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世界的な猛暑…ダイキン株は買いか?長期投資家が注視すべきリスクと3つの強み=元村浩之

<技術と効率を両立させる「ベースモジュール・機能モジュール」戦略>

世界各地で異なるニーズに応えることは、本来、経営資源が分散し非効率を招く戦略です。
しかしダイキンは、これを「ベースモジュール」と「機能モジュール」に分けて考えるという独自の概念で解決しています。

これは、セルフ式うどん店に例えると非常に分かりやすいでしょう。
うどんの麺と出汁という、万国共通で必要な土台(ベースモジュール)をしっかり作りつつ、その上に乗せるトッピング(機能モジュール)を、天ぷらやわかめといった形で地域のニーズに合わせて変えていく仕組みです。
レゴブロックのように基礎の土台にオプションを付け足すことで、地域最適化を行いながらも、生産の効率化を両立させています。
現在では、日本の生産本部にある「デジタルファクトリー」などのIoTプラットフォームを使い、これらをバーチャル上でシミュレーションするまでになっています。

ダイキンの強みその2:省エネ基準の「ルールメイク」を主導する力

ダイキンの2つ目の大きな強みは、自分たちが勝ちやすい「ルール」を世界規模で作れることです。
同社はエアコンの心臓部にあたる冷媒(熱を運ぶ血液のような素材)において、環境負荷の低い「R32」という次世代冷媒を開発しました。

驚くべきことに、ダイキンはこのR32に関する特許を世界中に無償で開放しました。
自社で独占するのではなく、競合他社も使えるようにすることで、R32を世界のデファクトスタンダード(事実上の標準)にしたのです。
各国の環境規制がR32の基準まで引き上げられれば、その冷媒を最も効率よく製品化できる技術とサプライチェーンを持つダイキンが、最終的に市場を支配できるという、非常に大胆かつ老練な戦略を成し遂げたのです。

ダイキンの強みその3:AI時代の黒幕、データセンター冷却ソリューション

ダイキンは今、次なる布石としてデータセンター向けの冷却ソリューションを強化しています。
AIの爆発的な普及により世界中でデータセンターの建設ラッシュが起きていますが、そこで使われるサーバーやチップは激しい熱を出すため、冷却が不可欠です。

同社は2023年から2025年にかけて、アライアンス・エアやデータ・ダイナミックといった企業を次々と買収し、データセンター向けの「液冷」などの特殊な冷却技術を手に入れました。
彼らの狙いは単に冷やす機械を売ることではなく、データセンター全体をいかに効率よく安定的に冷やすかという「冷却ソリューション」を提供することにあります。
中期経営計画では、この分野の売上規模を5年で3倍に、利益率も8%から13%へと引き上げる野心的な計画を掲げています。

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出典:ダイキン FUSION30

PFAS問題と政策への依存

もちろん、投資である以上はリスクにも目を向ける必要があります。

まず、企業体質に関わる問題として、化学事業における「PFAS(ピーファス)」の排出問題があります。
これは過去に製造していた物質の有害性に関する認識が甘く、結果として排出されてしまったことに対する問題であり、現在は製造を停止していますが、過去の分を巡る訴訟などが続いています。

また、欧州の事例が示す通り、エアコン需要は補助金などの「政策マター」に強く左右されます。
環境規制や補助金が政治的な理由でひっくり返れば、需要が急冷するリスクは常に付きまといます。
さらに、設備投資が非常に重いビジネスであるため、営業キャッシュフローの多くが投資に消え、フリーキャッシュフローが伸び悩んでいるという財務上の課題も認識しておくべきでしょう。

Next: 追い風は続く?長期投資家が持つべき視点

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