SDGsの観点からも注目を集めている食品ロス。しかし「いくらなんでもやり過ぎでは」との声が噴出しているのが、愛知県のこんな取り組みだ。
報道によると愛知県は今年度、回収されたゴミ袋の中から無作為で選んだものを開封し、一般家庭でどれほどの量の食品ロスが発生しているか調査するという。その狙いを「県民の意識を高めてもらう」としているという。27日、中日新聞が伝えた。
【関連】家庭ごみ袋を開封「食品ロス」調査します 愛知県が19年度以来、夏と冬に実施予定
この報道にネット上では上記のような「いくらなんでもやり過ぎ」という声のほか、以下のような書き込みがあふれる事態となっている。
《ゴミみたいな調査だな》
《他にやり方ないのかよ》
《戦時中じゃないんだから》
《ゴミまでチェックされるとかあの国以下だろ》
《とにかく気持ち悪い》
等々、上げればきりがないほどで、そのほとんどが「ゴミ開封」に抵抗を示すポストばかりだ。
ゴミから「個人情報やプライバシー」が暴かれる危険性
そもそもゴミ袋の開封を快く思う人間など皆無に等しいと言っても過言ではないだろう。さらにこんな指摘をするのは、サブカルチャーに詳しい50代の男性ライターだ。
「他人のゴミ袋を開けると聞いて真っ先に思い浮かべるのは、“鬼畜系”を名乗って活動していたライターの村崎百郎さんです。ゴミを漁って人のプライバシーを暴くことを『自分の趣味』として売っていて、さまざまな雑誌や書籍でその成果を披露していましたからね。あとこれは村崎さんではないのですが、40年以上前のある雑誌が、当時の国民的アイドルの家から出たゴミを漁って得た内容物を紙面に載せたというケースも記録として残っています」
確かにネット上にも、「プライバシーの侵害だろう」「ストーカーかよ」といった書き込みが多数見られた。
「ゴミは個人情報の宝庫です。漫画の『闇金ウシジマくん』でもカネを持って逃げたターゲットのゴミ袋を確保するシーンが描かれていましたから。“プロ”もゴミに含まれる情報の価値を認めているということですよね」(同前)
今回の愛知県のケースでも、“なにかのはずみ”で個人情報やプライバシーが暴かれ、見られたくないゴミが人目にさらされる危険がないとも言い切れない。
家庭系食品ロスより事業系の方が多いという事実
百歩譲って「ゴミ分別」がきちんとなされているかというチェックなら理解できないこともない、という声も少数ながら存在する。「何でもかんでも一緒に燃やしたら焼却炉が壊れる」「分別無しで焼くと税金注ぎ込んで作った焼却炉に不具合が出るのでは」という意見だ。
しかし、今回の「食品ロス」に関する調査に関しては、やはり否定的な意見が目立つばかりだ。
《役人がやってる感出したいんだろうけどなんか陰湿》
《得られたデータからどういう対策を取るつもりなんだか》
《愛知県の職員は暇なのか?バイト雇うのか?いずれにしてもムダ》
さらにこんな声も多数上がっている。
《家庭より外食とかのほうが食品ロス多いだろそっち調べろ》
《なんで一般家庭なんだ?コンビニはどうなんだよ》
《なぜスーパーとかファストフード店を調査しない?》
スーパーやコンビニといった事業系の方が食品ロスは多く発生しているはず、なぜ一般家庭のゴミを調べるのだ、という意見だ。これについて民放局で情報番組の制作に関わっていた50代のテレビ関係者に聞いた。
「食品ロスについて仕事でいろいろ調べたことがあるのですが、農水省が出した『令和3年度食品ロス推定値』では、家庭系の食品ロスが244万トンだったのに対して事業系は279トンで、事業系が35トンも多かったとしています。さらに値上げもありますし、お値段はそのままでも中身を減らすシュリンクフレーションもあって、家庭に入ってくる食品の量やサイズは減る一方なんですから、貴重な食べ物を捨てまくるような一般家庭はほとんど存在しないんじゃないでしょうか」
政府の無策により爪に火をともすような生活を強いられている庶民は、そう易易と“まだ食べられるもの”を捨てないという指摘は確かに頷ける。
全国に波及?「ごみ袋開封」が愛知以外でも始まる可能性
それでも愛知県が一般家庭のごみ袋の開封にこだわるのはなぜなのか。当方のそんな疑問に40代の男性ネットメディア編集者は以下のように答えてくれた。
「あくまで私見と断っておきますが、もしかしたら戦時中の“隣組”のような相互監視システムを作ろうとしている、という考え方も成り立つと思います」
隣組とは、第二次世界大戦中に各町内会の内部に作られ、ウィキペディアには「同調圧力を通じた思想統制や住民同士の監視の役目を担うこととなった」とある。
さらにこうも言う。
「『愛知、特に名古屋市はネトウヨとも言われる河村たかしさんが市長だからこういう動きが出ているだけで、自分が住んでいる土地は関係ない』といった内容を書き込んでいるネットユーザーもいるようですが、そう思うのはかなり危険です。全国に広がる恐れも十分にありえます」(同前)
いったいどういうことなのだろうか。
「今回の愛知の施策がまったく意味不明かつ役所の自己満足でしかないからこそ、警戒が必要だと思うんです。あまり頭の良くない政治家や役人は、環境問題や食品ロスに関する実績を作れば『自分は役に立っている』と言い張れますから、“ごみ袋開封”を知って、『その手があったか!』と飛びつくのが目に見えています」
日本全国津々浦々、政治家や役人は住民のためにすべきことではなく、「なぜそれを?」と思わざるを得ない施策をさも重要そうに実行しがちだ。かような暴挙を我々は、何としても阻止しなければならない。
「日本一分別が厳しい町」と「かなり緩めな市」との大きな差
上で「百歩譲って『ゴミ分別』がきちんとなされているかというチェックであるならば理解できないこともない、という声もある」としたが、その分別が異常に細かい自治体も存在する。例えば徳島県上勝町では、13種45分類することが求めら得れており、生ゴミは各家庭で堆肥にすることが推奨されているという。さらにゴミ収集車もなく、各自がゴミステーションに持ち込むというシステムだ。
【関連】上勝町のごみ分別
逆に、かなり緩めと言われているのが大阪市。生ゴミも植木鉢も鳥かごもアイロンも同じ袋に入れ、「普通ごみ」として出せるというから驚きだ。
【関連】大阪市 普通ごみ収集
とは言えやはりほとんどの地域では細々とした分別が求められるのが現実。前出のテレビ関係者が冗談めかして言う。
「『焼却炉能力の劇的向上でごみはすべて燃やす』『分別は不要』『SDGs?無視無視』などといった公約を掲げる政治家が出てくれば選挙で台風の目になるかもしれませんし、そんな政策が実現した土地には移住希望者が殺到する、なんてこともあるかもしれませんね」
地球温暖化が喫緊の問題となっている今、そのような政治家が正しいのか否かは有権者が判断することになろう。しかし愛知県の「家庭ごみ開封調査」が全国に波及することは、有権者としては何としてでも避けたいところだ。
「自治体がどれだけの税金をドブに捨てるかの調査を」とのポストも