世界中が大迷惑。ウクライナ戦争の原因まで作った“戦争屋”アメリカの害悪

 

「西側の盟主」の立場の心地よさが忘れられない米国

ずいぶん屈折した論理の運び方で、あっちの壁にぶつかったと思えばこっちの電柱に擦ったりする酔っぱらい運転のようにさえ見える。

第1に、プーチンや習近平が世界の現状認識の基本として「多極化した世界」「多極システム(体制)の構築」などの言葉を多用し強調しているのは事実であり、そのことの中に対米批判が込められているのは事実であるけれども、それは「すでに世界は一極覇権主義の時代を卒業して21世紀の多極化した世界に向かっていて、そこでは問題別のまさに多種多様かつ柔軟な多極システムによって世界の様々な課題の解決を図っていく新しいルールや仕組みを創り出していくことが必要だと言うのに、米国はいまだに20世紀的な『西側の盟主』の立場の心地よさを忘れられず、それどころか(「東側」が消え去った今では)『世界の盟主』に成り上がったかの幻覚に取り憑かれ、その軍事力と経済力を振り回して思い通りに世界を動かすことができるかに振舞っている。そのことが全世界にとっての大迷惑なのである」という意味である。

従って第2に、「プーチン流の『多極化』論」には、大国が小国の国家主権を侵害しても許されるという論理は含まれていないし、ましてやロシアと『多極化』論を共有しロシア以上にそれを重視しドクトリン化さえ図っている中国も、そのような理屈を持ち合わせていないと、私は信じる。実際のところ、これまでに、プーチンが『多極化』論の名においてウクライナ侵攻を合理化するような発言をしたことがあっただろうか。私はないと信じる。彼が国際常識的な国家主権不可侵論を無視しているのは事実だが、それは『多極化』論によるものでも昔の『制限主権』論の単なる焼き直しでもなく、帝国以来の現ロシア連邦とウクライナとの一体的な関係と、その両者が偶然の悪戯によってたまたま「2つの国」に別れてしまったことについての彼独特の歴史意識に根差すもので、遠くから見ている我々がただの形式論に囚われてどうだこうだ言うべき次元を超えたことである。

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