安倍氏祖父を破って宰相に。今こそ見直されるべき「自民リベラル総理」の名

 

宏池会は保守リベラルの原点に戻れ

ここ10年来の自民党政治がギスギスして何ともシラケたものに成り果てたのは、安倍晋三の幼稚なタカ派路線を抑える立場であるはずの宏池会系を中心とする大人のハト派がほとんど雲散霧消し、逆に安倍を支えたり煽ったりする役回りを演じてきたことによるところが大きい。麻生派を率いる麻生太郎は、副総理や副総裁として安倍に密着し、「北朝鮮の武装難民が離島に押し寄せる」とか「台湾有事は間近で、それは直ちに日本有事になると覚悟せよ」とかいったデマゴギーを振り撒く発信源となり、岸田政権に安倍でも着手できなかったほどの大軍拡を実行させる煽動者となっている。当の岸田も、第2次安倍政権で4年8カ月も外相を務めてひたすら従順に振る舞って「禅譲」を期待するという、政策も主張もない骨抜きぶりを晒し、これのどこが「宏池会」なのかと言われ続けて今日に至っている。

そうした宏池会の壊滅状態の中で、岩屋毅は数少ない宏池会系の生存者と見られている。彼は鳩山邦夫の秘書から1990年に初当選し、宮沢喜一時代の宏池会に所属した。自民党を離党して新党さきがけに馳せ参じ、後に復党してからは河野洋平の「大勇会」、それを引き継いだ麻生の「為公会」に属しているが、麻生や岸田とは雲泥の差の生粋宏池会で、6月14日付毎日夕刊でのインタビューでは次のように語っている。

▼〔自民党の外交部会などで「護衛艦の台湾海峡派遣」などと公然と語られていることに対し〕私は異常なことだと思います。政治が本来なすべきは国際政治や外交、経済、文化交流など、あらゆる手段で緊張を緩和し、危機を回避することです。私も18~19年に防衛相を務めました。防衛力は安保の重要な柱の1つではあるが、それが全てではないのです。

▼〔安倍・岸田の「防衛費の対GDP比2%への倍増」にも疑問の声を上げ続けたが〕国策として決まったことで、今さら異を唱えるつもりはありませんが「数字ありき」の印象がぬぐえません。自衛隊の現状の規模で「5年間で43兆円」もの予算を無理なく消化できるのか、という課題もある。日本の財政状況を考えれば背伸びをしているとも思います。くどいようですが、防衛力で全てが解決するわけではないんです。

▼軍拡競争の果てによりよい国や世界ができるとはどうしても思えません。私は学生時代から元首相の石橋湛山先生に傾倒してきました。あの戦前の厳しい時代に軍備偏重や膨張志向を批判した。その影響はあるかもしれない。

▼林芳正外相にはお伝えしましたが、中国に不満があれば会って話をすればいい。人間だって、離れて悪口を言い合えば関係は悪くなる一方ですよね。意見の違いは誰にでもある。会って、意見を交わすことで緊張は緩和されるのです。かつて周辺の国々に迷惑をかけ、敗戦の憂き目を見た国として、日本が今どういう役割を演ずるか、冷静に考えることが大切です……。

全面的に賛同する。是非とも林と手を組んで本当の宏池会を復興させてほしい。

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