キキと孫悟空と新海誠。生成AIと著作権の「超えちゃいけないライン」をAnimagine XLのアニメ画像で検証する

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Stable Diffusion XL 1.0から派生した「Animation XL」は、アニメ画像の生成が得意な画像生成AI。少し細工するとローカルのMacでも走らせることができ、素人でも高いクオリティのアニメ画像を得ることができます。ただしこのAnimation XL、過去の無数のアニメ画像を学習したモデルだけに著作権法上の懸念点があるのも事実。今回の記事では、Windows95を設計した日本人として知られるエンジニアの中島聡さんが実際にAnimation XLを動かしながら、生成AIと著作権の関係を考察します。(メルマガ『週刊 Life is beautiful』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題「生成型AIと著作権」

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

アニメ画像特化の生成AI「Animagine XL」

少し前から、生成型AIと著作権の問題については触れて来ましたが、今回、Animagine XLというオープンソースの text-to-image モデルを私の MacBook で動かすことにより、色々と明らかになったことがあるので、それについて説明します。

Animation XLは、同じくオープソースである、Stable Diffusion XL 1.0から派生したもので、アニメ画像を生成することを優先し、数多くのアニメ画像を学習することにより作られたモデルです。

手元のMacで試すには?

ローカルマシンでの走らせ方は、【Animagine XL 3.0】誰でも簡単にアニメ美少女の画像を生成できる神AI!使い方や料金、使ってみた感想を紹介という記事があるので、これを参考にしてください(若干のプログラミングの知識が必要です)。

ただし、記事はNVIDIAのGPUを搭載したパソコンで走らせることを前提にして書かれているので、M1/M2/M3を搭載したMacで動かす場合には、14行目の

pipe.to(‘cuda’)

pipe.to(‘mps’)

に変更してください。

実写ではなくアニメ画像を生成するコツ

プロンプトには、Danbooruと呼ばれる、アニメファンの間で幅広く使われているタグを使う必要があるので注意してください。

(例:face focus, cute, masterpiece, best quality, 1girl, green hair, sweater, looking at viewer, upper body, beanie, outdoors, night, turtleneck)

普通のプロンプト(Stable Diffusion向けのプロンプト)を使うと、アニメではなく、写真のような画像が生成されてしまいます。

これは、ネット上に存在するアニメ画像には、既にDanbooruタグがついており、それを使って学習しているためです。

プロンプト例と生成された画像

例えば、プロンプトを

face focus, cute, masterpiece, best quality, 1girl, green hair, sweater, looking at viewer, upper body, beanie, outdoors, night, turtleneck

に設定すると、以下のような画像が生成されます。

240130nakajima-01

当然と言えば当然ですが、このモデルが学習したデータのほとんどは、著作権が付いたものです。New York Timesが(OpenAI/Microsoftを相手にした訴訟で)主張するように、著作権付きのデータを学習することが著作権法に違反しているのであれば、それだけでアウトです。

このモデルを作ったのはCagliostro Research Labと呼ばれる団体(もしくは個人)ですが、自ら “Virtual research lab” と宣言する通り、会社組織ではないようです。

さらに、Animagine XLのアナウンスメントの記事「Announcing Animagine XL 3.0」を読むと、プロンプトガイドとして、「キャラクターの名前」「(アニメ)シリーズの名前」を指定すると良いと書かれており、使う人が、(著作権付きの)アニメのキャラクター画像を生成することを前提に作られていることが分かります。

240130nakajima-02

ここまで読んだだけで、著作権法的にはかなり灰色であることが分かると思います。

Animagine XLは著作権法的には「黒に近い灰色」

New York Timesは、OpenAIが、New York Timesの(著作権付きの)記事を許可なく学習データとして使ったこと、そしてその結果、記事の内容だけでなく、記事の文章そのものまでを覚えてしまっていることを批判していますが、OpenAIは、一般知識としてNew York Timesの記事を学習データとして使っただけで、利用者がNew York Timesの過去の記事を無料で読むためのツールとしてChatGPTを作ったわけではありません。

Animagine XLは、著作権付きのデータ(アニメ画像)を許可なく学習データとして使っただけでなく、そのユーザーが、プロンプトでアニメのキャラクターを指定して、画像を生成することを前提として作られており、著作権法的には、かなり黒に近い灰色です。

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