こんなに怖いCMちょっとない。子どもたちを震え上がらせた衝撃の名作

 

ナレーションは、フランスの天才詩人、アルチュール・ランボーについての説明に終始し、ウイスキーなど無関係のように、終わる。ナレーションは以下である。

その男は1人で立っていた
10代で天才詩人
10代であふれる才能を放棄
20代は放浪
そして砂漠の商人
永遠の詩人ランボー
あんな男ちょっといない
サントリーローヤル

そして、バックに流れる音楽は、単調でこれも不安と異国の、その先の異国の遠い世界に誘うような雰囲気を漂わせる。題名は「鞄を持った男(L’ Homme A Valise)」で、作曲はマーク・ゴールデンバーグ。米ロック歌手ジャクソン・ブラウンのギタリストとして長く活動し、ポインターシスターズ、シカゴ、オリビア・ニュートンジョン等有名アーティストのアルバムにも多数参加している。

このCM全編はYoutubeでも見られるようになっており、1970年代からクリエイティビティで評判の高かったビールやウイスキーなどのサントリー関連商品CMが数多く動画で閲覧できるようになっている中で、とりわけ現在も閲覧数が多いものと記録されている。それだけに、このCMのインパクトは強烈だったのだろう。

その雰囲気を知るにはYoutubeの書き込みで表明されたコメントが明快に表現している。約1年前のコメントで、ハンドルネーム「Katomotoki」は「なぜかわからないけど、子供の頃このCMが怖くて怖くて。料理天国見てて、このCMが始まると目をつぶってました」とし、その反応として「Megu12」は「ものすごく分かります。私も子供の頃、このCMが怖くて怖くてたまりませんでした。その記憶が今でも残っています…」と応じ、続いて「Nyankosensei」は「私にもまったく同じ記憶があります! 料理天国で流れてるCMで、すっごく怖かった!」と続いた。この異様な雰囲気を私も同様に感じ取り、後にシルクハットの男がランボー自身を演出しており、その作品の世界そのものが、ランボーが詩人から砂漠の放浪、商人になった事実を題材にしていることを知った。

このCMは当時、電通の杉山恒太郎がプロデュースしたもので、彼は小学館の「ピッカピッカの1年生」やセブンイレブンの「セブンイレブンいい気分」などを手がけ、当時CM界ではトップクラスの実力を持っていた。その後、電通常務執行役員となり独立、現在は株式会社ライトパブリシティの社長を務めている。

image by: Shutterstock

 

メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』より一部抜粋

著者/引地達也
記者として、事業家として、社会活動家として、国内外の現場を歩いてきた視点で、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを目指して。
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