クレオ<9698>は、業務基盤システム「ZeeM」シリーズをはじめとする自社プロダクトやクラウドサービスの開発・提供、受託開発、システム運用・保守、ITサポートサービスまでをワンストップで手掛ける総合ITサービス企業である。同社が発表した2027年3月期第1四半期決算は、企業のHR(人事・給与)投資需要を背景に主力「ZeeM」のクラウド型利用料(ストック収入)が拡大し、営業利益が前年同期比60.7%増の132百万円と大幅な増益を達成した。また、株主還元への意識も極めて高く、連結配当性向40%超を基本方針に据えながら、今期は予想配当性向52.0%となる年間56円への増配(10期連続増配見通し)や1.5億円上限の自己株式取得を推進している。足元の時価総額は約115億円(株価1,340円水準)、PBRは約1.4倍、配当利回りは約4.2%と指標面での魅力も高い。
2027年3月期1Q決算動向:ソリューションサービス牽引で大幅増益を達成
同社が発表した2027年3月期第1四半期の連結業績は、売上高3,333百万円(前年同期比0.3%減)、営業利益132百万円(同60.7%増)、経常利益135百万円(同61.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益84百万円(同59.1%増)となり、大幅な増益で着地した。
セグメント別の動向を見ると、成長事業と位置付けるソリューションサービス事業は、売上高1,305百万円(前年同期比8.0%増)、セグメント利益234百万円(同34.0%増)と好調に推移した。主力である「ZeeM 人事給与」を中心としたストック収入が安定的に拡大したことに加え、顧客向けソリューション開発の受注も堅調に伸び、全体の収益を力強く牽引した。受託開発事業についても、売上高556百万円(同2.5%増)、セグメント利益82百万円(同20.6%増)となり、前期に生じた戦略的プロジェクトの影響が解消されたことで増収増益基調に回帰している。一方で、システム運用・サービス事業は売上高455百万円(同16.6%減)、営業利益32百万円(同44.0%減)となった。これはLINEヤフーグループからの高利益案件プロジェクト減少が影響したものだが、足元では本体のみならずグループ各社への手堅い案件アプローチを進めており、下期に向けた回復を図っている。サポートサービス事業は、主要顧客の内製化に伴う案件不足から売上高1,016百万円(同3.0%減)と微減収となったものの、外注費の見直しによるコスト圧縮効果が大きく寄与し、営業利益44百万円(同41.5%増)と大幅な増益を確保した。
競争優位性と強固なビジネスモデル
同社の強みは、人事・給与・会計領域で豊富な実績を持つ「ZeeM」シリーズを軸に、業務アプリケーションの開発からインフラ基盤構築、運用監視、ヘルプデスクまでグループ一体でワンストップ提供できる点にある。特に人的資本経営への関心が高まる中、「ZeeM 人事給与」をコアとして他社SaaSや周辺システムと柔軟に連携するエコシステム形成を進めており、顧客のLTV向上を実現している。
また、エンジニア採用コストや人件費の高騰に対しては、自社開発プロセスへの生成AI活用を積極的に推進。開発効率の向上と製品改善サイクルの迅速化を進めることで、高い収益性の維持・改善を図っている。
中期経営計画と中長期ビジョン(VISION 2030)
同社は中期経営計画(FY2024-FY2026)において、最終年度である2027年3月期に売上高18,000百万円、営業利益1,500百万円(営業利益率8.3%)、ROE12%超、EPS成長CAGR10%超を目標に設定している。ストックビジネスの拡充、クラウド技術者を中心とした人財強化、グループ総合力の向上を基本方針に据える。
さらに長期視点では「VISION-2030」を掲げ、2031年3月期(FY2030)に売上高250億円超、営業利益25億円超、営業利益率10%超、ROE14%超を目指している。大口顧客との共創による案件規模の大型化・単価向上、クラウドシフト需要の取り込みを通じて、持続的なトップライン成長と利益率拡大を両立させる方針だ。
なお、2027年3月期の通期連結業績予想は、AI普及をはじめとする急速な環境変化への適応に向けた人的資本投資や成長投資を推し進めつつも、売上高15,100百万円(前期比3.6%増)、営業利益1,240百万円(同3.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益820百万円(同1.5%増)と期初計画を据え置いている。第1四半期時点で利益面が前年同期比大幅増と好進捗を見せており、下期の案件獲得と合わせて通期計画達成に向けた動向が期待される。
積極的な株主還元方針
株主還元にも極めて積極的であり、基本方針である「連結配当性向40%超」を大きく上回る還元を継続している。2027年3月期の年間配当は前期比1円増配の56円(予想配当性向52.0%)を計画しており、実質的な増配基調を維持している。加えて、1.5億円を上限とする自己株式取得を機動的に実施するなど、資本効率向上と総還元姿勢を明確に打ち出している。 DX・人的資本投資の潮流を追い風に、中長期的な企業価値向上に取り組む同社の今後の進捗に注目したい。
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