現役医師が警告。健診でも見つかる不整脈を軽くみてはいけない訳

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健康診断の心電図検査で「心房細動」を指摘された方は少なくないのではないでしょうか。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田安春先生は、心房細動は「脳梗塞」の原因にもなるので注意が必要とした上で、検査や薬で予防する前に、生活習慣を変えることの重要性を記しています。

心房細動は脳梗塞の原因の一つ

心房細動という不整脈があります。心臓には4つの部屋がありますが、そのうちの1つの左心房で電気の流れに乱れが起こるものです。そのために、左心房の血流によどみができて血の塊ができやすくなります。心房細動の問題の一つは、症状があまり出ないことが多いことです。症状が全くなくても心房細動となっていることがあるのです。

2つ目の問題は、その血の塊が剥がれて血流に乗り脳の血管に詰まってしまうことがあることです。 脳の血管が詰まって脳細胞に障害が起きると脳梗塞となります。長嶋元巨人監督、オシム元サッカー日本代表監督、小渕元首相などの多数の有名人がこの病気が原因で脳梗塞をきたしました。小渕さんはまもなく亡くなりました。オシムさんは監督辞任となりました。長嶋さんは奇跡的に復活しましたが、構音障害と体の半身の不全麻痺を呈しています。

このように問題のある心房細動。早めに見つけて、脳梗塞をある程度予防できる薬を始めることができれば良かったと思う人も多いでしょう。心房細動を見つけるには心電図が必要です。心電図を毎年取ることでなんとか心房細動を捕まえることができる可能性があります。今回は、この心房細動を捕まえるために心電図検査を一般の人々に対して毎年1回定期的に行うことの是非について考えてみましょう。

心房細動の頻度

心房細動の頻度は高齢になるほど高くなります。日本人のデータでは、70歳代男性で3%、70歳代女性で1%、80歳代男性で4%、80歳代女性で2%です。すべての年齢層を含めた 日本人全体のデータでは男女合わせて約0.5%となります。この0.5%という数字から、スクリーニング検査で心房細動の人を一人みつけるためには、約200人に対して検査を行わなければならないことになります。

ここで、心房細動で血栓ができるのを予防する薬について考えてみましょう。一般的には、血液サラサラの薬と呼ばれています。代表的な薬はワルファリンです。最近ではまた、副作用が少ない薬が開発されています。しかし、これらの薬の効果をみてみると、脳梗塞のリスクを絶対的なリスクとして約2%下げることがわかっています。

ここで「絶対的な」リスクという評価を使いました。リスクの評価法には絶対的なものと相対的なものがあります。例えば、脳梗塞が起こるリスクが5%の人でこの薬を飲んだ場合 、絶対的なリスクが2%下がるので、リスクは3%となります 。相対的なリスク評価を用いると、5%が3%となるので相対的なリスクでは40%下がることになります。 一般論として、薬の効果を確認するときには、どのリスク評価法を用いているかについて、担当の医師に尋ねてみましょう。

スクリーニング検査の限界

脳梗塞の絶対的なリスクが2%下がる、ことから何が言えるのでしょうか。それは、1人の脳梗塞を予防するためには、 50人の心房細動の患者さんを薬で治療する必要があることを意味します。1人の心房細動を見つけるためには200人の人々に対してスクリーニングを行わないといけないと前に述べました。つまり、1人の脳梗塞を予防するためには、 50人× 200人=1万人に対してスクリーニングを行う必要があるのです。

心電図のコストを1回あたり1000円とすると、1人の脳梗塞を予防するために千円× 1万人=1000万円の社会的負担が必要になります。

検査は万能ではありません。どのような検査にも限界があります。心房細動に対する心電図検査では5〜10%の偽陽性があるといわれています。ここで、偽陽性とは検査で心房細動があるとされたのにもかかわらず、実際は心房細動が無かった割合です。

心房細動偽陽性のリスク

では、70歳代の高齢者に対して検査を行ったらどうなるかについてみてみましょう。先に紹介した日本人の心房細動 データでは、70歳代男性で3%、70歳代女性で1%でしたので、合わせると約2%になります。70歳代の100万人では心房細動が2万人、そして心房細動がの無い人が98万人ということになります。

この98万人も心電図検査を受けるので、5%の偽陽性率をかけると4万9千人が誤って心房細動とされることになります。もしこのうち半分の人たちが血液サラサラの薬を内服することになれば、その薬によって深刻な出血のリスクが絶対的に1%増加することから、250人の人々で深刻な出血をもたらす可能性が出てきます。

今回の結論は、症状のない人では心房細動を見つける目的での心電図スクリーニング検査はオススメできない、ということです。ところで、以上の計算はあくまでも見積もりにしか過ぎません。薬の効果が実際にはもっと大きく、そして副作用がより小さい可能性もあります。さらには、心電図検査の正確度も高くなっている可能性もあります。

これらを正確に評価するためにはスクリーニング検査を確実に評価できる臨床試験を行う必要があります 。おそらく数年以内にそのような試験結果が出てくるでしょう。でも今、人々にお勧めできるのは心房細動にならない生活習慣です。心房細動のリスクである、高血圧糖尿病肥満長期大量飲酒などを予防することがもっと大切なのです 。

文献

US Preventive Services Task Force. Screening for Atrial Fibrillation With Electrocardiography
US Preventive Services Task Force Recommendation Statement. JAMA. 2018;320(5):478-484.

image by: Shutterstock.com

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