アマゾンは15日、関東や関西の物流拠点から発送する商品を、「LGBTQIA+コミュニティの多様なセクシュアリティやジェンダーを象徴する、11色のプライドフラッグが描かれた特別デザインのテープで梱包して配送」すると発表した。
??虹色の想い、届いてますか?
本日4/15より、一部の地域に
特別な??テープがついた梱包が届きます??虹色は、LGBTQIA+支援の象徴として知られています?
届いたら #プライドテープ を付けて、ぜひ写真を投稿してください?? pic.twitter.com/mcCu7kQvyw— Amazon JP (アマゾンジャパン) (@AmazonJP) April 15, 2024
同社の公式プレスリリースによると、「ジェンダーにとらわれない文化を促進するための取り組みの一環」として、15日から数日間の期間限定で行うという。
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この取り組みに対して、ネット上で議論が白熱している。当騒動を追っているという40代の男性ネットメディア編集デスクはこんなふうに話す。
「極端な意見から素朴な要望、アマゾン批判などが入り乱れている状況となっています。まさにカオス状態ですね」
弊サイト編集部も、白熱する議論についてリサーチを試みた。
極端でマニアックなポストの数々
やはり目につくのは、以下のような“極端な意見”だ。
<レインボーテープ梱包ぐらいでキレちらかしてる人って反ジェンダーのヘイターだろ?同性婚が認められたら頭おかしくなるんだろうよ>
いかなる差別も許されないことは言うまでもないこと。しかし今回のレインボーテープに異を唱えている人たちすべてが同性婚に反対でないこともまた言うまでもない事実であり、攻撃的とも取れるポストは、かえって分断を煽ることに繋がってしまわないかと危惧する声もある。
<アマゾンのレインボーテープに疑問を言う人は、無自覚にヘイトスピーチしてしまっていることに気づいてほしい>
買い物をし、その梱包テープへの感想を口にした、もしくはSNSに書き込んだだけでヘイトスピーチをしたとされてしまう、ということに窮屈さを覚える向きも少なくないと想像できる。
<アマゾンが使っているのはレインボーフラッグではなくて、性自認が性別っていう主張が入ってるプログレスフラッグだからヤバいわけ。当事者間でも揉めてる問題>
このような問題が生じていることは、筆者は寡聞にして耳にしたことがなかった。他のアマゾンユーザーはどうだろうか。いささかマニアックで、話について行けないと感じるかもしれない。
これらのポストを前出のネットメディア編集デスクはどう感じたのだろうか。
「過激であったり専門的な投稿に対しては、『そもそも何を言い争っているのかわからない』という反応が多く見られます。差別の意図がないネットユーザーほど戸惑っている傾向があるように思いますね」
事実、こんなポストも散見される。
<自分はただこれまで通り静かにアマゾンで買い物したいだけなんだけど…>
<差別には絶対に反対。だけど何らかの政治的メッセージとも受け取れるものを押しつけられるのはちょっと嫌かな…>
<難しいことはわからない。けど自分はLGBT差別はおかしいと思う。だけどXでひっぱたきあいしてる人たちが誰にどうキレてるのか追いつけてない>
当然ながら今回の“アマゾン騒動”のポストのすべてに目を通したわけではない。が、それでも上掲した「戸惑いを隠せないような投稿」が多く目についたのは事実だ。そして当事者からはこんな声も上がっていた。
<自分たちみたいなゲイは差別されていて、関心のない人は差別している側、ってアマゾンは思っているってことなのかな>
アマゾンはかような当事者の声をどう受け取るのだろうか。
アマゾンの“そもそもの姿勢”を疑う声も
この件をめぐっては、アマゾンの“そもそもの姿勢”に関するポストも投稿されている。
<アマゾンは「トランスジェンダーのヘイト」って大炎上して町の書店に並んでないようなあの本も扱って売りにかかってるよね。反LGBTサイドじゃないの?>
「書店に並んでないようなあの本」とは、『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』で、欧米におけるジェンダー教育の“問題”が綴られたノンフィクション書籍。その出版にあたっては中止を求める脅迫めいた抗議が版元に寄せられるなどしたことが大きく報じられた。
「アマゾンの欺瞞を指摘するポストと言えるのではないでしょうか。差別が排除されるべきなのは当然ですが、この手の企業の施策、今回で言えば“レインボーテープの梱包でジェンダーにとらわれない文化を促進”という取り組みは単なるポーズで流行に乗ったものでしかなく、肯定であれ否定であれ、アマゾンの打つ手をいちいち真剣に受け取るのがまず間違いだ、というなかなかに鋭い意見だと思います」(前出のネットメディア編集デスク)
そもそもアマゾンは、古くは05年に出版された『アマゾン・ドット・コムの光と影』、近年では『潜入ルポ amazon帝国』といった書籍にも描かれているように、基本は“ブラック労働”に支えられているという見方もある。実際にSNSや巨大掲示板にも、倉庫(物流拠点)でのバイト経験者による以下のような書き込みがなされている。
<無茶苦茶なパワハラが横行しててバイトをひたすら締め付ける>
<バイト中はずっと監視されててちょっとでも仕事が遅いと判断されればリーダー的な人からすごい勢いでキレられる>
<拘束時間は長い、休憩時間はあってないようなもの。奴隷だよ>
ブラックなのは倉庫に限ったことではなく、昨今はこちらの記事等で配達員が置かれている過酷な動労環境も明らかになっている。
そんな実態にフタをし、“レインボーテープでの梱包でジェンダーにとらわれない文化を促進”とぶち上げたアマゾン。それに対してさまざまな言い分があるのはこれまで取り上げてきたとおりであり、それぞれの意見には“一理ある”と言っても差し支えないだろう。しかし最も多く見られた書き込みは、こんな“叫び”にも似たポストだった。
<レインボーでもガムテでもいいから早く荷物を届けてほしい>
<レインボーカラーもいいけど「お届け予定でした」を何とかするのが先でしょ>
<御託はいいからさっさと荷物届けてくれ>
アマゾンがまずすべきは“本業の弱み”の解消かもしれない。
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