習近平がプーチンを説得か。ウクライナ紛争停戦「3つのシナリオ」

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ウクライナに対して生物・化学兵器の使用を検討していると伝えられるなど、エスカレートする兆候を見せるプーチン大統領の非人道的な侵略行為。国際社会は独裁者の暴走を止める術を持ち合わせていないのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、「3月中に中国が和平仲介を行う」と大胆予測するとともに、そう判断する理由を解説。その上で今週末までに大きな動きながければ、世界の政治経済はますます迷走するとの見方を示しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年3月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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ウクライナ情勢と中国の政局を考える

ウクライナ情勢の今後については、アメリカでも日本でも多くの専門家が、「全てはプーチンの精神状態次第である」という説に傾いています。かなり投げやりな見方ですが、確かに戦況は行き詰まっています。つまり、ロシアとしては、可能な地上兵力は投入しているものの、点と線の支配しかできない、つまり州単位あるいは都市全体を降伏させて面の支配ができていません。

前線の士気は最初から低いようですし、戦車部隊は破壊されるか逃亡、放棄されている状況。そこで精度の低いミサイルを中心とした「飛び道具」による破壊を繰り返すしかない状況のようです。

経済制裁の影響はジワジワと効いて来ているようですし、情報はいくら統制しても浸透します。ロシア国内の、特に知識層の間では相当な不安心理が拡大しているようです。ある情報源によれば、19日の土曜日にモスクワ市内で、ギリシャの超人気指揮者テオドール・クルレンティスによるコンサートがあったそうです(楽団は不明)。シュトラウスの「メタモルフォーゼン」とチャイコの「悲愴」というヘヴィな演目だったそうですが、場内は信じられないようなスタンディングオベーションになったそうです。

悲愴はチャイコが悲劇的な音楽表現を研ぎ澄ましたような作品ですし、シュトラウスの曲は、それこそ第二次大戦で廃墟と化したドイツ文明への悔恨を込めた挽歌と言われています。モスクワの聴衆がそんな曲目に熱狂するというのは、まるで大戦末期に「海ゆかば」に涙した日本人にも似ており、戦況の困難、経済の困難、国際社会における地位喪失といった状況への悲劇的な心情を二重三重に隠しつつ吐露するような拍手であったことは想像できます。国家として末期的です。

その一方で、具体的な戦線は膠着しています。停戦交渉が断続的に続いているというのは、ウクライナ側としては一刻も早く破壊と殺戮を止めて欲しい中では、自然ですがロシア側としてはその姿勢がよくわかりません。現場は戦闘を止めたい一方で、上からは「中立化・非軍事化」が絶対条件という点は譲れないというラインで一貫しているようです。

ということは、現場は「相手が呑む可能性がありそう」だという楽観的な見通しを上に上げて「交渉継続」を許してもらっているのかもしれません。だとすれば現場には権限がない一方で、現場と上層部との意思疎通は相当に細っていることが考えられます。

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