ふたつのカゴとcoalition
ニューヨーク・タイムスのサイトで公開されている出口調査のデータには、分裂しているアメリカがはっきりとあらわれている。
男性の53%はトランプを支持。
女性の54%はヒラリーを支持。
白人の58%はトランプを支持。
黒人の88%、ヒスパニックとアジア系の65%はヒラリーを支持。
29歳以下の人の55%はヒラリーを支持。
45歳以上の人の53%はトランプを支持。
大学を卒業していない白人は67%がトランプを支持。
大卒の非白人は71%がヒラリーを支持。
住む地域による差も目を惹いた。
人口5万人以上の都市圏に居住する人の59%はヒラリー支持。
郊外になると50%がトランプ支持、小さな町や田舎になると、62%がトランプ支持。
プロテスタントその他のキリスト教徒の58%、カトリックの52%、そして白人の福音派教会信徒は81%がトランプ支持。
今のアメリカは「素晴らしい」と思う人の83%、「良い」と思う人の76%がヒラリーに投票。
「あまりよくない」と思う人の55%、「良くない」と思う人の79%がトランプに投票。
次世代のアメリカは「今より良くなっていると思う」人の59%がヒラリーに投票。
「悪くなっていると思う」人の63%がトランプに投票。
アメリカは確かに分断されている。でも、当然ながら、二色にわかれているのではない。
ホワイトカラーとブルーカラー。
莫大な富をたくわえている富裕層、援助なしには生活できない貧困層、その中間のいろいろなレベルの中流層。
都市圏と非都市圏。
同性愛者の結婚は当然の権利だと信じる人びとと、とんでもないことだと信じる人びと。
人種、性別、収入、職種、教育、世代、住む地域、信条など、リアルな断層はいくつもある。
現在の二大政党制、特に大統領選挙は、その無数に分断された有権者層を、無理矢理に赤または青のふたつの大きなカゴに入れる装置になってしまっている。
そして、その違いをさらに際立たせる方向に働いている。
選挙の報道では、政党や候補者がどんなグループのcoalition(連合)を味方につけることができるかということが焦点になる。
オバマ大統領の2回の選挙では、若者やマイノリティのグループといった層を中心に、幅広い層の連合を形成することができた。そしてその連合はかなりの熱をもっていた。
今回、ヒラリーのキャンペーンは、それほど熱のある連合を形成できなかった。
とにかくヒラリーは全方向的に敵が多かったしむやみに嫌われていた。
マイケル・ムーアが「残念だけどトランプが勝つよ」と選挙前にポストしたらしい記事で指摘しているように、予備選でサンダースを熱狂的に支持していた層はヒラリーが民主党候補になったことでがっくりしていて、トランプに投票しないまでも、ヒラリーを熱心に推す意欲はなかった。
反対に、トランプ推し連合のコアにいた層は、圧倒的な熱をもってトランプを推した。
政治家としての経験がないトランプは、21世紀の秩序あるアメリカ政治の世界では言ってはいけないとされていたはずの政治的に正しくない発言をズバズバと投げつけることで、そんな秩序なんかクソ食らえと思っていた人びとに熱狂的に支持された。
オバマ政権の8年間で、マイノリティやLGBTの権利尊重、女性の権利尊重はすっかり当然のものとみなされるようになっていた。アメリカの新しい常識となっていたはずのその感覚を完全に無視するトランプの発言に、一部の、とはいえかなり大きなグループの人びとが溜飲を下げ、それより大きなグループの人びとがそれを容認した。
トランプ推し連合を肉まんにたとえると、中のジューシーな肉にあたる部分が主に白人男性からなる熱いコアなサポーター。そのまわりに、こいつは狂人のようなことをいう下品のような奴だと思いながらも、いろいろな理由でヒラリーよりはマシだと思って投票した層が分厚く取り巻いている。その中には、人工中絶に絶対反対のキリスト教福音右派もいれば、トランプのほうが自分たちの利益を守ってくれるに違いないと感じる富裕層もいる。
オバマのときにオバマ推し連合に加わっていた労働組合の人々も、今回はトランプ推し連合の肉まん中央付近に流れてしまった。