■業績動向
1. 2026年6月期の業績概要
スカラ<4845>の2026年6月期の連結業績(IFRS基準、継続事業ベース)は、売上収益で前期比4.3%増の8,533百万円、営業利益で同30.5%減の522百万円、税引前利益で同32.3%減の490百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益で同63.2%減の361百万円と増収減益となった。
売上収益は、主力のDX事業が大型開発案件の一時売上の反動や一部事業の売却により前期比197百万円の減収となったが、TCG事業が同526百万円増、人材事業が同115百万円増とそれぞれ伸長したことにより増収を確保した。利益面では、増収効果により売上総利益で同3.3%増の4,083百万円となったものの、M&A活動の再開に伴う関連費用の増加等により販管費が同5.3%増の3,579百万円となったほか、前期にその他の収益として計上した事業売却益約2億円がなくなったことが減益要因となった。
事業売却益等の一時的な損益の影響を除いたNon-GAAPベースの業績で見ると、営業利益は同6.0%減の528百万円、税引前利益は同7.2%減の496百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同19.2%減の301百万円となり、M&A関連費用の計上がなければ営業利益は前期並みの水準を確保していたものと見られる。
また、計画比では売上高で266百万円、営業利益で107百万円下回った。売上収益はTCG事業が計画を334百万円上回るなど好調に推移したが、採算重視の営業活動を進めたことによりDX事業が530百万円下回ったことが影響した。営業利益では、DX事業で計画を36百万円上回るなど主力事業はおおむね計画の範囲内で着地したが、M&A活動の再開による関連費用の増加が主な下振れ要因となった。
TCG事業が高成長、DX事業はストック収益が着実に積み上がる
2. 事業セグメント別動向
(1) DX事業
DX事業の売上収益は前期比4.3%減の4,419百万円、営業利益(IFRS、本社費配賦後ベース、以下同)は同42.5%減の446百万円、本社費配賦前営業利益で同30.9%減の669百万円となった。また、事業売却益等の一時的損益を除いたNon-GAAPベースの本社費配賦前営業利益は同14.0%減の669百万円となった。売上収益は、前期に計上した大型システム開発案件(約3億円)※の一時売上の反動や、一部事業(約1億円)を売却した影響で減収となったが、主力のSaaS事業は月額課金収入の積み上げにより増収となった。
※ 金融サービス企業向けに、オートローンのWebサービスシステムを開発した。
会社別の動向を見ると、スカラコミュニケーションズは、前期にあった大型システム開発案件の一時売上の反動や一部事業の売却により減収減益となった。注力事業であるSaaS事業は、相対的に利益率の低い従量課金収入が減少したものの、月額課金収入は顧客件数の増加により増収となった。FAQシステム「i-ask」やサイト内検索エンジン「i-search」で生成AI機能を実装し、利便性の向上を図ったことが顧客件数増加につながった。
一方、エッグの業績は増収減益となった。売上収益は、ふるさと納税システムの既存顧客向けリニューアル案件(約1.7億円)の納品があったことに加えて、経済産業省や国土交通省など中央省庁が実施する公募案件向けに、同社の事務局システムに対する引き合いが拡大したことが増収要因となった。ただ、利益面では既存顧客向けリニューアル案件のコストが想定以上に増加したことや、ふるさと納税システムの保守サービス減少が減益要因となった。
なお、KPIとしているストック型ビジネスのMRR(月次売上収益)は第4四半期で前年同期比9.9%増の234百万円、期末の顧客アカウント数は同9.2%増の1,311件と着実に積み上がった。同社ではAIエージェント機能の開発によるサービスの高付加価値化を図ることで、顧客アカウント数の積み上げとクロスセル/アップセルによるARPU(顧客当たり売上高)の上昇に取り組み、SaaSを中心としたDX事業を拡大していく戦略だ。なお、同社のサービスの中にはふるさと納税システムや給付金申請管理システムなど期間限定で利用されるサービスがあるため、その動向によって顧客アカウント数も増減する。例えば2025年6月期末の顧客アカウント数1,201件に対して、2026年6月期第1四半期末は1,386件に増加し、第4四半期末には1,311件まで減少しているが、これは期間限定アカウント数の減少が原因で、同要因を除けば増加傾向となっている。
(2) 人材事業
人材事業の売上収益は前期比11.4%増の1,127百万円、営業利益は同11.5%増の165百万円、本社費配賦前営業利益で同10.0%増の251百万円となった。企業の新卒採用意欲が活発ななか、体育会学生や女子学生に特化した採用支援サービスに対するニーズが引き続き旺盛で、就活イベントの販売が好調に推移した。ただ、学生の就職活動開始時期が早期化するなかで会員獲得の取り込みがやや遅れ、計画(売上収益1,150百万円、営業利益190百万円)に対しては若干下回った。なお、中途採用支援事業は着実に実績を積み上げており、売上収益で約1.5億円、営業利益も単年度で初めて黒字化を達成した。
(3) TCG事業
TCG事業の売上収益は前期比23.1%増の2,804百万円、営業利益は同33.5%増の353百万円、本社費配賦前営業利益で同23.8%増の393百万円と大きく伸長し、3期ぶりに過去最高業績を更新したほか、計画(売上収益2,470百万円、営業利益350百万円)に対して上回って着地した。人気タイトルを中心にトレーディングカードの需要拡大が続くなか、当期は「カードショップ -遊々亭-」オープン20周年記念キャンペーンを実施するなど新規会員の獲得と顧客ロイヤル化を推進したことが好業績につながった。また、トレカ流通業界向けのシステム開発案件を1件受注し、一時売上と月額売上合わせて約1千万円を計上した。
2026年6月末時点の「カードショップ -遊々亭-」の登録会員数は前年同期比12.1%増の35.4万人となり、第4四半期の平均PV数も同57.8%増の17百万PVと大幅に増加した。平均購買単価も同21.8%増の10,476円に上昇し、増収増益要因となった。
(4) インキュベーション事業
インキュベーション事業の売上収益は前期比33.1%減の182百万円、営業損失は58百万円(前期は16百万円の損失)、本社費配賦前営業損失は44百万円(同16百万円の損失)となった。官民共創事業は「逆プロポ」をはじめ各種サービスが順調に推移したものの、M&A支援サービスの人員(6~7人)をグループ内で手掛けるM&A案件に振り向けたことで、同サービスの売上計上が大きく減少したことが減収減益要因、並びに会社計画(売上収益250百万円、営業損失20百万円)の未達及び損失拡大要因となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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