ここ数年、世界中の専門家たちが「中国の不動産バブルは崩壊間近」と書きたてていますが、「なかなか弾けない」というのが正直なところではないでしょうか。しかし、無料メルマガ『石平(せきへい)のチャイナウォッチ』の著者で中国出身の評論家・石平さんが推察する「中国の不動産バブルが長続きしている理由」は、私たちの想像からはかけ離れたものでした。一体中国では何が起きているというのでしょうか。
中国経済を人質にとった「不動産バブル」 中国政府はなぜ「毒薬」を飲み続けなければならないのか?
中国では以前から、不動産バブルの崩壊を憂慮し、Xデーの到来に戦々恐々としている人が多い一方で、「バブルがなかなか崩壊しない」という現実を逆に危惧してやまない声もある。いわゆる「不動産バブルによる中国経済の人質論」というものだ。
例えば、昨年9月15日付の中国青年報に、社会科学院の魯洲研究員が登場して、「不動産市場は中国の実体経済を確実に人質に取ってしまった」と論じたのが一例である。あるいは今年3月に、香港環球経済通信社の首席経済学者である江濡山氏が「不動産は経済だけでなく政府と民衆をも人質に取った」と訴えている。
「不動産が中国経済を人質にとってダメにした」という彼らの論調の根拠は、バブルが膨らんできている中で、中国経済に占める不動産業と不動産投資の比重が、あまりにも大きくなりすぎたということである。
2016年、中国の国内総生産(GDP)に占める不動産投資額の比率は何と23.7%(国際通貨基金試算)に上っている。日本の場合、同じ16年における不動産投資の総額はせいぜい4兆円程度で、GDPの1%にも満たない。この対比から見ても、中国における不動産業の異常な肥大さがよく分かる。
不動産業がそこまで肥大化してしまうと、それが伝統的な製造業やIT産業などの新興産業の生存と発展の余地を奪ってしまう。問題をさらに深刻化させているのは、産業の「血液」ともいうべき銀行からの融資も、もっぱら、不動産市場へと流れていくことである。