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ダスキン、自己資本配当率(DOE)3%引き上げと配当性向60%維持を明示 ハウスメンテナンス新事業などで成長加速

マネーボイス 必読の記事

2025年12月20日にログミーFinance主催で行われた、第122回 個人投資家向けIRセミナーの第2部・株式会社ダスキンの講演の内容を書き起こしでお伝えします。

本日のテーマ概要

宗幸一郎氏(以下、宗):株式会社ダスキン経営企画部IR室室長の宗です。本日はどうぞよろしくお願いします。

今回のコンテンツは3つです。まず1つ目は株主還元、2つ目は当社ダスキンについて、3つ目は「中期経営方針2028」についてご説明します。

会社概要

:会社概要です。株式会社ダスキンは大阪府に本社を置く企業です。設立は1963年となり、創業から60年以上が経っています。上場は2006年12月に行いました。上場当初は東証一部や大証に上場し、現在は東証プライム市場に上場しています。

セグメントは、訪販グループ、フードグループ、それに属さないものの3つに分けられています。決算月は3月です。売上高は約1,887億円で、フランチャイズ展開が1つの大きな特徴となっている会社です。

株価の状況

:今回はいつもとは違う形式で進めています。これまでは後半部分で還元に関する説明が時間的に不足することが多かったため、改善を図りました。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):私もこの仕事を長く続けていますが、珍しい展開ですね。

:これまでの反省を踏まえ、株価などについて今回は冒頭でお話しすることにしました。

株価の状況については、スライドのグラフにあるとおり、右肩上がりで上昇しています。先週の12月18日には株価が4,400円と上場来の高値を記録し、昨日の終値は4,370円でした。おかげさまでこれまでより高い水準の株価となっています。

株価は私たちにとって重要な指標です。このように評価いただいていることについて、素直にうれしいと感じています。

株主還元

:株主還元についてご説明します。今年始まった「中期経営方針2028」(2026年3月期から2028年3月期)という取り組みがあります。その中で掲げている株主還元方針として、成長への投資を優先した上で、配当に加えて自社株買いも機動的に行います。

また、配当方針を見直しています。前回の中期経営計画と現在の中期経営計画の違いとしては、自己資本配当率(DOE)を2.5パーセントから3.0パーセントに引き上げた点がポイントになります。連結配当性向そのものは、60パーセントで変わっていません。

スライド中央の表は、「中期経営方針2022」(2023年3月期から2025年3月期)において、自社株買いをどのように実施してきたかを金額ベースも含めて示したものです。取得価格の3期合計は99億9,900万円です。約50億円の自社株買いを2回実施し、実績として達成しました。

みなさまが一番気になるところは配当だと思います。スライド下段には今年の予想も含め、過去10年間の推移を記載しています。かつては安定配当として40円を長年続けていた時期もありました。

その後、記念配当が加わったり、配当性向を考慮するスタイルへと変わったりする中で、考え方と実際の配当に対する取り組みが少しずつ変化してきました。おかげさまで、現在も増配を続けています。

現時点での配当利回りはおよそ2.7パーセントとなっています。

坂本:冒頭でお話しされていたように、資料のはじめに株主還元に関する説明があるというのは、私も拝見して強いメッセージ性があると感じました。

配当方針が、「連結配当性向60パーセントまたは自己資本配当率(DOE)の3パーセントのいずれか高い額」と変更されていますが、自己資本配当率(DOE)が2.5パーセントから3パーセントに引き上げられた背景やその狙いについてお聞かせいただけますか?

:自己資本配当率(DOE)を適用するのは、配当性向が60パーセントに満たない場合です。基本的には、配当性向が優先されます。

常にそうであればシンプルですが、現在はさまざまな要因が業績に影響してきます。例えば過去にはコロナ禍など、さまざまな要因があり、配当性向だけでは投資家の方々から見ると何かあったときに「配当がどれだけ得られるのか」と、不安が増すと考えています。

坂本:下限の指標があったほうが安心できるということですね。

:累進配当ではありませんが、自己資本配当率(DOE)の基準はある程度計算できると考えています。

坂本:おっしゃるとおり、わかりますね。

:「中期経営方針2022」の時の2.5パーセントでは、現在の配当水準からするとかなり低い水準になります。そこで3.0パーセントまで引き上げ、極端な話ですが、たとえ当期の利益が赤字であっても3.0パーセントまでは配当を支払うということです。

株主の方に安心して保有いただくための1つの指標として、還元基準の自己資本配当率(DOE)を当社でも導入しているとご理解いただければと思います。

坂本:次に連結の配当性向についておうかがいします。60パーセントという数字は、他社と比較して非常に高い水準で、還元に積極的だと思います。

「中期経営方針2028」の期間中、この水準を維持されるのでしょうか? また、期間終了後に資本が余っている場合、一時的に配当性向を高く設定する会社もありますが、御社のお考えはいかがでしょうか? 

中期経営計画期間中とその後の対応について教えてください。その後の対応については、次の中期経営計画が決まらないとコミットできないと思いますので、イメージで教えていただけたらと思います。

:「中期経営方針2028」は今年からスタートした3年間の計画です。掲げている方針は、この3年間に限定していることは事実であり、その間に掲げた方針を変更することはないと考えています。

当社の場合、配当性向が高い点について評価をいただいている側面もあると思います。後ほどあらためてご説明しますが、当社はフランチャイズビジネスを展開しているため、投資がかからないビジネスが多く、年数が経過するとキャッシュが積み上がってくる状況が生じます。

そのため、株主のみなさまにご理解いただくためには、還元と投資のバランスが非常に重要だと考えています。

私たちがパッケージも含めて検討した結果、「中期経営方針2022」で配当性向を従来の50パーセントから60パーセントに引き上げ、現在の60パーセントが株主のみなさまにとっても、私たちにとっても適切な水準であると判断しています。

他社と比較すると高い水準だとみられることもあるかもしれませんが、当社内部では全体のコンセンサスを得た上で、この水準で実施しています。

坂本:非常によくわかりました。この後、事業についてのお話があるかと思いますが、以前は新型コロナウイルス感染拡大への対応としてのフードグループにおける対策や、工場でRFID(電子タグ)の導入など、かなりの投資を実施されていたと思います。

この3年間は、それらの投資が一巡し、現在の水準で進められるというイメージで理解してよろしいでしょうか? 

:ご理解のとおりです。

坂本:もう1点、自己株式取得についてうかがいます。こちらは非常に積極的に取り組まれており、総還元性向としてもかなり高い水準にあると考えています。

過去2回で約50億円ずつ、合計約100億円を注力されたということですが、水準やタイミング、50億円の決定要因についてお聞かせいただけると、今後のイメージをつかみやすくなると思います。よろしくお願いします。

:総還元性向についての考え方として、前回の「中期経営方針2022」では、総還元性向100パーセントを掲げていました。しかし、今回の「中期経営方針2028」では総還元性向100パーセントは掲げておらず、そこが違いとして挙げられます。

「なぜ違っているんですか?」「自社株式取得はまったく行わないのですか?」というふうに、疑問に思われるかもしれませんが、理由があります。

現在の中期経営方針の最終年度でROEを7パーセントに引き上げることを重要視しており、目標達成のため、自己株式取得以外の資金の使い方も含めて、さまざまな施策に取り組んでいきたいと考えています。

坂本:ROEを上げる方法はいくつかありますからね。

:以前は自己株式取得を中心とした施策を行い、総還元性向100パーセントを掲げていましたが、必ずしも資金を自己株式取得だけに限定しているわけではありません。

例えばM&Aなどを活用し、ROEを向上させる戦略を採るなど、資金の使い方を限定しない柔軟な方針をとっています。

株主還元方針の中に「機動的に」という言葉がありますが、こちらは「計画的に」というよりも、株価の状況やさまざまな要素を総合的に勘案し、適切なタイミングで自己株式取得も行うという考え方を示したものです。

最終的には、「中期経営方針2028」の3年目でROE7パーセント達成を目指して取り組んでいくという思いが、この方針に込められているとご理解いただければと思います。

坂本:非常に丁寧なご説明をありがとうございます。よく理解できました。

株主還元 株主優待

:当社の商品やサービスをご利用いただくために、当社では半年ごとに9月末および3月末時点で株主の方に株主優待を実施しています。

優待のポイントは2つあります。100株以上300株未満の株主の方には優待券1,000円分を、300株以上の株主の方には優待券2,000円分を半年ごとにお渡ししています。

珍しいケースかと思いますが、「モスバーガー」を展開する株式会社モスフードサービスでもご利用いただけるという点が特徴です。

また、逆に株式会社モスフードサービスの株主優待券をお持ちの場合には、「ミスタードーナツ」でご利用いただくことも可能です。この取り組みは非常に好評を得ています。

さらに、株主のみなさまに長期的に保有いただくための制度として長期保有株主優遇制度を設けています。名簿上で3年以上継続保有と判断された場合には、半年ごとにさらに500円分の優待券を追加でお渡ししています。

株主のみなさまには当社のファンになっていただき、さまざまなサービスを実際にご利用いただくことで、一消費者と株主の両面から、当社の取り組みを応援いただきたいという思いから、このような優待制度を設けています。

ダスキンの原点

:ダスキンの原点についてお話しします。会社が創業した際には、伝説的な人物がいることが多いものです。当社の場合も、鈴木清一という創業者がおり、彼が掲げた「道と経済の合一」「祈りの経営」という言葉があります。

少しわかりにくいかもしれませんが、彼が創業時に込めた思いは、「人の道と経済的に豊かになっていくことは、分かれるものではなく合一できるものである」ということです。つまり、「物も心も豊かになる」ということが、経営理念に掲げられている概念としてあります。

鈴木は「人としての道と経済の豊かさは、経営をうまく進める中で合致していくものである」と強く信じ、それをさまざまな方法で私たちに伝えてきました。

これは、現在の言葉でいう「CSV経営」、つまり社会的な問題を解決しつつ、企業価値を高めることは同時に成立するという考え方を実現しようとする思いにつながっているといえます。

スライドの年表にありますように、会社は1963年に創業し、翌1964年には、化学ぞうきん「ホームダスキン」のレンタルを開始しました。黄色いぞうきんとして知られ、水を使わなくてもホコリが取れる「魔法のぞうきん」と呼ばれたものです。

当時は、板の間を掃除する際に、冬場でもぞうきんを水で絞って掃除をしていました。しかし、水を使わずにホコリが取れる吸着効果を持ち、さらにキレイなぞうきんをレンタルで借りられる仕組みが画期的で、主婦の間で急速に広まりました。

この商法が、私たちの商売の原点です。さらに、この事業をフランチャイズで展開していたことが、大きなポイントといえます。

その後、1970年に現在のメイン事業となっているミスタードーナツ事業をアメリカから展開する権利を購入し、フランチャイズ方式で展開することを決議しました。こちらが現在のミスタードーナツ事業の基盤につながっています。

また、「サービスマスター」については後ほどご説明しますが、この時期にスタートした事業で、エアコン掃除などを行うサービスです。

スライドには「ダストコントロール」「レンタル」「フランチャイズ」という3つのキーワードが記載されています。「ダストコントロール」はお掃除関連の業務、「レンタル」は道具の貸し出し、「フランチャイズ」は当社の事業を展開する仕組みを意味します。

このような事業を経営理念に賛同していただいた加盟店のみなさまと共に、これまで全国展開してきたということが、このスライドに示されている内容です。

ダスキンのフランチャイズシステム

:当社のフランチャイズシステムについてです。私たちの会社をご覧いただく際には、2つの指標をご確認いただく必要があります。それがスライドの図で示されているものです。

まず、赤色で「お客さま売上高」と書かれている部分があります。こちらは、例えばエアコンの掃除の依頼や、レンタルでの貸し出しなどによって、お客さまが実際に商品やサービスに対して対価としてお支払いになる金額を指します。昨年度は4,540億円でした。

一方で、当社の売上は、フランチャイズ契約に基づき、加盟店と本部との間で取り決めた内容によって決まります。直営店での売上も一部ありますが、基本的にはフランチャイズ契約に基づく売上が、当社の主な収益となります。

そのようなビジネスモデルであるため、青色の「連結売上高1,887億円」という数字が当社の2025年3月期連結売上高となります。つまり、市場規模としては右側の赤い数字、当社の業績としては左側の青い数字がポイントとなることを、スライドの図で示しています。

加盟店数は6,812拠点となります。こちらは、販売店舗を含む事業の営業拠点の延べ数であり、建物は同じでも事業ごとの拠点を1つずつカウントした数字です。

経営理念については、創業者である鈴木清一が非常に大切にしていた「見えない価値」を今でも継承しており、このことに賛同していただける方々と共にビジネスに取り組んでいます。

坂本:フランチャイズを中心に展開しているというお話でしたが、直営店舗はもうなくなったのでしょうか? もしくは、いくつか実験的な店舗が残っている状況ですか? 

:いいえ、そこまで少ないわけではありません。例えばフランチャイズ加盟店をエリアマネージャーが指導する際、現場経験がなければ的確な指導はできません。現場の実態に沿ったものでなければならないため、直営店舗の意義は大いにあります。

各事業において、人材育成や問題点を把握するために直営店舗が果たす役割は重要であり、ゼロになることはありません。一定の割合は残しつつ運営している状況です。

坂本:非常によくわかりました。

ダスキン本部と加盟店との共同

:フランチャイズという言葉を耳にすると、さまざまなイメージを持たれるかもしれません。

加盟店と本部は利益相反のようになる状況もありうると思いますが、私たちの考えるフランチャイズはお互いにビジネスを発展させるための役割と捉えています。

加盟店には「加盟店会」という組織が、事業ごとに設けられています。例えば、ダスキンフランチャイズチェーン全国加盟店会は1966年発足と、創業直後の段階で立ち上げられています。

この加盟店会の理事長は加盟店オーナーの中から就任し、会長は当社の大久保が務めています。現場で起こっている出来事や、例えば販促に関する取り組みをいかに進めていくかなどを共有しています。

パイプラインを持ち、最終的に現場で成果を上げられるよう、役割分担やさまざまなことを話し合える仕組みを作っています。このような仕組みが、他社とは異なる特徴として挙げられるのではないかと思います。

セグメント別売上構成

:スライドは、先ほどお話しした青色の2025年3月期連結売上高1,887億円をセグメント別に区分したものです。

全体の約3分の2が訪販グループ、約3分の1がフードグループおよびその他に分類されています。

訪販グループ 主な事業内容

:訪販グループにおいて、一番大きい割合を占めているのはスライド左上の「クリーンサービス」です。ここでは清掃・衛生用品のレンタルと販売を行っています。写真は、訪問販売員が家庭を訪問し、4週間に1回のレンタル品をお客さまへ届けている様子を示しています。

クリーンサービスは、創業以来、基本的な仕組みは大きく変わらず、売上規模では最も大きな事業となっています。

また、「ケアサービス」事業として「役務提供サービス」というものがあります。例えばスライド左下にあるエアコンクリーニングのように、私たちが現場に出向き、エアコンの掃除を行うサービスを提供しています。

この役務を提供するというサービスには、エアコンクリーニング「サービスマスター」、家事代行「メリーメイド」、害虫駆除・予防「ターミニックス」、庭木のお手入れ「トータルグリーン」、お部屋の修繕などの補修「ホームリペア」といった、計5つの事業があります。

次にスライド右上の「シニアケア」についてご説明します。まず、「ヘルスレント」は、介護ベッドや車いすなどをレンタルするサービスです。

介護が突然必要になったり、歩行が困難になったりした場合、購入することはハードルが高いとされています。このような場合、レンタルが選択肢として適しているというニーズが多いです。

シニアケアの事業は、非常に伸びている分野でもあります。「ライフケア」では、介護保険適用外のサービスとして、さまざまなメニューを用意して展開しています。

スライド右下の「その他」のカテゴリでは、「ダスキンレントオール」としてイベント総合サポートや各種用品のレンタルを行っています。写真はイベントの設営を行っている様子になります。

こちらは、イベントが開催される際に、テントや幕の貸し出しから設営、さらには必要に応じて運営までを含めてサービスを提供しているものです。こちらも需要が非常に高い状況となっています。

クリーンサービス事業(モップ・マット商品)

:レンタル事業についてはわかりにくい部分があるため、図を用いてご説明します。スライドの図にはレンタルの仕組みや市場規模についてまとめています。

事業内容としては、加盟店を通じてご家庭や事業所のお客さまにモップやマットの商品をレンタルするというものです。その仕組みをスライド中央に示しています。

左側の総合工場は、私たちが契約している工場を含め、全国に45ヶ所存在しています。中央のクリーンサービス事業の加盟店は、全国に1,802拠点あります。

そこを通じて、右側に記載している私たちのお客さまに、具体的にはご家庭用では約396万世帯、事業所用では約98万事業所に対してレンタルを行うという仕組みです。

この仕組みを実現するのが、中央の「加盟店」に所属する訪問販売員であり、全国に約5万5,000人います。ご家庭用の場合は4週間に1回、事業所用の場合は2週間に1回という頻度でレンタル品をお届けしています。

事業所ではマットのレンタル需要が多く、特に床に敷かれるマットは汚れやすいため、家庭用よりも短いサイクルでレンタルしています。

お客さまに1つの商品を貸し出した場合、次に返却してもらうことになるため、1人のお客さまに対して1個の商品だけでなく、複数の商品を用意して回転させる仕組みです。

お客さまから返却された商品は加盟店を通じて総合工場に返却され、再加工後に再びレンタルしています。このように、1人のお客さまに対して2個から3個の商品を用意し、定期的にレンタルを行うことで、私たちはレンタルフィーを得るというビジネスになります。

競争優位性を考えると、ありがたいことに当社のフランチャイズの仕組みが大きな強みとなっています。レンタルとフランチャイズの仕組みが普及し始めた当時、多くの加盟店は小規模な会社でしたが、志を持って地域密着で展開し、地域の特性に合わせた運営を行いました。

この基盤が大きいことがポイントであり、家庭市場では約9割のシェアを獲得しています。

事業所市場ではマットを扱う競合他社も多いですが、業界の首位を維持しています。さらに当社は、ブランドを守るために、社員の変動を考慮しつつ、さまざまな研修制度を設け、ブランド維持のための教育に力を入れている点も大きな特徴だと考えています。

フードグループの事業内容

:フードグループの事業内容は大きく3つに分かれています。ご存じの方も多いかもしれませんが、実はダスキンが「ミスタードーナツ」を運営しています。フードグループ事業のうち、9割以上は「ミスタードーナツ」であるとご理解いただければと思います。

フードグループ事業内で子会社による展開として、スライド左下の「かつアンドかつ」は、現在関西で直営のみになります。そのため、ご存じない方がいらっしゃるかもしれませんが、大阪府近辺に16拠点あり、とんかつレストランを展開しています。

スライド右下の「ナポリの食卓」は、M&Aによって取得したブランドです。M&A当時は健康菜園株式会社でしたが、現在は株式会社ボストンハウスという名前になっています。

この株式会社ボストンハウスでは、北関東を中心にイタリアンレストランを展開しており、M&Aを通して私たちの傘下でさまざまな取り組みを行っています。

ミスタードーナツ事業

:ミスタードーナツ事業のフランチャイズの仕組みについて簡単にご説明します。スライド左側が当社、中央が加盟店、右側がお客さまです。私たちがどのようなかたちで加盟店に関わっているのかを中心にお話しします。

当社からは原材料やノウハウ、システムの提供を行い、加盟店はお店を建て、人材を雇い、作ったドーナツをお客さまに提供します。加盟店が商品代金を受け取り、その中から当社は原材料代金とロイヤルティをいただくことが基本的なビジネスモデルです。

現在、1,041店舗が展開されている状況です。競争優位性については、ありがたいことに、このような全国規模のドーナツチェーンは他にあまりないという特徴があります。

また、55年の歴史の中でさまざまな苦しい時代もありましたが、現在は多くのお客さまからご支持いただいているドーナツブランドとなっている点が大きなポイントだと思います。

中期経営方針2028で目指すこと <基本方針>

:「中期経営方針2028」についてご説明します。基本方針として、中期経営方針は3つの「シン化」と1つの強化で構成されています。

新たな事業への「新化」、周辺事業への「進化」、既存事業の「深化」と、音では同じ「シン」ですが、新しいことに挑戦する「新化」、既存事業をより進めていく「進化」、さらに既存事業を深掘りする「深化」となります。

加えて、「中期経営方針2028」では「経営基盤の強化」を掲げています。

「新化」「進化」「深化」という3つの「シン化」は、長期経営方針として約10年間の戦略を描いています。こちらに経営テーマ4として「経営基盤の強化」が加わり、中期経営方針となっているとご理解いただければと思います。

新たな価値創造

:新たな価値創造についてご説明します。ナッシュ株式会社について聞いたことはあるでしょうか? 

坂本:冷凍のお弁当やおかずを手がけている会社ですよね。

:よくご存じですね。冷凍の宅配を手がけているナッシュ株式会社と資本業務提携契約を締結し、一部の株式を取得しました。現在は協業に向けて、サービスや内容など何ができるかを検討しています。

当社の強みは、密接な訪問販売を通じてお客さまとのリアルな接点を持っている点です。ナッシュ株式会社の強みは若い世代の方々に非常に支持されている点と聞いていますが、ご家庭への浸透については課題が残っている状況です。

このような状況を踏まえ、さまざまな取り組みを進める中でシナジーが生まれる可能性があると考え、現在検討を進めているところです。

訪販グループ

:訪問販売グループにおいて現在取り組もうとしている内容についてお話しします。スライド下段にある、「衛生領域」「ワークライフサポート領域」「シニアサポート領域」の3つは、「中期経営方針2022」から掲げている注力する領域を継承しています。

それに加えて、新たな領域として掲げているのがスライド上段の「ハウスメンテナンス領域」です。こちらはハウスメンテナンスという考え方のもと、「住まいの快適化と、暮らす人々がより安心して時間を過ごせる環境づくりをサポート」するものです。

具体的には、緊急トラブルが発生した際の連絡先や家が傷んできた場合の原状回復方法、空き家の管理、さらには住設機器など、生活しているとさまざまな困りごとが出てきます。

私たちはこれらをワンストップで対応できる体制を整えようと、メニューの検討などを進めています。訪問先で直接サービスを提供する強みを活かし、ハウスメンテナンスという新しい領域を積極的に展開していきたいと考えています。

訪販グループ

:周辺事業への「進化」の取り組みについてです。「暮らしの安心駆けつけ」とスライドにあるように、鍵に関するお困りごとの対応をするサービスを展開する「ダスキンレスキュー」です。具体的には、鍵をなくしてしまった際に電話で受け付け、見積もりを迅速に行い、鍵を開ける対応を行っています。

このようなサービスはこれまでも世の中に存在していましたが、当社の特徴として、全国展開を進める中で、価格を明朗会計にし、事前にさまざまな条件や情報を提示した上で展開している点が挙げられます。

実際にサービスをスタートしてみると、緊急対応の需要もある一方で、予想以上に大きかったのは、マンションやアパートの定期的な鍵の交換需要です。具体的には、次に新しい入居者が来た際に鍵を付け替えるという需要になります。

坂本:鍵の内容を変える、といった対応ですね。

:このような需要が予想以上に多く、さらに緊急対応と定期的な鍵の交換の両方を同時に行うイメージで事業を展開しています。この事業は部門が新設され、現在、東京都と大阪府で加盟店展開をスタートしています。

訪販グループ

:既存事業の「深化」の取り組みとして、ダスキン「防災サポートサービス」を展開しています。具体的な取り組みとして、まず1つ目は有事の際の避難所開設や運営サポートです。

例えば、地震など予期しない災害が発生し、自治体の体育館へ避難することになった場合、備蓄品が不足しているケースが少なくありません。そのため、行政も民間の力を借りる必要があります。私たちは自治体と提携を結ぶことで、迅速に物資、人員、その他必要なものを周辺から送り込む体制を整えています。

このような契約を、防災や非常時のサポートを目的として締結しています。

スライド右側に記載の「減災トレーニングパッケージ」は、株式会社減災ソリューションズさまと業務提携を結び、実施しているものです。

実際に災害発生時に助けに行く訓練をする際、より本番に近い状況を再現し、よりリアルなシチュエーションを想定した訓練を行うことで、多方面において効果が期待できると考えています。

そのための資材の貸し出しを、私たちは株式会社減災ソリューションズさまとの提携により実施しています。スライド右上にある倒壊家屋を再現した設備をパッケージ化しています。

このような取り組みが非常に高い関心を集めています。

これは、私たちが考えるCSVの1つの考え方であり、社会的な課題の解決と、企業が今後事業を進めていく中で当社の活動にも資するものとして、双方にとってプラスとなる取り組みです。その一例として、今回ご紹介させていただきました。

フードグループ

:フードグループについてご説明します。周辺事業への「進化」と既存事業の「深化」の取り組みとして、新たな飲食ブランドを立ち上げることを目指し、これまで多くの取り組みを行ってきました。

現在取り組んでいるのが「かつアンドかつ」と新たに取り組んでいる「ナポリの食卓」です。先ほどの説明と重複するため、詳細は割愛します。

「ミスタードーナツ」は今年55周年を迎え、感謝申し上げます。この55周年企画として、今年6月に「もっちゅりん」というドーナツを販売し、大変ご好評いただきました。

坂本:社会現象になっていましたね。

:企画担当者に確認したところ、あそこまでの反響を予想していなかったそうです。本来であれば、原材料の追加投入を進め、販売を継続するべきでしたが、いろいろな制約のため実現せず、結果的に販売終了となりました。

そのため、一部のお客さまにドーナツをお届けできず、私自身心から申し訳なく感じています。

福袋については、今年も実施します。今回は「ポケモン」とコラボレーションして取り組んでいた従来の福袋とは趣向を変え、55周年にちなみ原田治さんが過去にデザインされたものや、私たちが大切にしているキャラクター「ポン・デ・ライオン」の企画を準備しています。 

55周年の取り組みとして、このような商品や企画を通じて、お客さまに感謝の気持ちをお伝えしています。こちらがスライド左側の内容になります。

一方、スライド右側では、多様な店舗形態での展開について触れています。以前もご紹介したとおり、キッチンレス店舗の展開に取り組んでいます。こちらはキッチンを併設せず、利便性の高い場所に進出するための試みです。

今後もトライアンドエラーを繰り返しながらも、諦めずに展開を進めていきますので、今後ともご理解いただければと思います。

海外事業の拡大

:海外事業については、現在アジア圏で展開を進めています。スライドの「DUSK!N」のロゴがある箇所はお掃除関連として、「mister Donut」のロゴがある箇所は「ミスタードーナツ」として進出しているところを示しています。

また、マレーシアとカンボジアにある見慣れない丸いロゴは「ビッグアップル」です。こちらは、私たちが2017年にM&Aした会社が展開するドーナツブランドであり、マレーシアにおいて最大のドーナツチェーンとなっています。

「ミスタードーナツ」があるのに「ビッグアップル」を買ったのには理由があります。「ハラル」という言葉をご存じの方もいらっしゃるかもしれません。これは宗教上の戒律から食べてはいけないものを規定するもので、ハラル認証がないものを口にできない方々がアジア圏に非常に多くいらっしゃいます。

そのため、私たちは「ミスタードーナツ」として進出できる地域には「ミスタードーナツ」として展開を行っており、ハラル認証が必要な地域については「ビッグアップル」として進出しています。

また、展開の形式については、マスターフランチャイズ契約という形態のもの、合弁企業として進出しているもの、一部は子会社を通じたものがあります。

このように多様な形式を用いながらアジア地域への進出を進めており、今後も進出していない地域に積極的に挑戦していきたいと考えています。

政策保有株式の縮減

:政策保有株式の縮減も掲げています。中期経営方針3年目にあたる2028年の目標では、連結純資産に占める政策保有株式の割合を10パーセントまで引き下げることを目指しています。昨年度末の割合は13.2パーセントでした。今後、目標を達成すべく取り組んでいきます。

経営基盤の強化

:経営基盤の強化についてご説明します。一部重複する内容もありますが、戦略を簡単にご説明します。IT戦略、DX戦略、そしてCX最大化です。

ITとDXはよく知られていますが、CXはあまり耳にしない方もいるかもしれません。これはカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を略したもので、顧客満足度を高める取り組みを指します。

実際のところ、ITもDXも最終的にはCX、つまりお客さまが私たちの商品やサービスを「良い」と思うきっかけを多く作ることに結びつきます。このような取り組みを進める中で、私たちが提供する価値を最大化するための施策を行っているということをご理解いただければと思います。

サステナブルな社会と経営の実現に向けた取り組み

:サステナブルな社会と経営の実現に向けた取り組みとして、「ダスキン環境ビジョン2050」を掲げています。少し先の話に思えるかもしれませんが、「目指すべきサステナブルな未来社会」という目標も掲げています。

これは、グリーンエコノミーの推進、グリーンマテリアルの追求、グリーンエネルギーの活用、そしてグリーンコミュニティの発展を目指したものです。

特徴的なのはグリーンコミュニティで、フランチャイズで展開しており、加盟店を巻き込んださまざまな取り組みを行っています。例えば、お掃除活動として「クリーンアップマイタウン」というプロジェクトを加盟店とともに進めています。

連結数値目標

:以上を踏まえた最後のスライドでは、数字的な指標を示しています。ROE7パーセント以上という目標は、表中央の2028年3月期目標の一番下段に記載しています。

目標を達成するために、この3年間でさまざまな取り組みを進め、その結果を目標に結実させたいと考えています。

質疑応答:「中期経営計画2028」目標達成に向けたシナリオについて

坂本:冒頭でお話しされていた「中期経営計画2028」の中でROE7パーセント以上を目標とする点についてです。利益部分が非常に伸びる予想となっていますが、訪販グループが最も高い伸び率になるのではないかと見受けられます。

訪販グループにおける取り組みや目標達成のシナリオについて教えていただきたいです。中期経営計画の最終年度に向けて、進行期の2026年3月期からどのような利益の増加パターンになるのかお聞かせください。

例えば、2028年に向けてきれいに増益していくのか、それとも数年間準備を経て最終年度に利益が大きく伸びるのか、そのイメージを教えていただけると幸いです。

繰り返すと、訪販グループの取り組みと最終的な利益について、徐々に増益していくのか、あるいは最終年度で大幅なジャンプとなるのか、その利益カーブのイメージを共有していただけるとありがたいです。

:後者に近いと考えています。つまり、取り組みを進める過程で、最終年度にしっかりと成果を上げるようなかたちになるかと思います。

先ほどのご説明でも少し触れましたが、ハウスメンテナンス領域という新しい取り組みに挑戦しています。

お客さまがどのようなかたちで当社の商品やサービスを知り、また、知ったことから当社との接点をつなぐためにはDXの技術が必要となりますが、これらの導入と運用にはある程度時間がかかります。また、加盟店展開を考える上でも、時間の軸はどうしても必要です。

そのため、計画には1年目、2年目、3年目とそれぞれ掲げる内容があり、3年目の段階でしっかりと計画どおりに実現できるよう、現在はその下準備を進めているところだとご理解いただければと思います。

質疑応答:「かつアンドかつ」と「ナポリの食卓」のフランチャイズ展開について

坂本:フードグループの「かつアンドかつ」と「ナポリの食卓」については、今後はフランチャイズ展開を進めるイメージでしょうか? それとも、もう少し直営店を増やして固めていく方針でしょうか?

:私たちはフランチャイズの会社です。

坂本:そうですよね。

:直営で運営する意味合いは、あくまでパッケージ化が可能かを検討するためです。つまり、フランチャイズ展開をする際に生じるさまざまな問題を解決し、加盟店の方々が安心して投資し、この事業を一緒に推進していくための準備です。

そのため、すぐに展開できる場合もあるかもしれませんが、現時点では、この2つに関してしっかりとした収益構造やノウハウの確立を目指し、知見を一生懸命蓄積しています。

両ブランドとも「フランチャイズ展開する」ということについては明言しており、今すぐではありませんが、いずれ進めていくことは社内外で方針を固めています。

いつか「かつアンドかつ」が東京に展開できればいいのではないかと考えています。このような点を踏まえ、今後の展開としてご覧いただければと思います。

坂本:外食各社は、どちらかというと目先の利益を伸ばすために積極的なM&Aを行っているようなところがあり、「こんなに高く買うんですか?」という動きも見られます。

そのようなケースでは、目先の利益は確かに伸びていますが、「本当に大丈夫なのか?」と感じることもあります。

御社においては、フランチャイズをメインに据えた方針を取られているため、その点で他社との違いがあると感じています。買収する会社の選定基準も異なっているのではないかと思います。

利益が出ているかどうかだけでなく、将来的に多くのフランチャイズ加盟店が増える可能性のある企業を選ぶというイメージでよろしいでしょうか? 

:そのとおりです。当然ながら、当社にも多くのM&Aの話があります。

坂本:やはりそうですよね。

:実現しているものだけが外部に公表されていますが、社内ではさまざまな議論が行われています。私たちのシナジーや強みに合致し、新たに活かせるかどうかが重要なポイントです。

そのような観点で社内議論を進めています。M&Aに対する考え方については、企業ごとにそれぞれ違いがあります。当社には当社なりの独自の考え方があり、その考え方にもとづいて議論を重ねた結果が世に出た際に「ダスキンはこのような結果を出したんだ」とご理解いただければと思います。

また、特に当社では理念やその他さまざまな要素を重視しているという点についてもご認識いただければと思います。

宗氏からのご挨拶

:短い時間でしたが、説明をお聞きいただき誠にありがとうございます。当社はさまざまな商品やサービスをご提供しています。

株主としての応援、特に本日は個人投資家説明会ですので株式をご購入いただけると非常にありがたいという思いはありますが、私たちの活動を消費者としても応援いただき、さらに株主としてご支援いただくことで、そのような循環に加わっていただければ、お互いに幸せになれると考えています。

私たちもその信念を持ってこれからも活動を続けていきますので、ぜひ温かく見守りつつ株主としてご支援いただけると幸いです。ありがとうございました。

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