特別対談Part3 高城剛×石田衣良「デカすぎる企業は絶滅恐竜と同じ」

 

石田:でもさ、ツーリズムじゃ食えないじゃないですか。要するに行ったらまた都市に帰って来ないといけないし。

高城:あまり知られていませんが、今は、世界中の南の島でバブルが起きていて、日本でも石垣島に行くと、居酒屋が混んでいて入れない状態まできています。ツーリズムは、航空宇宙産業を抜き、世界最大の産業に成長しました。

石田:そうなんだけど、それは都市の人口と南の島の人口を考えたら、圧倒的に差があるじゃないですか。

高城:今、南の島経済圏というネットワークが広がっているわけですよ。これまでは世界の先進都市、先進国という括りで見ていましたけど、都市と南の島以外は残らないと、僕は思っているんです。今は南の島同士で連携して新しいネットワークのようなものができはじめた。たぶん、それらがLCCでつながり合う。そうすると、中間的な地方都市が没落する。小さな話では、日本人でかき氷屋をやっている男の子が、世界中の南の島だけに店舗を出そうとしてうまくいっている。

石田:ほー。それはおもしろい。

高城:今はフードトラック……というか屋台なんですけど、いよいよあちこちに店舗を構えていこうかというところまで来ているんですよ。オーガニックのかき氷屋で、1個1000円。かき氷ですよ!でも考えてみれば、お祭りのかき氷だって、今は600円です。オーガニックのトッピングが乗っていたら、1000円でもいいかなと思いますよね。かき氷なのでセットアップコストも安いんで、南の島でやれるんです。しかも大きい場所ではやらない。ハワイならオワフ島ではやらないで、カウアイ島とか小さい島で店を開いて、今は小さくても、このような動きがどんどん広がっていくと思いますよ。今なら、早い者勝ちです。

石田:そういうケースはあるでしょうね。

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高城:今までは、都市で何もかも始まっていました。スターバックスだってマクドナルドだって。でもこれからは違うと思う。全然関係ないところで始まって、しかもメインストリームには来ない

石田:それは日本の地方とかではダメなんですか?

高城:逆です。今後、新しい試みは都市では成立しなくなっていくんです。

石田:日本の地方都市だと、南の島のかき氷の理論はうまく働かないのかな。

高城:いや、例えばKOEっていう日本のブランドあるけど、ほとんどの人が知らないと思います。でも、日本中で売れている。なぜなら、東京にないからです。

石田:それはどこで出店しているの?

高城地方のモールだけです。モードなブランドなんだけど、他のモードなブランドよりも安い。もちろんユニクロよりは高い。モードなブランドでユニクロよりは高いけど、結構かっこいいんですよ。それが地方のモールだけに出てるんですよ。なぜなら、都市っていう新しい王様領土モデルに入ると、大変だからですよね。

石田:そうは言っても、世界中の人間を、南の島だけで食わすのは、とても無理だしなー。

高城:いや、南の島だけじゃなくて、周辺都市を含めた分散じゃないですか?僕はバルセロナを拠点にしてけっこう経ちますが、その前はロンドンにいました。僕の青春時代だった80年代は、ニューヨークやロンドン、パリが憧れでしたね。ところが、インターネットが普及した90年代後半以降は、周辺都市の方が俄然おもしろいんですよ。ベルリンやバルセロナとか。人口は大したことないんですよ。1000万人どころか、180万人しかいません。それでもすごくおもしろいし、十分ビジネスは成立するんですよ。そこで何かをして、ロンドンやパリやニューヨークに行かずに、周辺都市だけでどんどん枝葉が広がってネットワーク化している業態が目立ちます。そのような街をLCCが飛び交いあって。南の島もそういうことになっていくんだと思う。

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