■成長戦略
1. 2030年12月期までの成長計画
ユミルリンク<4372>は成長に向けた基本方針として「メッセージングチャネルの拡充とプラットフォーム化により持続的な成長を遂げる」を掲げている。消費者の生活様式の変化やITツール・テクノロジーの進化に伴うコミュニケーション手段の多様化に対応し、選択と集中を図りながら同社のメッセージングプラットフォームのカバーエリア拡大を推進する。
同社は2026年3月に2030年12月期までの成長計画を公表した。既存・新規領域を併せた売上成長は2025年12月期から2030年12月期のCAGR10%、収益性向上はオーガニック成長により、当期純利益について2030年12月期に2025年12月期比2.6倍を目指すとした。こうした業績拡大により時価総額100億円の達成を目指す。重点施策として、売上成長では既存領域(Mail、SMS、SNS)での市場シェア拡大、サービス領域の拡大(新サービス、新チャネル、M&A)などを推進する。メール市場でのシェアは2030年12月期に12.5%(2024年12月期実績11.2%)を目指す。新サービスについては2026年12月期に「Cuenote MA(仮称)」、2027年12月期に「Cuenote Hub(仮称)」の投入を計画している。マーケティング面ではリード獲得数増加に向けてオンラインマーケティングを強化する。収益性向上ではスケールメリットの追求、新技術採用によるコスト抑制、業務効率化などを推進する。
獲得するキャッシュ(30~55億円)の活用としては、オーガニック成長投資として人材投資に7億円、開発・設備投資に7~10億円、インオーガニック成長投資としてM&A・資本業務提携に10~30億円、及び配当に6~8億円とした。人員の拡充については、2026年12月期は18名、2027年12月期以降は毎期15名の拡充を計画している。資本業務提携では、シナジーを生み出せるテクノロジー・サービス企業に対するM&A・アライアンスを積極的に推進する。
なお2026年12月期の重点施策として掲げている新サービス基盤への設備投資について、同社は2024年12月期より「サービス基盤の技術刷新による収益性の向上」に取り組んできたが、SaaSサービス用設備で利用する基盤ソフトウェアの価格が高騰しているため、他の基盤ソフトウェアの評価を実施した結果、ソフトウェアの変更を決定(2025年12月期)した。これにより2026年12月期は、新基盤ソフトを動作させるサーバ設備を新規取得するため減価償却費が増加する。また将来的には新技術採用基盤への顧客移管によって収益性を高めるが、サービス移管に3~5年を要するため、その間(2026年12月期~2028年12月期)は旧設備との並行運用となって重複コストが発生し、一時的な利益押し下げ要因となる。ただしサービス移管完了後は年間3~4億円のコスト削減を見込んでいる。
株主還元は2024年12月期より配当開始、2026年12月期は増配予想
2. 株主還元策
株主還元については2024年10月16日付で配当方針の変更を発表した。従来は財務体質の強化と事業成長のための投資が必要であると考え、配当を実施していなかったが、業績が堅調に推移していることを鑑み、企業価値向上のための成長投資と内部留保の確保とともに、株主への安定的かつ継続的な利益還元の実現が可能であると判断し、2024年12月期より配当を開始(年間配当55.0円=普通配当18.0円+設立25周年記念配当37.0円)した。
2025年12月期の配当は年間19.0円(期末一括)とした。前期との比較では記念配当37.0円が剥落するため減配の形だが、普通配当ベースでは1.0円増配となる。配当性向は20.1%となる。また2026年12月期の配当予想は前期比1.0円増配の20.0円(期末一括、普通配当)とした。予想配当性向は20.9%となる。今後も成長投資、内部留保の充実、株主還元を総合的に勘案し、配当性向15%を目途に継続実施を目指す。
事業を通じて社会課題の解決に貢献
3. サステナビリティ経営
企業理念に「価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指す。」を掲げ、事業を通じて社会課題の解決に貢献することを基本方針としている。重点取り組みとしては「Cuenote」シリーズの提供による紙資源や化石燃料等の消費削減、顧客企業の働き方改革への貢献などのほか、女性従業員の比率向上(目標35%を維持、2025年12月末実績35.5%)やステークホルダーとの対話などにも取り組んでいる。
高利益率のビジネスモデルを評価、重点施策の進捗状況に注目
4. 弊社の視点
同社の収益構造はストック収益が9割超を占め、ストック収益が安定的かつ継続的に積み上がっていく高利益率のビジネスモデルである。この点を弊社では高く評価している。また企業のデジタルマーケティング投資は拡大基調で同社を取り巻く事業環境は良好であり、メールの高速・大規模配信を可能にした独自の技術力という強みにより同社の市場シェア拡大余地は大きいと考えられる。2026年12月期は将来の成長加速に向けた事業基盤強化の時期と位置付けているため利益成長が一時的に停滞するが、将来的には新技術採用基盤の成果によって、利益面も再成長ステージに向かうことが期待される。したがって今後も成長に向けた重点施策の進捗状況に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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