自民党のプロジェクトチームは、再来年の通常国会をめどに「NTT法廃止」の提言をまとめました。これは前回掲載記事で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが指摘したように既定路線で、今後は、落としどころを巡る議論へと移行しそうです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で石川さんは、廃止によって「NTTがGAFAに対抗できる」とする論調を疑問視。「相手が違う」と指摘するとともに、国際競争力を高めるためには、従業員にも覚悟が必要になると記しています。
「NTT法廃止」一般法人化で見えてくるスリム化、リストラの可能性
自民党のプロジェクトチームが12月1日、「令和7年の通常国会を目処にNTT法を廃止する」との提言をまとめた。当初、テーマとなっていた「防衛財源の確保」はうやむやとなり、NTTに課す義務を減らすことで国際競争力を高める方向に舵が切られた。
NTT法を廃止することで研究開発成果の公開義務を撤廃したかったのだろう。固定電話サービスの全国一律提供義務やグループ会社の統合禁止などは電気通信事業法で整備するとしているが、どこまで実効性があるかは不透明だ。
日本を代表するNTTが国際競争力を高め、世界に打って出ていくというのは賛同しかない。将来的に通信の世界で、IOWNの光電融合技術がスタンダードになる可能性は十分にあるだろう。
ただ、IOWNによる「NTTがGAFAに対抗できる」という論調は正直、首をかしげるしかない。NTTがIOWNによって、インテルやクアルコム、NVIDIAに置き換わるような存在になるというのであれば納得できる話だ。電気信号で処理する半導体が光信号に置き換わるようになり、コンピューターやスマートフォン、サーバーなどの半導体にNTTが参入するというのであれば理解できる。しかし、これによって「GAFAに対抗する」というのは、あきからにレイヤーが違いすぎる。
NTTがIOWNで目指すのは、GAFAのような巨大なITプラットフォーマーにIOWNのサーバーや技術を活用してもらうことだろう。GAFAは敵ではなく味方のはずだ。
GAFAにIOWNを使ってもらう上で、「研究開発成果の公開義務があるとパートナーになってくれない」のであれば、即刻、公開義務は撤廃すべきだ。ただ、公開義務の撤廃はKDDIやソフトバンク、楽天なども理解を示しており、誰も反対していない。なぜ、NTT法を撤廃しないといけないかの説明がない。
NTTとしては国際競争力を高めるために、赤字が続いている全国一律の固定電話サービスを見直したいのも理解できる。将来的には需要が見込めないところは撤退あるいはメンテナンスを放置することもあり得るだろう。
もうひとつ、気になるのがNTTが本気で国際競争力を高め、GAFAに対抗したいのであれば、NTTグループ全体を筋肉質にしていく必要があるのではないか。
ChatGPTにグーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフトとともにNTTグループの売上げと従業員数の比較表を作ってもらったところ、倉庫や配達の人がカウントされているっぽいアマゾンは突出して従業員数が多いのだが(160万人)、NTTグループは32万人とアップル(15万人)やグーグル(15万人)、マイクロソフト(18万人)に比べて1.5倍から2倍の従業員を抱えている状態となっている。
もちろん、NTTグループの売上は他社の半分から3分の1と言った程度だ。NTTが特殊法人から一般法人になるということは、従業員もそれなりの覚悟が必要ということなのだろうか。
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