ところで、8月24日に開かれた内田茂の政治資金パーティーには菅義偉官房長官や自民党の二階俊博幹事長、細田博之総務会長ら政府・与党の超大物を含む国会議員約15人が出席し、内田を手放しで礼賛した。「地方議会の宝」という声も飛んだ。
出席者が撮影しユーチューブにアップされた映像で、石原伸晃が「内田茂先生にもうひと働きもふた働きもやっていただかないことにはオリンピックはなかなか成功に導けない」と歯が浮くようなお世辞を言う様子が確認できる。
浜渦副知事のクビを泣く泣く切ることで内田との関係を維持した石原慎太郎、最初から生意気だと内田に嫌われた猪瀬直樹、傀儡でありながら最終的には内田に捨てられた舛添要一。
このような過去の都知事たちの姿を見てきた小池百合子が、イチかバチかの勝負で獲得した都知事のイスを守るため、内田を懐柔する作戦に出ることはまず間違いないのではないか。
そのために、剛腕で知られる元副都知事、浜渦武生を参謀の一人に加え、都議会の内情を熟知する元東京都議会議員、野田数を政務担当特別秘書にしたのだろう。
野田は、iRONNA編集部・松田穣の質問に対し、内田茂について以下のように述べている。
2009年の都議選で初当選し、2012年5月まで、私は都議会自民党の所属議員だった。…2009年に落選したにもかかわず…役員留任が自民党都連の中で問題視され…石原慎太郎知事も加わり、石原伸晃都連会長以下、都連の国会議員は落選した内田氏を都連幹事長から外そうとしていた。…しかし、都議会議員の数が圧倒的に多く、多勢に無勢で…都議会議員の抵抗になすすべがなかった。(中略)当時内田氏を下ろそうとしていた石原都連会長と平沢勝栄都連総務会長は、もはや逆らえないとあきらめて、今や内田氏のいいなりになってしまった。
野田の右翼的思想、人格は別として、東京都議会が腐りきっているという彼の認識は間違いない。それを改革したいという意見にも大賛成だ。
だが、「多勢に無勢」の状況は今も変わっていない。かつては自民党政治に対抗する勢力をつくるため、細川護煕や小沢一郎のもとで政治を学んだ小池が、出世のために寄る大樹を求めて、いつの間にか自民党に鞍替えしていた歩みを考えると、自分にとっての損得勘定が先にくるのではないかと、筆者には思えてならない。
オモテで小池を支える若狭勝衆院議員は、元東京地検特捜部検事であったことを売り物にし、でっち上げが明らかになっている陸山会事件では小沢バッシングに便利なコメンテーターとしてテレビ各局に重宝されていた人物だ。彼も、「改革」より「損得」という印象が強い。
「東京大改革」が都知事選から続く小池百合子像再構築のための宣伝文句に終わらないようにしてもらいたいものだが、肝心の裏方や同志が浜渦、野田、若狭らの顔ぶれでは、本質的には内田と同じ穴の貉であり、「都民ファースト」につながるとはとても思えない。
内田の利権にも配慮しつつ、「東京大改革」の看板だけは降ろさずに、多少の議会との軋轢を演出し、オリンピックと豊洲新市場、築地再開発が上手く進むにはどうすればいいか。小池がその複雑な方程式の解を求めているというのが実際のところではないだろうか。
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『国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋
著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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