<ヒューリック:高年収・高回転・高配当を掲げる「異質」な成長企業>
ヒューリックは、財閥系の3社とは全く異なるカラーを持つ企業です。
同社のビジネスは、都心の好立地にあるビルを仕入れ、価値を高めて高く売る、あるいは建て替えて収益性を上げるという「回転型ビジネス」に大きく依存しています。
この高い収益性を支えているのが、少数精鋭の従業員たちです。
驚くべきことに、ヒューリックの平均年収は2,000万円を超えており、それだけ強いインセンティブを持って、良い物件を仕入れ、利益を出すという営業活動が徹底されています。
一方で、最近では不動産事業の先行きを見越してか、観光、子供教育、高齢者健康、スポーツエンタメといった幅広い新規事業にも手を広げています。
これが経営資源の分散に繋がるのではないかという懸念もありますが、常に新しい成長の種を探し続けるアグレッシブな体質が、高い配当利回りと相まって投資家を惹きつけています。
1億円超えの「新築バブル」と供給不足の現実
足元のマンション市場についても詳しく見ておく必要があります。
三井不動産の資料によれば、新築分譲マンションの平均販売価格は1億4590万円という、一介の給料生活者では到底手が出ないような水準に達しています。
これはインフレによる原材料価格の高騰だけでなく、都心で新たに開発できる土地が激減しているという「供給側の都合」が強く影響しています。
供給が減る中で、便利な場所への需要は根強いため、価格は上がり続けてきました。
しかし、ここにきて住宅ローン金利の上昇が、いよいよ買い手の心理を冷やし始めています。
今後は「高く作りすぎた物件」が売れ残るリスクがあり、借金を返済するために値下げを余儀なくされる場面が出てくれば、不動産市況全体が急速に冷え込む可能性も否定できません。
投資判断の重要指標その1:ネット・アセット・バリュー(NAV)
不動産株を評価する際に欠かせない指標が「NAV(ネット・アセット・バリュー)」です。
不動産会社がバランスシートに載せている物件価格は、取得時の古い価格であることが多く、現在の価値(時価)を反映していません。
NAVは、それら保有物件を今の価格で評価し直した実質的な純資産のことです。
現在の株価がこのNAVの何倍になっているかを示すのがNAV倍率ですが、大手4社は全て1.0倍を下回っています。
特に住友不動産は0.47倍と極端に低く、時価の純資産が6.93兆円あるのに、時価総額は3.27兆円しかないという歪な状態です。
これは「中身を簡単には取り出せない貯金箱」のような評価ですが、それでも解散価値を下回る水準で放置されている事実は、長期的な割安感を示唆しています。
投資判断の重要指標その2:金利上昇への耐性を測る「財務の質」
次に注目すべきは、金利上昇に対する耐性、すなわち「ネットD/Eレシオ(純有利子負債比率)」です。これは自己資本に対してどれだけ借金をしているかを示す指標で、三菱地所が122.9%、三井不動産が138.8%、住友不動産が158.5%であるのに対し、ヒューリックは228.6%と際立って高くなっています。
借金が多いほど金利上昇のダメージは大きくなります。
また、財閥系の3社は信用力が高いため非常に安く資金を調達できますが、非財閥系のヒューリックは社債の利率が直近で0.8%から2.1%へと急上昇しており、調達コストの面でも試練に立たされています。
金利ある世界においては、この「資金調達力」の差が、そのまま企業の競争力に直結していくことになります。
