どん底からの大逆転。翼の折れた「はとバス」が起こす奇跡の飛翔

 

「お客様に満足していただくためには、労を惜しまない」

なぜ、はとバスが赤字に陥ったのか。確かにバブル崩壊による不景気は大きな打撃だったが、その後、景気が徐々に回復していく中でも、はとバスが業績を下げていったのは、社員の中に顧客第一主義が浸透していないからだと考えた。

それが浸透してこそ、お客様がはとバスを利用してくれる。宮端さんは社員全員に丸一日の研修を受けさせようと考えた。総額で1,000万円近くかかるというので、経理担当役員からは「そんなお金どこにあるんですか」と反対された。宮端さんは「この1,000万円については、私個人で責任を持つから」と言って、なんとか納得してもらった。

運転士、ガイドから、営業所の社員、予約センターのオペレータまで、1回30人ほど集まって貰い、7、8人のグループに分かれて、「サービス日本一と言われるためにはどうすればよいか」などというテーマで討論をし、社長以下の幹部にまとめを報告する。

そこからサービスを向上させるためのアイデアが、初年度だけで160件ほども出てきた。この研修を通じて、宮端さんは、社員がいかにはとバスという会社を愛しいかに熱意を持って働いているか分かった。

ある運転手から出た提案の一つに、お客様がバスから乗り降りする際に、踏み台を置いては、というアイデアがあった。観光バスから何度も乗り降りするお客様を思いやっての提案であった。

しかし、実施するとなると、踏んでもぐらつかない踏み台にする必要がある。宮端さんが「かなりの重量になると思うが、その重い踏み台は誰が運ぶのか」と質問すると、「バスが止まり、お客様が乗り降りするために、私たちがトランクから出し入れします」。

「お客様に満足していただくためには、労を惜しまない」という姿勢に心を打たれました。鉄製の頑丈な踏み台は、一個50万円もする代物でしたが、150台のバスすべてにつけることにしました。

 

運転士によると、この踏み台を出すと行く先々で他の観光バスの乗客から羨望の視線が集まるということで、お客様の乗り降りが楽になったばかりでなく、はとバスのサービスの高さを示す、よい宣伝になったようです。
(同上)

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