お寿司の「1貫」って1個?2個? そもそもなぜ意味が揺れているのか?

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大学で教鞭を取る傍ら、身近な疑問研究家として数多くの著作を出されている星田直彦さん。今回は、そんな星田さんの無料メルマガ『社会人の雑学――★雑木話★(ぞうきばなし)』で取りあげられていた、お寿司を数える単位「貫」に関する雑学をご紹介しましょう!

寿司の1貫

板前さんが目の前で握ってくれて「へぃ、お待ち」と出してくれる寿司もいいが、私は回転寿司も気に入っている。その回転寿司でさえ、頻繁に行けるわけではないのだが……。

回転寿司でも非回転寿司でもたいていの場合、握り寿司は2つまとめて提供される。私は2つペアで「1貫」と呼んでいた。昔からそう呼んでいた。そう呼ぶことに自信があった。

ところが、回転寿司のお店に置いてある「持ち帰り用の寿司」のチラシをよく見ると、どうも違っている。その店では握り寿司の個数そのものが「貫」のようにとれる書き方がされていた。

20代の若い人数名に聞いてみたが、握り寿司は1つを「1貫」というと思っているとのことだった。つまり、うさぎを1羽、2羽と数えるように、「貫」とは握り寿司の数え方だと思っているとのことだった。

まとめよう。握り寿司を前にして、「1貫」というとき、人によって主張が違う。

「1貫」とは、にぎり寿司1個のことである。
「1貫」とは、にぎり寿司2個のことである。

1個か2個かというのは、全然違う。全然違うのに、どうしてこんな「重要」なことで「意味が揺れている」んだろう?

そこで、私は考えた。きっと現在は、「1貫=2個」から「1貫=1個」に移り変わる過渡期なのであろう。このあたりのことを調べてみようと思った。

よくよく考えてみれば、「貫」というのは質量の単位である。質量の単位と考えれば、「1貫」の寿司が1個の場合もあるし、2個の場合もあるし……、そういうことが起こったって不思議はない。

しかし、1貫は3.75kg。「1貫」のお寿司は、一人分としては多すぎる! これは、握り寿司の歴史と質量の単位「貫」の歴史について調べ、どこかで接点を見つければよいと気がついた。

◆「貫」は「つらぬく」と読む。
質量の単位である「貫」は、やはり「つらぬく」に関係がある。
天秤で質量を量るときには、規格の整った分銅がたくさんあると便利である。身近にあるものでは、やはり硬貨だろう。金銭としての値打ちを一定にするためにも、また、信用のためにも、硬貨は均一性が求められる。

◆江戸時代の一文銭1枚の重さは3.75g。このころの一文銭には四角い穴が空いていて、その穴は紐を通して大量に持ち歩くときに利用された。
一文銭100枚を紐に通したものが「百文差し」と呼ばれた。ちょうど100文の買い物をするときには、「百文差し」1本をぽ~んと渡せばよい。

◆みなさんも想像すればお分かりいただけると思うが、同じ硬貨を100枚数えて、それに紐を通し、ひもから抜けないように頭とおしりを括るという作業はなかなか大変だ。この作業を行うことに対する作業賃がほしいくらいだ。「お代は、100文」だよと言われて、百文差しを簡単に渡すのはなんだか悔しい。
そこでかどうかはわからないが、当時は実際には96枚で百文の価値があるとされていた。

◆さて、1枚 3.75gの一文銭が96枚だったら、3.75×96=360(g)。これだけの重さがある。この360gという質量、ちょっと記憶に残しておいてください。

◆ちなみに、現在の五円硬貨1枚の質量が3.75gだ。

◆日本には「匁(もんめ)」という質量の単位があって、「1匁=3.75g」だ。「♪勝っ~てうれしい花いちもんめ」の「もんめ」が、これ。

>>次ページ 一人前の重さは銭差し百文とほぼ同じだった?

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