統一教会や創価学会にはない。「日蓮会」が見せた信仰の強さと恐さ

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昭和初期、日本がファシズム化していく中で、弾圧を避けるため多くの宗教が国家におもねっていった歴史があります。そうした動きに反発した「日蓮会」による「死なう団事件」について伝えるのは、メルマガ『佐高信の筆刀両断』著者で、辛口評論家として知られる佐高さんです。過酷な言論弾圧、宗教弾圧の中でも権力に抗った日蓮会の人たちの信仰の強さと恐さは、現代の統一教会や創価学会にはないものとして、特高警察を告訴した創設者・江川桜堂の言葉を紹介しています。

信仰の強さと恐さ

統一教会の問題に関連して「エホバの証人」が話題になっても、その信者たちは「ハイル・ヒトラー」と言わず、兵役を拒否した上にヒトラーに抗議の手紙まで出し、片っ端から収容所送りにされて800人余りが殺されたので好感を持っていたのだが、信者二世にとっては“強制”という点で同じなのだろう。

1937年(昭和12)2月17日、国会議事堂、外務次官邸(首相官邸と間違えた)、宮城前、警視庁、内務省で「日蓮会殉教青年党」の5人が切腹した。いわゆる「死なう団事件」である。

『追いつめられた信徒』(講談社文庫)と題して保阪正康が彼らについて書いた本は、最初、れんが書房から1972年に出された。その半年後、「よかった、よかった。誰かがいつの日にか、われわれのことを正確に書きのこしてくれると思っていた」と涙を流して喜んだ信徒の1人が自決した。

死なう団事件は、5・15事件、神兵隊事件、2・26事件とともに当時の「四大事件」と言われたが、保阪は「ただ彼らは、青年将校や右翼青年が外にむかってテロやクーデターまがいの行動を起こしたのに反し、ひたすら内にむかって自分を責めていった点で異なっている。一身を賭して何事かを世間に訴えようとする、その行為は、権力者を諫めるための焼身自殺にもつうじている」と指摘している。

昭和のファシズム化で、神社神道は別格として、教派神道、仏教、キリスト教が“公認”され、宗教活動上の特権を与えられるかわりに、天皇制国家への奉仕と政治的な国民“善導”の役割を与えられた。これに反発して江川忠治(桜堂)が始めたのが日蓮会である。日蓮主義に拠って桜堂は激しく既成の宗派宗教を攻撃した。そして、その戦闘性と日蓮の「不惜身命」の教えが凝結して、青年部の次の宣言となる。

我が祖国の為に、死なう!
我が主義の為に、死なう!
我が宗教の為に、死なう!
我が盟主の為に、死なう!
我が同志の為に、死なう!

白い羽織に黒い袴で、「死なう!死なう!」と叫ぶこの不気味な集団を特高警察は検束し、女性信者も含めた団員に拷問を加えた。

それを告訴し、警察とケンカをしても損をするだけだと言われた桜堂はこう反論する。

「お言葉を返すようですが、日蓮上人は時の幕府に可愛がられたことがありましたでしょうか。日蓮上人に直参するわれわれは、お上に可愛がられようなどとはさらさら考えていません。また全滅を覚悟で闘うとは、まさに呆れたものだという意見もあるそうですが、死なう団は死なうの実行団体です」

当時の過酷な言論弾圧、宗教弾圧の中での抵抗である。あの暗い時代とは比較にならない現在の状況下で、統一教会も創価学会(公明党)も「お上に可愛がられよう」としている。それこそ呆れたものである。

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