客の声を聞きすぎ。店内が「短冊」だらけの居酒屋が繁盛しない理由

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「お客様の声」を聞くことは商売の基本だと言われていますが、誰の声を聞くかで成功するかしないかが変わってくるようです。無料メルマガ『飲食店経営塾』の著者で飲食店コンサルタントの中西敏弘さんは、目の前の売上やお客様を意識しすぎて失敗する例について語っています。

目の前のお客様ばかり意識していませんか?

店内中に“短冊”に商品名が書かれ、それが店内中に溢れている。そして、よく見ると、その店には似つかわしくないほど、メニュー数がある居酒屋。

こんなお店を訪れたことは一度はあるのではないでしょうか?そのお店が「ものすごく繁盛」しているのかと言えば、一部のお店を除いてそういったケースは稀であることが多いものです。

まず、なぜ、メニューが増えてしまうのか?

それは、「目の前のお客様」に、「こんな商品ないの?」と言われ、言われるがままその商品をお客様に提供し、そしてそれを店のグランドメニューとしていったことが原因です。

つまり、店の軸がなく、「目の前のお客様」の要望に応えているため、気がついたら、「店の主張」がはっきりしなくなったのです。「お客様の声」を聞くことは商売の基本かもしれません!ただ、「誰」の声を聞くのか、「誰」の声を大切にするのかが大切なのです。

目の前のお客様のことを意識しすぎるあまり、売上が低下するお店の話を紹介しましょう!

その店は、本来40代以上の「大人」のお客様に支持されているお店でした。しかし、周辺地域に「低価格のお店が増えた」ことで、少しずつ20代~30代のお客様が周辺に目立つようになってきました。

すると、その店の店長は、「今は、このあたりに大人の人が少なくなっているのだから、今は目の前にいる若い人を集客すべきだ!」と主張し、少しずつ、「若い人」向けにメニューを変更していきました。

その店の立地は、もちろん若い人もいますが、駅前で周辺にはオフィスなども多々あり「大人の人」がいないわけではありませんでした。でも、周辺や目の前のことばかり気にして、「若い人」に合わせたメニュー、接客などに徐々に変更していきました。若い人に合わせて行くわけですから、もちろん、客単価もどんどん低下していきます(店長自身、若い人でもある程度の客単価を維持できると主張していましたが…)。

口コミにも、「若い人にはいいけど、大人の私たちには…」「2次会としてはいいけれど、一次会にはちょっと…」などと書かれるようになっていきました。

お店の規模が大きく、大人数の宴会が取れることもあり、ある程度の売上を維持していますが、客単価はどんどん低下し、お客様の支持もイマイチで売上も低下傾向(宴会は、SEO対策で常に上位表示されているため、「飲食にあまり興味のない人」の需要を取り込み、ある程度の売上は確保できていたのです)。

結果、半年後には、同じ系列店で、規模の小さい店に売上が抜かれるような状態になってしまいました…。

現場にいると、どうしても「目の前のお客様」を意識してしまいます。その方が、“楽”だからでしょう

しかし、自店の「本当のお客様」が誰なのかを常に意識し、そのお客様のニーズに合わせてメッセージを送ったり、対応していかないといつの間にか売上は落ちていきます。

売上が低下したり、苦戦したりするお店ほど、いつのまにか「軸」を見失い、本来持っている「良さ」を消してしまっていることがほとんどです。残念なのは、それに本人たちが一番気づいていないということ。目の前の売上やお客様ばかり意識したことが大きな原因です。

皆さんもこんな状態を招かないようにするためにも、自店の「軸」をぜひ言語化し、スタッフ全員で共有するようにしてください。そして、その「軸」を絶えず意識した経営、運営を行っていきましょう。そうしないと、いつの間にか、自分たちの「良いところ」「強み」を自分自身で消してしまうことに繋がってしまいますので。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 中西敏弘 【発行周期】 毎週2回

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