現場から不満爆発のコネ入社がいつまでも無くならない本当の理由

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「あいつ、父親のコネであの会社に入ったんだってよ」と、少し嫉妬心も見え隠れする言い方で悪いことのように語られがちな、コネ入社。就職・転職ノウハウを企業の採用手法から教えるメルマガ『採用工学のススメ』の著者で採用コンサルタントの藤原ユウマさんは自身のメルマガで、なぜコネ入社がなくならないのかをわかりやすく面白く考察しています。

コネ入社には立派な理由がある

何回かにわたって連載してきた「学歴採用・顔採用・コネ入社が存在することを認めてしまおう」というテーマも今回が最終回。ラストは、コネ入社について考察していきます。コネ入社と言えば、世間的にもあまり良いイメージとは言えず、親や著名人の権力・パワーを存分に使って、無能な若手息子が入社して社員からの評判も悪い、といったケースも良く耳にします。

けれども、そんな状況下でもコネ入社が無くならないのは何故なのか。多くの人は、もしかしらその理由を「権力者だから人事権を好き勝手で決定できる」と感情論ばかりで考えているかもしれません。ですが、コネ入社には立派な理由があるのです。その構造を理解できれば、貴方は「コネ入社なんてズルい」という低レベルな議論から脱出することができて、企業から求められる「価値の高いビジネスパーソンの思考」に近づくことができるでしょう。では、早速見ていきたいと思います。

まず、毎週このメルマガを読んでくださっている読者の方には、何度も繰り返しになって恐縮ですが、学歴採用・顔採用・コネ入社を企業が取り入れる理由は「自社のメリットになる」からです。有能では無い社長の息子や、有名大企業の重役の使えない御曹司などが鳴りもの入りで自社に入って来て現場をかき回すのは、「企業にとってメリットがある」から認められているのです。

オーナー企業の場合

例えば、有能では無い社長の息子が入社してくる場合。多くの場合は、会社の跡継ぎとして入ってきますよね。これはシンプルに、社長の都合です。恐らく読者のみなさんの多くがイメージしている通りの理由で、いわゆる縁故採用と呼ばれるものですね。そんなわかりやすい縁故採用というか親子採用をされた会社で働く社員にとっては、「自分たちが汗水垂らして歯を食いしばって頑張っているのになんてことだ!」と憤慨する事象かもしれませんが、これは仕方ありません。
なぜなら、会社の跡継ぎとして子孫を入社させることができるような企業は、家族経営などオーナー企業であることが多く、その場合は株式のほとんどを社長(兼オーナーですね)が持っています。つまり、佐藤商店株式会社という会社があったとして、その会社の株式を持っている最大オーナーの佐藤A吉が、その会社の経営を担う社長もやっているという状況です。言い換えれば、その会社の決定権やパワーは佐藤A吉に集約されており、「会社 = 佐藤A吉」と言っても過言ではなく、佐藤A吉がやりたい放題に何でもできる状況であるという訳です。

この場合に、現場で働いている社員が何を言おうが、佐藤A吉のダメ息子であるB太が入社することは、会社(つまり佐藤A吉)にとってプラスな訳ですね。仮にB太の所為で現場が混乱しようが、会社の売り上げが下がろうが、親であるA吉および佐藤家の自尊心や権利は保証される可能性が高く、それが会社にとってのメリットです。この場合、現場で働く社員の選択肢は2つしかなく、その中で頑張って仕事をするか、辞めるか、です。
株式会社の構造上、会社の権力は多数の株式を保有する株主に集まるので、このような中小規模での家族経営などのケースでは、会社は一人のオーナー兼社長などの意向に大きく左右されてしまう運命です。社長の都合が会社の都合で、社長にとってのメリットが会社にとってのメリットという構造であることを理解しておく必要があるでしょう。

 

大企業にもコネ入社がある?

また、絶対数は少ないですが、大企業でもコネ入社は存在すると聞きますし、私自身が採用コンサルティングをする中でもいくつかケーススタディを見ました。そして、世間的なイメージの悪いコネ入社を大企業が大々的に世間に発表することはまず無いでしょうし、世の中も「まぁ、あるのかな?」位の認識なのではないでしょうか。

実際には、規模の大きな有名大企業でもコネ入社を取り入れる理由は十分にあるのです。例えば、世の中で最も知名度のある企業の一つであるテレビ局で考えて見ましょう。ここに「Cテレ(Coneテレビの略)」という仮装のテレビ局があったとします。

Cテレは有名大企業であり、一人のオーナー兼社長が会社を牛耳るようなことはありません。けれども、何人かに及ぶ経営陣の話し合いでは、コネ入社を認めようとする合理性があると想定されます。

Cテレは人気企業ですから、新卒採用に限った場合でも、受験者は年に数万人いたりします。 その中で合格者はたった数十名、アナウンサーにいたっては3名と言った感じでしょうか。では、その3名に例えば有名芸能事務所のタレントの弟がいたり、元国民的女性アイドルが合格したり、ということが起こったりするんですよね。ここで真剣にアナウンサーを目指していて、アナウンサースクールに通っているような自称「正当な努力をしている」就活生は、「コネ入社だ!卑怯だっ!!」と大声を上げます。
けれども、これは一切非難されるべきことではありませんし、収益アップにつながるからこそ、コネ入社が成立しているという視点を持つべきです。

なぜなら、有名芸能人の兄弟人気アイドルがCテレに入社することによって、収益がアップするからです。前回もお話しましたが、テレビ局の収益モデルは基本的にCM広告の一本足です。言い換えれば、視聴率を取れるタレントや広告を出稿してくれる企業・広告主にテレビ局は足を向けて寝れず、そことの関係性がテレビ局の成否を決めることにつながるんですよね。
何せ売れっ子芸能事務所が「オタクの局にはウチのタレント出さないよ」とか言われたら致命的ですからね。そうなると、芸能事務所との関係を蜜月なものに維持・向上していくために、所属タレントの親族がいくら無能で現場に害悪があっても、収益にとってはその採用は大きくペイする(プラスになる)という訳ですね。

加えて、広告一本での収益モデルで事業が成り立つ現状では、収益をアップするために、視聴率を上げる必要がある(多くの人に見てもらうことで、高いCM効果を広告主にアピールする必要がある)訳ですよね。そこで、カワイイ顔採用のアナウンサーを採用したり、社員としてタレントを採用できたならば、これほどコストパフォーマンスの良い採用は他に無いのです。

このビジネス構造が理解できると、コネ採用をすることによって、大きな収益が上がるという構造があるからこそ、現場から不満が上がり続けていてもコネ入社が一向に無くならない理由がわかります。学歴採用も顔採用も、そしてコネ入社も、いずれも合理的な理由で企業は押し進めていたりするんですよね。
この部分をしっかり抑えて、これらを無策に批判するような非生産的なことに時間とパワーを使うのではなく、「自分だったらどのような価値を与えられるか(受験する企業の収益にプラスになるか)」を考えることに情熱を注ぎましょう。それができる人は、一般人だろうが華々しい経歴が無かろうが、人気企業への就職・転職への道が開けてきますよ。

藤原ユウマ『採用工学のススメ』

『採用工学のススメ』

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個人における仕事やキャリアの選択は非常に重要である。どんな企業でどのように働くかは、これからの大きなテーマであり、裏返すと企業はそんな個人の思考や嗜好を理解して人材採用に向き合っていかなければならない時代である。 このメルマガでは、未だ体系化されていない企業の採用活動を紐解いていくもの。ここでは「採用工学」と呼ぶが、それを理解すれば企業はより優秀な人材の確保が可能になり、個人にとっては普段知りえない採用活動の裏側を知ることで、より良い企業選び・キャリア構築の手助けになると考えている。

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