人は恐怖を愛している?人類が今日ここまで繁栄できた納得の理由

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「人生は苦痛であり恐怖である。だから人間は不幸なのだ」――ロシアの文豪ドストエフスキーの言葉ですが、恐怖心を持ちそれと向き合うことができたからこそ、人間には社会性があり、いまの繁栄もあると、メルマガ『8人ばなし』の著者・山崎勝義さんは考察します。「恐怖心」こそが人を人たらしめるとはどういうことなのでしょうか? 

扁桃体と恐怖心のこと

大脳辺縁系、海馬の近くに扁桃体という器官がある。他の大脳辺縁系の諸器官同様、情動に深く関わっており、中でも特に恐怖という感情との繋がりが強いところである。

ここが損なわれると、以下サルによる実験結果であるが、

  • 初めて見るものに対しても警戒することなく近づく
  • 動物の種類に関係なく相手が鳥や犬でも交尾をしたがる
  • 食べられない物や危険な物でも口に入れる

などの異常行動が現れる。

勿論、高次に脳の発達したヒトにこれをそのまま当てはめることはできないが、同じように社会性を有する霊長類としては全く無視もできないところである。そういったことを考えに入れれば、我々の誇る社会性というものも恐怖という制動装置がなければおそらくまともに機能することはないであろう、といったやや乱暴な物言いも可能のように思えて来る。つまり、恐怖ほどヒトを人たらしめているものはないということである。

然るに恐怖というものは決していいイメージで捉えられてはいない。それどころか人として克服すべき負の感情といったイメージが強いのではないだろうか。おそらく、それは恐怖というものがヒトが生存するために等しく持ち得ている本能的感情であるのに対し、それを打ち破る意志の力は誰もが等しく発揮できるものではないということを人類進化史の様々な局面から誰もが経験的に知っているからであろう。

仮に人類が全員、憶病(=慎重)だったら未だに人類は東アフリカの森の中に暮らし草原に出ることさえなかったであろう。逆に無謀(=勇猛)だったらとっくに滅んでいることだろう。しかし今、我々人類は地球全域に亘って繁栄している。これは慎重さと勇猛さ、悪く言えば、憶病さと無謀さの絶妙なバランスの上に成り立っている繁栄なのである。

それにしても、本来恐怖で抑制されている人間がどういうメカニズムでその恐怖を克服して一見無謀とも思えるほどの勇気を出すことができるのだろうか。その原動力を前に意志の力と言った。それが発現する場所こそ、人間だけが特異に発達させた大脳新皮質・前頭前野なのである。

この部分は論理的思考など主に理性を司る。人間の脳の機能を乱暴に縦割りに整理することはできないけれども、敢えてざっくりまとめれば、大脳辺縁系(別名:大脳古皮質)・扁桃体は情動、特に恐怖と関連し、大脳新皮質は理性と関連する。ここでは、情動は古皮質、理性は新皮質といった、新古の対応関係を一応指摘しておくに留める。

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