米議会を沸かせた安倍スピーチライターの正体と「戦後70年談話」

 

「スピーチライターは、日経BP社『日経ビジネス』記者出身の内閣官房参与・谷口智彦さんです。谷口さんは第1次安倍内閣で国際広報を担当する外務省外務副報道官を務め、その後、明治大学国際日本学部客員教授、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授なども務めています」

「第2次安倍内閣では2013年1月に内閣広報室内閣審議官に就任し、14年4月から内閣官房参与をしています。英語に堪能なのはもちろんですが、東大出のキャリア官僚なんかに負けるか、という意識が強い人のようですね。安倍さんが2013年2月に訪米したときの国際戦略研究所(CSIS)での演説、同年9月の国際オリンピック委員会総会での東京オリンピック招致のプレゼンテーション演説も、谷口さんが手がけました」

「とくに私の印象に残っているのは、戦後70年という節目の年に日米両国が和解したことを示すため、日米戦争の当事者やその子孫を同席させ、握手させたことです。米側は23歳の海兵隊大尉として中隊を率い硫黄島に上陸したローレンス・スノーデン海兵隊中将、日本側は硫黄島守備隊司令官だった栗林忠道大将の孫である新藤義孝国会議員(元総務大臣)です。アジア諸国とのさらなる和解を視野に入れながら、『昨日の敵は今日の友』を演出したわけで、全員立ち上がっての拍手は感動的でした」

「安倍さんの英語については、朱字で注意書きのある草稿の棒読み調だった、などという人がいますが、45分間たいへんよくやったと思います。大きな英字に朱が入った草稿を一切隠さず、自信をもって堂々と演説したことが、かえって、そして非常によかったですね」

「この点は、議会演説より前の段階から、チーム安倍がうまく演出していた印象があります。たとえばアッキーこと昭恵夫人が、安倍さんが演説を練習する写真をフェイスブックにアップして、親近感を抱かせた。これを受けて安倍さんは、晩餐会のスピーチで、『もう家内が演説の練習は聞き飽きたと言っている』と笑いを誘っていたでしょう」

「私の親しい英語の専門家は、最後の『Thank you so much』は女性っぽく、やはり『Thank you very much』のほうがよかった。あとは、たどたどしい点があっても合格点だ、といっていました。私が『安倍さんの舌が回りやすいように、so muchのほうにしたのでは』といったら、『そうかもしれない』といっていました。全体としては、どこに出しても80点以上をもらえる立派な演説だったと思います」

 

慰安婦問題を転じて誇りを取り戻す

Q:4月29日の演説は合格点。では、今年の終戦記念日に予定されている戦後70年の首相談話(「安倍談話」)に盛り込んでいくべきだと小川さんが考えるのは、どんなことですか?

小川:「戦後70年の『安倍談話』では、日本だけでなく、世界の戦後に決着をつけ、日本が世界平和の先頭に立つことを、誇り高く謳い上げるべきです。そのためには、とりわけ慰安婦問題と靖国神社問題について、どこからもつけ込まれないような論理を構築し、謝罪外交と決別する姿勢を示す必要があります。そして、国内世論に対しては『日本人が誇りを取り戻すための戦後70年の安倍談話』であることを明確にしなければなりません」

「安倍外交は、アメリカ議会での演説が高い評価を受けても、それだけで満足しては不充分であることは言うまでもありません。やはりアジアに目を配り、とりわけ中国、韓国との関係改善を進めていく必要があります。そのための最大の課題は、やはり慰安婦の問題でしょう」

<<続きはご登録の上、ご覧ください/初月無料>>

image by: 自由民主党

『NEWSを疑え!』第403号より一部抜粋

著者/小川和久(軍事アナリスト)

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • 米議会を沸かせた安倍スピーチライターの正体と「戦後70年談話」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け