リモートワークによって時間的な縛りが緩くなり、精神的ストレスが軽くなったと感じるのは気のせいではないようです。一方、職を失う心配を抱えながら仕事をしている人ほどストレスが大きいというのも想像に難くありません。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、そうした「仕事の自由度と安定性」と「精神状態」の関連を数字的に裏付けるアメリカでの最新研究を紹介。安定した雇用下にある人ほど、欠勤など勤務状況の不安定さも低い傾向にあると伝えています。
仕事の自由度、安定性と精神衛生
◎要約:『仕事の自由度や安定性は、精神状態と関連している可能性がある』
適応障害(適応反応症)によって休職や退職に至る方は多く、就労している仕事の性質や職場の環境によって、精神状態への影響が予想されます。
今回は、仕事の自由度や安定性と、精神状態に関連性があるか調べた研究をご紹介します。
アメリカの労働者における仕事の自由度、安定性と精神衛生
● Job Flexibility, Job Security, and Mental Health Among US Working Adults
アメリカのインタビュー資料(the 2021 National Health Interview Survey)を元にしており、18歳以上の就労者18,144人(平均42.2歳)が対象となりました。
「仕事の自由度」については、仕事のスケジュール変更の容易さ、事前の勤務時間に関する伝達に関する質問を元にしており、「仕事の安定性」に関しては、仕事を失う恐れに関する尺度測定を行っています。
結果として、以下の内容が示されました。
- 仕事の自由度は重篤な精神的負担の低下(オッズ比0.74倍)、不安の低下(オッズ比0.89倍)と関連していました。
- 仕事の安定性は重篤な精神的負担の低下(オッズ比0.75倍)、不安の低下(オッズ比0.79倍)と関連していました。
- 仕事の安定性は、仕事の勤務状況の不安定さ(absenteeism)の低下と関連していました。
職場の環境をどのような観点から評価するのかは難しいところですが、今回のようなスケジュール管理の容易さや職を失う危険性が低いと感じることは重要であると思われました。
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