汚職撲滅という「反腐敗」を利用。習近平が“徹底的な破壊”を呼びかける「壁」とは

July,5,,2017,-,Berlin:,Chinese,President,Xi,Jinping,At
 

習近平政権が強力に推し進める反腐敗運動。現在は金融業界への汚職取締が強化されていますが、彼らの真の狙いは別のところにあるようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、習政権が反腐敗を利用し徹底的な破壊に取り組んでいる「壁」の存在を紹介。中国で進む「表と裏からの大手術」を解説しています。

うっすらと見えてきた経済債権の道筋。「反腐敗」利用で習近平が目指すその先

汚職撲滅は習近平政権が掲げた「一丁目一番地」の政策だが、この看板はいまだ健在だ。

シンガポールのテレビCNAは10月17日の『アジアン・ニュース』のなかで「中国は金融業界への汚職取り締まりを強化しています」として、当局が元中国銀行会長の劉連舸を収賄と違法な融資の容疑で逮捕したことを伝えた。

実際、こうした動きは挙げればきりがない。11月4日、『中国新聞ネット』は「3人の『内鬼』、検査される」と、規律検査委員会の組織内部に腐敗が広がっていたことを報じた。この前日には、「王桂芝 長期にわたり『二面派(表と裏の顔を使い分ける)』を続けてきた」というタイトルで、やはり「内鬼」問題に焦点を当てた。

共通しているのは、いずれも国有企業、とくに銀行などとの間を行ったり来たりした経歴のある人物という点だ。

4日には元中国工商銀行副行長の張紅力が規律検査の対象になったことも報じられた。まさに、CNAが指摘したように、中国は「金融業界への汚職取り締まりを強化している」のである。

当局がいま金融業界をターゲットに取り締まりを強化しているのは、単純な「反腐敗」キャンペーンのためではない。背景には金融行政に対する党中央の不満がある。これは「中央の意図が正しく反映できる体制ではない」、もっとわかりやすく言えば途中で大穴が開いていて、水(資金)が末端に届く前にほとんどなくなってしまうことを問題視していると考えられているのだ。

10月30日から二日間の日程で開催された中央金融工作会議(以下、会議)は、その習指導部の不満が如実に表れた会議だった。内容を伝えたメディアは、「(金融業界への)党の指導を強化し、地方債務リスクを抑制する取り組みを加速させる」と一斉に報じた。

ただ、会議の目的は言うまでもなく「国内の金融発展と次のステージへの改革の方向性を示す」ことだった。問題の摘出よりも、「先進的な金融国家を構築するため」の方策が話し合われた。

経済大国を築くためには「金融大国を築かなければならない」という党の危機感を背景に、「今後の国の競争力を支え、経済社会の発展に質の高いサービスを提供するために『テクノロジー金融』、『グリーン金融』、『包摂金融(インクルーシブ・ファイナンス)』、『シルバー金融』、『デジタル金融』の五つを重視する方向が示されたのだ。

金融監督管理の強化や金融体制の整備、金融サービスの最適化に加え金融リスクの解決という四つのポイントも指摘された。

四つのポイントにおける注目点は、「債務リスク」だ。リスクが「地域間、市場間、国境を越えて拡大することを防止」する必要性が強調され、そのためには「地方の債務リスクを防止する長期的なメカニズムの構築」を図らなければならないと指摘された。

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