人気も人望もなし。それでも“ドリル優子”が初の女性総理を目指すべき理由

2023.09.22
 

従来の女性政治家の抜擢とは一線を画す小渕優子の起用

岸田首相は女性閣僚を内閣改造前の2人から5人に大きく増やした。女性閣僚数としては、第一次小泉純一郎内閣、第二次安倍晋三改造内閣と並び過去最多だ。ポスト岸田の有力候補の1人の高市早苗経済安全保障担当相が、高い専門性と実務能力を評価されて留任となった。

首相が特に重視する外相には、ハーバード大学卒で、法相として麻原彰晃死刑囚の死刑執行を決断した度胸と手腕が評価される上川陽子が起用されることになった。日本は、女性の人権問題について国際社会から厳しく批判されてきた。日米関係、日英関係の発展など自由民主主義陣営の結束強化、ウクライナ支援、グローバルサウスとの関係構築などさまざまな課題がある。上川外相の実務能力が期待されるとともに、国際社会に日本の女性政治家の活躍を強くアピールする狙いもあるようだ。

復興相には無派閥の土屋品子氏が初入閣した。また、副大臣を経験していない自見英子・内閣府政務官を地方創生担当相に、加藤鮎子・元国交大臣政務官をこども政策・少子化担当相に抜擢された。岸田内閣の支持率低迷が続いている。この状況を打開するために、「ジェンダー平等」と政権の清新さをアピールする思惑のようだ。

そして、党役員人事で、選対委員長に小渕優子氏が起用された。これは、従来の自民党の女性政治家起用とは一線を画したものと思われ、注目に値する。

従来の女性政治家起用は、女性政治家の華やかさと人気を内閣支持率に取り込むことと、「女性の社会進出」という現代的な課題に積極的に取り組んでいるアピールだった。

しかし、その中で高市経済安全保障担当相、小池百合子・現東京都知事、野田聖子・前子供政策担当相など、経験を積み、政策手腕、政治手腕を身に着けて主要閣僚などを歴任し、実績を上げる女性政治家も出てきた。だが、小渕選対委員長の起用はこれに当てはまらないのだ。

まず、小渕氏は内閣支持率を下落させる懸念材料である。小渕氏は、第84代総理大臣である故・小渕恵三氏を父に持つ世襲議員であり、戦後最年少の34歳9か月で内閣府特命担当大臣として少子化対策や男女共同参画などに携わり、14年には経済産業大臣に就任し、順調なキャリアを積み重ねていた。

ところが、経産相在任時に政治資金規正法違反のスキャンダルが発覚し、経産相を辞任した。それ以降、小渕氏は閣僚に就いていない。党組織本部長などどちらかといえば裏方といえる仕事で汗をかいてきた。小渕氏にとって、今回は久しぶりの要職起用といえる。しかし今、「ドリル優子」という言葉がTwitter(現X)でトレンド入りしている。「ドリルで破壊した説明責任を果たせ」などの声が、SNS上に多数見られるのだ。

「ドリル優子」とは、14年のスキャンダル発覚時に、東京地検特捜部が小渕氏の後援会事務所などを家宅捜索した時、会計書類などを保存したパソコンのハードディスクに電動ドリルで破壊された痕跡が見つかったことからついた、小渕氏の異名である。

小渕氏は、嫌疑不十分で不起訴となった。だが、証拠隠滅の疑惑に対する国民の視線はいまだに厳しい。小渕氏の起用は、岸田内閣の支持率向上には逆効果になりかねないのだ。

また、小渕氏は政治家として顕著な実績があるわけではない。経済安全保障の専門家として存在感を見せる高市氏や、子ども家庭庁の設立に携わった野田氏のような、豊富な実務経験に裏打ちされた能力を評価される政治家ではない。

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