プロ野球や宝塚だけじゃない。日本が放置してきた「先輩・後輩カルチャー」の弊害

Hyogo,,Japan,-,14,April,2018,-,Takarazuka,Revue,In
 

日本を代表するエンタテインメント集団である宝塚歌劇団と、東北唯一のプロ野球球団として地元6県民から愛されている楽天イーグルス。そんな彼らを蝕んでいた「ハラスメント」問題が今、メディアを賑わす状況となっています。これらの問題で批判の対象となっているのは、日本の社会に広く見られる「先輩後輩カルチャー」だとするのは、米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、「先輩後輩カルチャー」の悪弊を解説するとともに、消去法ではない、正しい「改革法」を具体的に提示しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年11月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

消去法では不十分。宝塚や楽天「先輩後輩カルチャー」を正す方法

長い歴史を保ってきた宝塚歌劇団が厳しい批判に晒されています。現時点では社会的批判の強さということでは、ジャニーズ事務所の問題を上回りつつあるようですが、単に厳しい批判を浴びているだけでなく、問題の質に違いがあるようです。というのは、今回の宝塚の問題は日本の社会に広く見られる様々な問題を含んでいるからです。

それは、「先輩後輩カルチャー」そのものが批判の対象となっているからです。また「先輩後輩カルチャー」ということでは、東北楽天の安楽投手についても、「行き過ぎたパワハラ」が暴露され、自由契約になるかもしれないとされています。こうした動きは、かなり注目すべき動向だと思います。

ただ、今回の議論が「行き過ぎた上下関係は良くない」とか、「ハラスメントやいじめは良くない」といった、「程度問題」や「消去法」で終わらせるのであれば、それは不十分です。勿論、いじめやハラスメントは根絶しなくてはなりません。ですが、問題の本質は別のところにあるのです。

その本質に迫っていかないのであれば、日本社会全体を時代の要請と、新しい世代の可能性を活かすような改革に持っておくことは難しくなると思います。今回の事件は、日本の「先輩後輩カルチャー」の持っている本質的な問題にメスを入れる、そのような機会にしなくてはなりません。

この「先輩後輩カルチャー」の最大の問題は、リーダーシップにおける自動的な権力付与という問題です。つまり、年齢や経験年数という「あまりに単純な客観基準」によって、上下関係を決定し、上位の人間に自動的に権力を付与するという社会慣行にあります。

要するに、リーダーシップに関する知識がなく訓練もされていない人物に自動的に権力を付与しているだけということです。現代のリーダーシップというのは、下位の人間の自発的なモチベーションを引き出して、チームのパフォーマンスを最大化することにあります。これと表裏一体となるのが効率の最大化です。

効率の最大化というと、コストをケチってブラック労働を強いるというイメージがありますが、違います。チームのメンバーの時間、体力、心理的消耗を最小化しつつ、アウトプットを最大化する、これを計画の高度化とプロセスの合理化を組み合わせて実現するのが現代のリーダーシップです。

つまり、個々人の自主的なモチベーションを引き出しつつ、タスクの全体は高度な合理性によって個々人の負荷の最小化とアウトプットの最大化が図られることが必要です。この両輪、つまり正しい意味での組織の効率と、メンバーの自発性が相乗効果を発揮するときに、チームのパフォーマンスとメンバーの満足度は同時に最大化されます。

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