東芝は米国にハメられた。原発買収で起きていた不可解なやり口

 

丸儲けしたアメリカの電力会社

東芝が窮地に陥ったのは、S&Wという大赤字会社を騙されて買収させられたからであり、S&Wが大赤字になったのは、固定価格オプションを結ばされてしまったからです。

通常、新しい原発の建設は費用超過がつきものなので、その負担は電力会社と受注企業が分担するのが通例となっています。

しかし、サウスカロライナのスキャナ電力の場合、超過コストをほとんど負担していません。スキャナ電力と東芝(WH)が、当初結んでいた原発建設契約の総額は約76億ドルでした。固定価格オプションによって追加費用を支払っても、総額は約77億ドルです。数十億の追加コストが発生しているのに、スキャナ電力の負担はほとんど増えていないのです。

東芝はアメリカ側の巧妙な策に引っ掛かってとんでもないババを引かされてしまったのです。

しかも、さらに腹立たしいことがあります。

アメリカ側のスキャナ電力は原発建設の超過コストをちゃっかりを電気料金の中に組み入れているのです。つまり、スキャナ電力は、住民から超過コスト代をせしめていながら、超過コストの負担は一切していないのです。

スキャナ電力のあるサウスカロライナでは、電力料金は、総括原価方式という価格設定方法が採られています。

アメリカでは、州によって電力料金の決め方が違っており、大まかに言って「総括原価方式」「電力自由化」の二つの地域がありますが、サウスカロライナは、「総括原価方式」を採っているのです。

総括原価方式というのは、電力をつくるためにかかったコストに一定の利潤をプラスして決められるものです。当然のことながら、発電所の建設費も、この原価に含まれることになります。

東芝(WH)に原発建設を発注しているスキャナ電力は、2009年以降、電気料金を9回も値上げをし、18%増となっています。これは、原発建設の費用がかさんだために、電気料金に転嫁するという建前になっています。

が、前述したように、スキャナ電力は、当初の原発の建設の契約額から、ほとんど上乗せはしていません。

つまりは、スキャナ電力は、丸儲けしたということなのです。

2005年から始まったアメリカの新原子力発電事業は、2010年のシェール革命によるガス発電の大躍進と、2011年の福島第一原発の事故により、大きく後退しました。そして、建設中の原発は、巨大なコスト超過により、大きな損失を蒙りました。

現在、その損失を全部東芝一人が背負わされてしまったという構図になっています。東芝が破綻しかかっているのは、それが本当の原因なのです。

image by: Shutterstock.com

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