パレスチナ問題の仲介にまで乗り出した中国
しかし、中国はサウジアラビアとイラン以外の国々にも接近を試みている。4月、中国の外相は断続的に続くイスラエルパレスチナ問題で双方の外相と個別に電話会談し、中国がサウジアラビアとイランの和平で主導的役割を果たしたことを強調する形で、中国がイスラエルパレスチナ問題の和平交渉再開で支援する用意があると双方に伝えた。
これについてイスラエルの外相は、緊張緩和へ向けて取り組んでいるが問題の短期的な解決は難しいとの認識を示した一方、イランによる核兵器保有を阻止するため中国が積極的な役割を果たすことを期待すると中国側に伝えたという。
こういった形で、中国は中東が抱える諸問題へ関与する姿勢を示すことにより、サウジアラビアやイラン、イスラエルやパレスチナなど中東諸国から信頼を得ようとしているのだ。そして、経済エネルギー分野で中国はイラク、イエメンなどにも最近接近する姿勢を示しており、今後中東で中国の影響力がよりいっそう強まる可能性がある。そして、これはこれまで中東で存在感を示してきた米国の衰退を示すものでもある。
中国が描きかねない日本にとって最悪のシナリオ
しかし、中国が主導する中東は、石油の9割を中東に依存する日本にとって極めて危険な環境だ。米中対立が深まり、今後台湾有事が到来しようとするなか、日中関係は間違いなく亀裂が長期的に深まる。そうなれば、中国はあらゆる手段で日本に対抗措置を取ってくることから、1つに日本の心臓部分に攻撃を加えてくる恐れがある。すなわち、それは日本向けの石油輸出制限を中東諸国に要請するシナリオである。
石油輸出停止という手段だとあまりに露骨過ぎ、諸外国から中国批判が出る可能性もあるので、現実問題としては、日本が買う価格以上の値段で中国が買い取り、それによって日本向けの輸出量を減らすなどが考えられるが、中国が覇権を握る中東は、日本のエネルギー安全保障にとって新たな問題となろう。
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