2025年11月30日にログミーFinance主催で行われた、第120回 個人投資家向けIRセミナー第5部・カンロ株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。
Agenda
村田哲也氏(以下、村田):みなさま、こんにちは。カンロ株式会社代表取締役社長CEOの村田です。本日はカンロについて、そしてカンロの成長ストーリーを中心にご説明します。よろしくお願いします。
カンロは、「人と社会の持続可能な未来に貢献する」パーパスドリブン企業へ

最初にご紹介するのは、当社の企業パーパスです。こちらは2022年に策定しました。カンロが届けているのは、キャンディを口にした時に思わずホッと笑顔になるひとときです。そのひとときをさらに広く、グローバルにも届けたいという意味で、英文のパーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」としました。
カンロの社員一人ひとりが、パーパスドリブンで、自ら何をすべきかを考え邁進している企業です。これまでも、そしてこれからも、世界にもっと「心がひとつぶ、大きくなる。」瞬間をお届けしたいと考えています。
会社概要

村田:続いて、会社概要です。当社は1912年創業の、飴・グミの製造販売を行うキャンディメーカーです。生産拠点は、創業の地である山口県光市、長野県松本市、長野県朝日村の3工場です。全国に営業支店が8支店、直営店舗は東京駅と原宿の2店舗となっています。
2024年12月期の売上高は317億円、営業利益率は13.5パーセントで、グミを成長エンジンとして売上と利益を伸ばしている状況です。
また、当社はキャンディ市場でシェアナンバーワンを誇り、キャンディ専業の上場会社というユニークな企業です。総合商社の三菱商事が、出資比率約3割の主要株主となっています。
カンロの商品について

村田:当社の主力商品ブランドをご紹介します。まず、スライド上部の飴カテゴリについてです。社名にもなっている「カンロ飴」は1955年に誕生し、今年で70周年を迎えました。砂糖、水飴、醤油、食塩のみのシンプルな原料を使用し、素材の持つ風味を最大限に活かす技術や製法を駆使したおいしさが特徴です。
「健康のど飴」は、1981年に当社が菓子業界で初めて発売したのど飴の商品です。「金のミルク」キャンディは2012年に発売しました。香料・着色料不使用で、現在ではミルクフレーバーキャンディ市場において売上ナンバーワンのブランドとなっています。
続いて、下段のグミに移ります。「ピュレグミ」は2002年に発売しました。大人の女性をターゲットとしてグミの新たな購買層を開拓し、現在も成長を続けています。「ピュレグミ」については、後ほど詳しくご説明します。
「グミッツェル」は、5年をかけて開発し、2012年に発売しました。直営店やオンラインショップで販売されており、多くのメディアでも取り上げられている人気商品です。
キャンディ市場について

村田:続いて、当社が事業を行っているキャンディ市場の規模についてご説明します。キャンディ市場は、飴、グミのほか、錠菓やキャラメルなどで構成され、小売販売金額ベースでは、2024年に約3,500億円の市場規模となりました。コロナ禍でいったん落ち込んだものの、グミがいち早くコロナ禍での消費を捉え、成長基調に回帰しています。
特に、グミの市場規模は2021年にガム市場を上回り、メディアでも多く取り上げられるなど、市場全体の成長を大きく牽引しています。
飴については、コロナ禍からの人流回復、のど飴は健康意識の高まりから喉ケア需要が根強く、伸長しています。
カンロの業績推移

村田:当社の業績推移を示したグラフです。2020年、コロナ禍で市場全体が大きく減速する中、当社はグミを成長エンジンとする経営戦略により、売上高・営業利益ともに大きく伸ばすことができました。
営業利益率は折れ線グラフで示されています。売上高の大幅な増加が生産設備の高稼働と原価率の低減につながり、営業利益率も大きく伸長しました。2023年からは2桁の営業利益率を維持し、戦略投資を回収しながら、高い水準で効率的に利益を上げています。
川合直也氏(以下、川合):御社は大幅な設備投資により、キャパシティも拡大している中で稼働率が上がっているという認識でよろしいでしょうか?
村田:生産設備に投資し、グミのキャパシティを引き上げた結果、グミ市場が好調であることも相まって稼働率も上がっています。それが利益率の向上にもつながっていると思います。
2025年 連結業績予想

村田:続いて、2025年の業績予想です。今年2月に公表した予想値を7月に見直し、上方修正を行いました。
売上高については、過去最高だった2024年度を上回る計画となっています。拡張した松本工場グミ棟の活用や、「ピュレグミ」など主力ブランドが好調に推移し、前年比増収の見込みです。利益については前年比増益となる見込みで、営業利益は44億円と、こちらも過去最高を予測しています。
一部原材料の価格上昇による売上原価の増加、広告宣伝費増加などの減益要因を、増収による限界利益の増加などにより吸収する見込みです。売上高の増加で高利益水準を維持しながらも、中長期的な成長のために積極的な戦略投資を実行しています。
川合:今期の営業利益率は、前期比ではやや横ばいになっています。昨年までの高稼働は続いていると思いますが、今期はどのような投資を行って営業利益率が下がるのか、理由をお聞かせください。
村田:引き続き、営業利益率は高い水準を維持できると考えています。ご指摘のとおり、2025年の中期経営計画からは成長投資をしっかり進めていく方針です。まず、大きな設備投資として、グミのキャパシティを引き上げるべく、朝日工場の新ライン増設工事にすでに着手しています。
また、もう1つの成長エンジンである海外、特に米国市場に向けた投資として、現地法人を設立し、それに関連する費用を先行的に投じています。これら成長投資の先行投資が影響し、営業利益率は昨年より若干低下する見込みです。
川合:今回、上方修正が行われ、売上では5億円、利益では約1億円の増加となっています。バランス的に、売上が上振れした分をそのまま積み増したと考えてよろしいでしょうか?
村田:売上の増加分から考えれば、利益はもう少し上がってもよいのですが、先ほど述べた成長投資に加え、広告宣伝費や労務費を含む人件費の増加も考慮すると、利益率としては売上の増加割合に対してやや抑えられていると分析しています。
川合:では、売上の上振れ分を一定程度広告費に充てるなど、追加的な投資を行うということですか?
村田:おっしゃるとおりです。広告投資も短期的ではなく、中長期を見据えたCMの展開などを考えています。
カンロの強み

村田:ここからは、カンロの強みについてご説明します。カンロの強みは、スライドに記載の3点です。
1点目は、創業以来永きにわたり、市場のニーズをつかみながらキャンディ(糖)と向き合って磨いてきた「研究・商品開発力」、2点目は、100年以上の歴史で育んできたお客さまやステークホルダーのみなさまからの信頼をベースとした「ブランド力」、3点目は、全国に展開している販売拠点と強固な「販売力・営業力」です。
研究・商品開発力 ~カンロの商品開発方針~

村田:1点目の研究・商品開発力についてご説明します。カンロの商品開発方針は、原材料本来のおいしさを引き出す「素材を活かす」商品づくりと、キャンディならではの「機能性」を追求するという2つの方向性を軸としています。
企業パーパス「心がひとつぶ、大きくなる。」瞬間を、糖の力で具現化した商品、キャンディらしいキャンディを送り出すのがカンロの商品開発方針です。
100 年以上の歴史で育んだブランド力 ~ブランド強化戦略~

村田:2点目のブランド力についてです。当社は、社名でもある「カンロ飴」や、「健康のど飴」「ピュレグミ」などのロングセラーブランドを数多く有しており、お客さまの温かいご支援を受けて成長を続けています。
プロダクトブランドの強化に加え、企業ブランドを強化する中長期的な戦略を実施して企業価値を向上させ、激化する市場環境の中でカテゴリーナンバーワンメーカーとして成長を目指しています。
プロダクトブランドの直近の施策は、スライドに記載のとおりです。中長期的な施策としては、CX(顧客体験)の推進を通じて「カンロのファン」を醸成し、企業ブランドの強化によってカンロ全体のプロダクトブランドの向上を図ります。
100 年以上の歴史で育んだブランド力 ~企業ブランディングの強化~

村田:企業ブランドの強化についてご紹介します。2025年11月より、桑田佳祐氏の楽曲『明日へのマーチ』を起用した企業CM「あなたへとどく、ひとつぶを。」を公開しています。出演はカンロの飴やグミのひとつぶたちで、“たったひとりのあなたに”とどくように、ささやかなひとつぶが明日への前向きな力になるという意味を込めたCMとなっています。
中長期的には、CX(顧客体験)の進化・浸透に注力することで、ただ商品が売れるのではなく、カンロが好きだからカンロの製品を手に取っていただけるよう、圧倒的なナンバーワンブランドを目指していきます。
カンロの市場シェア

村田:3点目の「販売力・営業力」も含めて、3つの強みが相まって、キャンディ市場全体でシェア12.1パーセントのナンバーワンとなっています。
飴カテゴリでは、「金のミルク」などの人気の高いグルメキャンディを有するほか、「健康のど飴」をはじめとするのど飴商品が好調を維持しており、シェア19.4パーセントでトップシェアを獲得しています。
グミカテゴリでは、競争環境が激化しながら市場全体が活性化しています。その中で当社シェアは15.9パーセントで、現在2位に位置しています。グミにおいてもトップシェアを目指すべく、生産体制の整備や新商品の開発を進めています。
Kanro Vision 2.0

村田:ここからは、カンロの中長期的な成長ストーリーについてご説明します。今年2月に、2030年までの新しい中期経営計画「中期経営計画2030」を発表しました。新中期経営計画を検討するにあたり、現在の事業環境や当社の課題を踏まえ、「Sweetな瞬間を創り続けることで人々と社会に笑顔を。」という新たな長期ビジョン「Kanro Vision 2.0」を掲げました。
今、そして未来においても常に生活者に寄り添い、ニーズに応える柔軟性と揺るぎないビジョンに向かって「Sweetな瞬間」を創出し、笑顔を生み出す企業を目指していきます。
中期経営計画2030 財務目標

村田:「中期経営計画2030」で掲げている2030年の財務目標です。売上高は500億円以上、営業利益率は13パーセント以上を下限目標に設定しています。戦略投資で償却費も増大する状況下での「稼ぐ力」を可視化するため、営業利益と減価償却費を合算したEBITDAを追加しています。
資本効率については、ROIC11パーセント以上、ROE15パーセント以上を掲げています。2030年時点では足元の数値を下回るものの、より長期的に収益性を高めていく計画です。
戦略投資については、投資規律に則って資本コストを上回る収益性を確認した上で、確実に投資を実行する計画としています。本中期経営計画期間では、売上高と利益の定量的成長だけでなく、積極的な投資を通じて事業規模の拡大も図っていきます。
事業戦略

村田:「中期経営計画2030」の事業戦略は、スライドに記載の4つの骨子から構成されています。「Sweetな瞬間を創造する」「事業基盤を変革する」については、それぞれ2つの要素に分解しています。
「Sweetな瞬間を創造する」については、国内事業を中心にさらなる成長を図るため、継続的な新商品投入と生産キャパシティの拡大を進めるほか、高価値化によって飴・グミの両事業を拡充していきます。
「事業基盤を変革する」については、持続的な成長を目指し、米国を中心としたグローバル事業の拡大を進めるとともに、お客さまとの接点を増やすべく、ヒトツブ事業やデジタル事業の推進も行っていきます。
この2つの軸の相乗効果で、カンロの長期的な成長に取り組んでいく考えです。
Sweetな瞬間を創造する:国内グミ事業

村田:カンロの事業を細かく分けてご説明します。はじめに、国内グミ市場についてです。
グミ市場 市場規模予測

村田:スライドは、グミ市場の成長予測を示しています。今年2月時点では、2030年までに1,500億円程度までグミ市場が伸長すると予測しています。他社メーカーも生産キャパシティの増加を発表しており、当初の予想よりも市場が大きくなる可能性があると考えています。
コロナ禍以降、高い成長率を維持しているグミ市場は、在宅勤務などでの小腹満たしの需要に合致したことや、各種メディアでの取り上げなど、さまざまな要因の相乗効果により伸長しています。
また、グミは他のお菓子と比べて、味、形、色、食感など多彩な楽しみ方ができるのも特徴の1つです。SNSとの相性も良く、若い世代を中心にコミュニケーションツールとしての役割も担っています。当社を含めた国内メーカー各社も積極的に新商品を投入しており、この傾向は今後も続くと予想しています。
グミ市場 市場規模予測

村田:グミ市場の金額的成長の要因は、大きく2つの要素に分けられると考えています。それは、「間口」と「奥行き」という考え方です。
世代効果によりグミ喫食人口が増加して「間口」が広がり、10年前に比べてグミ喫食比率が上昇しています。また、1人当たりグミ消費金額がこの10年間で約2倍に増加し、「奥行き」も広がっています。
この「間口」「奥行き」の2つの要素が相乗効果を生み、市場が大きく成長したと考えています。
朝日工場 新グミライン増設

村田:「中期経営計画2030」の柱の1つが新グミラインの増設です。当社朝日工場の敷地内に建屋の増築、グミラインの増設、自動倉庫の新設など、総額約130億円の投資を予定しています。
グミラインは松本工場と朝日工場に各1ラインずつ稼働しており、この新ラインが3本目となります。新ライン増設により、グミの生産能力は約5割増強される見込みです。
新グミラインの稼働によって市場の一層の活性化とシェア拡大を図り、国内グミ事業のさらなる成長を実現していきます。
主力ブランド ピュレグミ

村田:グミの主力ブランド「ピュレグミ」についてです。「ピュレグミ」は2024年に市場販売規模100億円を達成し、3年連続でグミ売上ナンバーワンのブランドとなっています。
独自のすっぱいパウダーと、フルーツを食べているような果肉食感で他ブランドとの差別化を図っています。味だけでなく、選ぶ楽しさといった情緒的価値の提供も強みの1つです。
「ピュレグミ」は、同じ味で5色のパッケージを展開しており、その日の気分に合わせて好きなパッケージを選んでいただけます。パッケージの底には一つひとつメッセージが入っており、バリエーションも豊富です。みなさまもぜひ店頭で選ぶ楽しさを体感していただければと思います。
さらに、ターゲットを細分化した積極的なブランドエクステンションも「ピュレグミ」の強みの1つです。「ピュレリング」と「ピュレグミ プレミアム」はスライド右側に紹介しています。今後も幅広いユーザーのみなさまに愛されるブランドを目指していきます。
Sweetな瞬間を創造する:飴事業

村田:もう1つのメインカテゴリである飴事業についてご説明します。
市場動向 国内飴市場

村田:スライドのグラフは、国内飴市場(ハードキャンディ)の推移です。コロナ禍におけるマスク着用により、喫食シーンが一時的に減少しましたが、コロナ禍後の人流増加に伴い需要が回復し、健康意識の高まりからのど飴の需要が増加しています。
その影響で直近の飴市場は拡大しており、長期的なトレンドとしては安定すると予測しています。製造会社の減少やロングセラー商品の終売など、供給側・メーカー側の要因も影響し、2030年までは横ばいで1,200億円程度の市場規模になると予測しています。
カンロ飴 70周年プロジェクト

村田:今年発売70周年を迎えた「カンロ飴」について少し触れます。ブランドメッセージやキャッチコピーを刷新し、日本の優しい飴として新たな世界観を醸成することで、これまで「カンロ飴」を食べたことのない方にも手に取っていただけるよう訴求していきます。
日本人の味のふるさとである醤油を原料としたロングセラーブランド「カンロ飴」だからこそ提供できる価値を発信し、飴市場の活性化を図ります。
事業基盤を変革する

村田:中期経営計画のもう1つの大きな柱「事業基盤を変革する」の1つ目は、米国を中心とするグローバル事業の拡大です。
グローバル事業 米国市場参入

村田:米国の市場規模は日本の約10倍、1人当たりの消費金額は約3倍と、世界的に見ても大きな市場です。輸出販売の足がかりとなる「ピュレグミ」は、今年3月に日本だけでなく米国・中華圏にも対応した原料へリニューアルを行い、日本と同じ味わいで展開を進めています。
川合:米国市場について、規模が10倍と非常に期待できる市場だと思います。おそらくさまざまなマーケティング調査を行っているかと思いますが、これまでの調査での発見や、御社が勝ち筋と考える点についてお聞かせください。
村田:調査を進める中で、米国の大規模なグミ市場では、これまで子ども向けのニーズが強く、それが市場の成長を支えてきたと分析しています。
一方で、米国でも「ピュレグミ」と同様に、小型パッケージ化など大人向けの市場が少しずつ開拓されつつあると見ています。その米国市場に、まさに我々が日本で成長させてきた大人向けの商品「ピュレグミ」で参入することは、タイミング的にも非常に良いのではないかと考えています。
川合:フレーバーや食感が「ピュレグミ」の強みであると個人的に感じていますが、これらが米国で受け入れられる可能性や、米国で購入できるかどうかについてはいかがでしょうか?
村田:去年から今年にかけてさまざまな調査を実施し、実際に消費者の協力のもとにサンプリングを繰り返す中で、みなさまから「『ピュレグミ』の本物のような果実感や食感がとてもおいしい」「酸っぱさ(サワー)で、よりフルーツ感を味わえる」と好評をいただいています。したがって、味の面でも米国市場に受け入れられるのではないかと考えています。
川合:サンプル提供は、子どもから大人まで実施しているのですか?
村田:そのとおりです。サンプリングを行った場所にはお子さまももちろんいらっしゃいましたが、主に20代、30代の女性をメインターゲットとして配布を行いました。
米国事業 販路について

村田:米国事業の販路についてご説明します。まず、日本人やアジア人が比較的多い米国西側エリアへの輸出販売から開始しています。その後、日系・アジア系のグロッサリーストア、現地の地域展開小売店、全米展開の小売店へと、少しずつ販売チャネルを拡大していきます。
長期的スパンでは、さらなる規模拡大を目指し、現地生産なども視野に入れて事業展開を進めていく予定です。
川合:日系・アジア系のショップには、すでにほぼ商品が入っているのでしょうか?
村田:少しずつ販売を開始しています。現地にはいくつか企業があるため、100パーセントではないものの、多くの企業で取り扱いが始まっています。
川合:全米で展開しているような超大手の小売店などには、直接営業を行っているのでしょうか?
村田:現時点では、そのような大手小売業者には直接的にも間接的にもまだアプローチしていません。ただし、日系・アジア系のスーパーだけでなく、地元のスーパーや、意外なところではアパレルショップから、レジ横に洒落たグミや菓子を置きたいといった引き合いがあり、展開が始まっています。
米国市場展開に向けたスケジュール

村田:スライドは、米国市場展開に向けた取り組みをカレンダーにまとめたものです。今年1月に「ピュレグミ」の米国サイトをオープンしました。ラスベガスでの展示会に出展し、味やパッケージが高く評価されました。
また、先ほどご紹介したとおり、5月には現地法人を設立しました。6月末から7月にはニューヨークでの展示会にも出展し、味について高い評価をいただきました。また、ハート型が珍しいという声も多くありました。
このようなコンセプト全体の高評価を受け、「ピュレグミ プレミアム」についても展開を始めています。こちらも多くの方に試していただき、非常にジューシーだと好評を得ています。
販売については、9月に現地へ商品が到着し、店頭には10月から「ピュレグミ」のグレープ味とレモン味が並び始めました。11月からは「ピュレグミ プレミアム」も少しずつ販売開始しています。
先ほどお伝えしたとおり、米国ではグミが子ども向けから大人向けに変わりつつある兆候があります。その流れに沿い、当社が日本のグミ市場ナンバーワンブランドであるという自信を持って提案・促進していきたいと考えています。
グローバル事業の展望

村田:グローバル事業の展望についてお話しします。現在、グローバル事業は中華圏を中心としたわずかな輸出売上となっていますが、今期から米国への直接輸出の売上が計上され、徐々に拡大していく見込みです。
2027年7月には、先ほどご紹介した新グミ製造ラインの稼働後には生産能力が増加するため、輸出可能数量も増えていく見込みです。
将来的には、現地生産や現地でのM&Aも視野に入れ、2030年には全社売上高に占める割合を10パーセント以上、すなわち500億円の目標売上高に対して50億円以上をグローバル事業全体で達成できるよう取り組んでいます。
川合:現地生産やM&Aについてお話がありましたが、現地生産について、例えばどの程度の数量になれば現地工場が必要となるのでしょうか?
村田:まだ具体的には詰めきれていないのが率直なところです。現在はまだ微々たる規模ですので、数字としては売上が2桁億円規模に達したタイミングが1つの目安となるかと思います。ただし、現地生産をすぐに開始できるわけではないため、今から企業やエリアについて前広に調査・検討していきたいと考えています。
川合:M&Aについては、商流開拓と生産キャパシティ獲得の両側面があるイメージでしょうか?
村田:おっしゃるとおりです。その両面を想定しており、M&Aもチャンスがあれば実施したいと考えています。
川合:御社の米国事業における社内体制について教えていただけますか?
村田:国内側の社内体制については、グローバル事業として米国を中心に「ピュレグミ」を大きく展開していくために、社内でプロジェクトを立ち上げています。このプロジェクトでは、営業系からマーケティング系、現地法人を支えるコーポレート系を含め、全社で体制を整えています。
その上で、海外では米国に現地法人を設立しています。現時点では駐在員の派遣には至っていませんが、国内から定期的に出張し、現地の業務をサポートしています。また、現地では販売代理業務を行う方々と別途契約しており、連携しながら業務を進めています。
川合:御社の筆頭株主でもある三菱商事は事業に関わっているのでしょうか?
村田:現状では、当社のプロジェクトや現地法人の体制に三菱商事が直接関わっているわけではありません。ただし、ご承知のとおり三菱商事はグローバルに展開する企業で、米国でも多くの事業を行っています。特に米国のチャネル関連、工場などの生産拠点、M&A領域でのネットワークにおいては三菱商事に期待しており、連携をとっています。
ヒトツブカンロ事業

村田:続いて、当社の直営店事業であるヒトツブカンロ事業についてお話しします。「ヒトツブカンロ」は、創業100周年を迎えた2012年にJR東京駅内でオープンしたのがスタートです。
ヒトツブカンロ事業のコンセプトは、「ヒトからヒトへつながるヒトツブ」です。キャンディをあげる楽しさともらう楽しさを創り出し、小さなヒトツブがヒトからヒトへとつながっていくお店を目指しています。
人気ナンバーワン商品は、スライド左側の「グミッツェル」です。外側はパリッ、中はしっとりの次世代食感グミで、ポップアップストアを展開するなどブランド認知率の向上を進めています。機会がありましたら、東京駅は「グランスタ東京」、原宿は「ハラカド」にある常設店へぜひ足を運んでいただければと思います。
株主優待

村田:最後に、カンロの株主になっていただいた場合についてご説明します。12月末を基準日とする株主優待は、3つのコースからお選びいただけます。300株から1,799株保有の場合は1,000円相当、1,800株から2,999株保有の場合は2,000円相当、3,000株以上保有の場合は3,000円相当の当社製品を優待としてご用意しています。
また、今年から長期保有の方への優待を新設し、3,000株以上を3年以上保有されている方には、5,000円相当の当社製商品をお届けしています。その際には、人気の「グミッツェル」が入った「ヒトツブカンロ満喫セット」も選択いただけます。
還元方針

村田:配当実績と還元方針についてです。前中計期間中に株主還元を大幅に拡充してきました。今年7月には、1株を3株とする株式分割も実施しました。投資単位当たりの金額を引き下げて株式の流動性を高め、幅広い投資家のみなさまにより投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的としています。
本中期経営計画期間においては、株式分割後基準で年間31円を下限に、配当性向40パーセントを維持し、成長機会の追求と安定的な配当の両立を図っていきます。
本日のまとめ

村田:本日のまとめをお伝えします。1つ目に、稼ぐ力の向上と戦略投資の両立で、収益性の向上と売上・利益の成長に繋げる好循環を構築していきます。
2つ目に、新グミラインの増設で生産能力を飛躍的に増強し、市場活性化とシェアの拡大を目指します。
3つ目に、米国を軸足としたグローバル展開で持続的成長のための事業領域の拡大を行っていきます。
これまでもこれからも、世界にもっと「心がひとつぶ、大きくなる。」瞬間をお届けしていきます。カンロの商品、サービス、そしてカンロ自身への応援をどうぞよろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:「中期経営計画2030」達成に向けた成長ドライバーについて
荒井沙織氏(以下、荒井):「『中期経営計画2030』の達成に向けて、海外展開や新カテゴリ開発など、成長ドライバーをどこに置いているのか、数量・利益の観点から中長期のイメージを教えてください」というご質問です。
村田:先ほど少しご説明したように、当社の成長ドライバーは2つあります。1つはグミ事業での成長を図ること、もう1つは米国を中心に海外事業を拡大していくことです。
売上・利益の考え方について、まず売上に関しては、新グミラインの増設により生産数量が増加し、これが売上に大きく寄与すると考えています。また、日本だけでなく米国やその他の地域を含めたグローバル市場にしっかり入り込めれば、さらに売上増加が期待できると考えています。
利益については、「中期経営計画2030」で国内事業のグミだけでなく飴も含めた売上を引き上げることで、高い利益率を維持しながら確実に利益を稼いでいく計画です。
一方で、売上のエンジンとなる米国事業では、2030年までに黒字化になんとか持っていきたいと考えていますが、それが「中期経営計画2030」の中でどれだけ利益貢献できるかについては、今後の米国事業の状況次第だと思います。
荒井:もし事業が好調に進めば、工場設立などの設備投資も発生しますね。
村田:そのとおりです。設備投資を行うためには、国内でしっかりと成長し、稼いだ利益を投資に回すというサイクルを回していくことが非常に重要です。成長と投資の両立が大きなポイントだと考えています。
質疑応答:商品の価格戦略と商品開発について
荒井:「原材料価格や物流コストの高止まり、健康志向の高まりなど環境変化が続く中で、カンロらしさを維持しながら価格戦略と商品開発をどのように両立していくのか、考えをお聞かせください」というご質問です。
村田:非常に難しい質問で、お答えしにくい面があります。
荒井:ビジョンのような観点になるのでしょうか。
村田:商品開発においてさまざまなコストが上昇している点については、当社も2022年から毎年価格改定を行ってきました。お客さまにもご理解いただきながら、2023年、2024年と続けて値上げを進めてきましたが、2025年は実施しない予定です。
価格改定については、今後も原材料費、人件費・労務費、物流費などの動向を注視しながら進めていきたいと考えていますが、そのコストをどのように改善し、自社の取り組みとして価格に転嫁するかについては、慎重に検討する必要があります。
一方で、価格においては提供できる商品の価値が非常に重要であると捉えています。そのため、消費者の方々に喜んでいただけるような商品開発を進めていきたいと思います。
当社は今回の中期経営計画において「高価値化」を掲げています。この高価値化のコンセプトには、「ごほうび」「リラクゼーション」「スイッチ」「ヘルスケア」の4つの基軸があります。これらをもとに商品の高価値化を図りつつ、商品開発を進めていく方針です。この4つの基軸が、ある意味「カンロらしさ」であると考えています。
荒井:私個人としては、「ピュレグミ」よりも「ピュレグミ プレミアム」のほうが特に好きです。「ピュレグミ」と「ピュレグミ プレミアム」では価格も違いますが、高付加価値商品とのバランスについて、今後さらに差別化していく予定があるのか、また、現時点でうまくバランスが取れているのか教えてください。
村田:現状では良いバランスで収まっていると思います。ただし、先ほどのご質問のように、原材料価格の上昇などさまざまなコスト増加が発生している中で、確実に売上・利益を出していくためには、高価値化をおろそかにすると非常に厳しい状況になると予想されます。
一方で、消費者の方々から「カンロの商品は最近普通だね」と見られることも避けたいと考えています。消費者が「やっぱりカンロの商品は楽しいね」とワクワクするような高価値化については、通常商品とのバランスをとりながら注力していかなければならないと考えています。
質疑応答:ヒトツブカンロ事業の現状と今後の展望について
川合:「ヒトツブカンロ事業はブランド力向上を目的とした取り組みだと思いますが、中長期的にはどのようなかたちで収益に貢献していくと考えていますか?」というご質問です。
村田:ヒトツブカンロ事業の現状については、店舗は2店舗のみで、販売は「グミッツェル」が中心のオンライン展開に限られていますが、この事業は新規事業の中でもかなり大きな売上に成長しています。利益面でも、会社にとって利益貢献できる事業にまで育ってきました。
ここに至るまでに10年以上かかりましたが、現在ではそのような状況にあります。このヒトツブカンロ事業については今後も大切に育てていきたいと考えています。
ヒトツブカンロ事業において、直接お客さまと接点を持ち販売できることは、カンロとお客さまを直接つなげる役割を果たしており、お客さまへのエンゲージメントを高めることにもつながっています。今後の取り組みとして、お客さまへの販売データをデジタルとかけ合わせることで、よりよい商品やサービスの提供につなげていきたいと考えています。
質疑応答:米国企業のM&Aにかかる期間ついて
川合:「米国現地で製造工場の会社をM&Aする場合、整備から実際の生産までの期間はどの程度と見ればよいのでしょうか? 仮に日本で同じことをした場合の期間とあわせて教えてください」というご質問です。
村田:まず日本についてお話しすると、先ほどもご説明したとおり、2027年7月から新グミラインが稼働予定です。実際には2025年から準備を進めているため、2年以上の期間が必要になると思います。
米国についても、通常であれば約2年はかかると考えています。ただし、新規立ち上げでは2年かかりますが、もしM&Aという手法を取れるのであれば、生産拠点がすでに存在する場合があり、比較的短期間で立ち上げられると考えています。
質疑応答:過去最高売上・利益達成の要因について
川合:「2024年にかけて過去最高の売上と利益を達成しています。この要因について、商品ポートフォリオ、ブランド戦略、販売戦略のうち、特に効いたと考えるポイントを教えてください」というご質問です。
村田:どこかが特に突出しているとは捉えていないのですが、強いて言えば、当社は2019年からグミを成長エンジンとする方向に舵を切り、商品ポートフォリオをグミに大きく傾けたことが1つの大きな要因だと思います。
もう1つは、直近2年ほどSKUのマネジメントに取り組んできたことです。生産キャパシティの上限がある中で、注力するブランドを決め、販売する商品を明確にするなど、販売側と生産側がうまくかみ合うかたちでSKUのマネジメントを進めてきたことがポイントだったのではないかと分析しています。
村田氏からのご挨拶
村田:本日は当社の説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。本日ご説明したとおり、当社はグミ商品と、米国を中心とした海外市場を今後の成長エンジンとして、お客さまがワクワクするような笑顔をお届けできる商品やサービスを提供していきたいと考えています。
また、単に商品やサービスを提供するだけでなく、情緒的な価値もお届けできるよう取り組んでいきます。ぜひ、今後の当社の成長を応援していただければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:営業利益率は高い水準を維持されていますが、原材料価格や人件費が上昇する中でも、利益率を守れている理由を教えてください。
回答:ご質問のとおり近年の事業環境は厳しい状況が続いていますが、その中、当社が利益率を向上、維持してこられたのは、生産効率改善による生産数量の増加、ブランドと利益率を意識したSKUマネジメント等に取り組みながらトップラインを伸ばす(=増収)ことで、販管費の増加を吸収し、一定の利益を生み出すことができていると認識しています。
<質問2>
質問:2030年に売上高500億円以上を目標とされていますが、その達成に向けて今後最も重要になるポイントは何だとお考えでしょうか?
回答:スライドにてご説明したとおり、新グミラインの増設を含む国内グミ市場への取り組みと米国を軸足としたグローバル展開を成長ドライバーにすることが重要なポイントです。
新グミライン増設は、生産数量が大幅に増加(国内外への供給増加)するだけでなく、高価値の新製品の販売構成比を従前より引き上げることも可能となり、定量・定性両面での成果につなげられると認識しています。
米国事業については、継続的に販売体制、マーケティング活動を強化していきます。
