部だからアルティモフスクと呼ぶのが正しいが、私は記事を短くしたいので短い方のバフムトを使う)

Ukrainian military official confirms Russian victory in Bakhmut as Wagner head announces city has been taken

バフムトはドネツク州の交通の要衝で、ウクライナ領だったドネツク州を昨年9月末にロシアが編入した時までウクライナ軍が駐留していた。その後、ロシア軍とワグネルがバフムトを包囲してウクライナ軍を掃討していった。

ウクライナ軍は劣勢で勝てないのに、徴兵したばかりで戦い方を知らない新兵たちと、米欧からもらった武器弾薬を大量につぎ込み続けた。優勢な露軍に狙い撃ちされ続け、ウクライナは常に兵士と武器弾薬車両など戦争の道具が足りない状態に陥った。

Putin Congratulates Wagner By Name For 1st Time As Ukraine Seeks To Reframe Bakhmut Narrative

半年間の激戦で、ウクライナ軍は6万-10万人の戦死者を出した。ウクライナ軍は、他の戦場でも兵士と武器弾薬車両を大量投入して露軍に破壊殺戮され続け、徴兵しても兵力が足りない。徴兵したばかりの兵士を数日間の訓練だけで前線に送り出してどんどん戦死させてきた。支援してきた欧米も、軍事品の在庫が払底してきている。

バフムトの戦闘のほとんどは政府軍でなくワグネルが行った。その指導者プリゴジンによると、224日続いたこの戦闘でのワグネルの戦死者は2万人だった。ウクライナはロシアの3-5倍の戦死者を出している。欧米が大量の兵器を送ってもロシアの優勢は崩れない。

Prigozhin Says 20,000 Wagner Fighters Were Killed in Bakhmut Battle

ドイツの諜報長官が最近、ロシアは昨年来の戦争でほとんど疲弊・不安定化しておらず、この先もずっと戦争を続けられる国力や民意を維持していると認める分析を発表している。

ウクライナ軍よりも露軍が甚大な損失を被ったという報道は、米国側の歪曲と、露側の「偽悪戦略」の産物だ。

Russia able to conduct its special military op for a long time – German intelligence chief

5月24日にはロシアの警察がバフムトに入って機能し始め、治安の安定化や地雷の撤去、瓦礫の片付けなど都市機能の再建が開始された。

ウクライナ国防省は「バフムトはまだ陥落していない。戦闘が続いている」と発表し、米国側マスコミがそれを喧伝した。しかし、ゼレンスキーの側近はバフムトの陥落を認めた上で「必ず奪還する」と言っている。

Russian police begin work in Artyomovsk

実のところ、奪還は無理だ。ウクライナ軍は、戦闘技能を持った人の多くが戦死・負傷し、戦争継続が難しくなっている。先日は軍の総司令官(Valery Zaluzhny)が負傷して交代が必要になったが、後継の人材がいない状態だ。

Ukrainian Top General’s Replacement Would Likely Have to Be Vetted by US

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