【書評】元中国人が暴露「史上最大のウソ集団」中国共産党の実態

 

中国の虚言史の根本にあるのが「易姓革命」だ。儒教では、天命を受けた有徳の天子が王朝をつくり、万民を統治すると説く。その王朝が徳を失ったら天は新たに別の姓の有徳者に天命を与え新王朝を建てるという。どんな暴君であっても、前王朝を滅ぼして新王朝を建てれば聖君になれる。どんな優れた有徳者であろうと、滅ぼされたら後から「暴君だった」という物語がつけられる。

だから王朝交代は頻繁に行われる。暴をもって暴に代わる。天命なんてありやしない。「易姓革命は単なる欺瞞であり中国史における最大の嘘である。しかし、この「易姓革命」の嘘はいまも続き、習近平の神格化が進んでいる。日本では「嘘つきは泥棒の始まり」だが、中国では「嘘つきほど成功する」なのである。

同時に、愚かな者は騙されて当然だという風土でもある。誰もが騙し騙される時代にあって、いかに嘘に対抗するのか。嘘を見破るだけでなく、嘘には嘘で対抗するのがベスト、鉄則とされる。さらに、「いちばん親しい者こそが最大の敵」となる、徹底的な人間不信社会なのだ。毛沢東は劉少奇を失脚させ客死に追い込み、林彪は毛沢東暗殺を目論み、露見して逃亡中に航空機事故死した。

トウ小平は絶大な信頼を口にしていた胡耀邦と趙紫陽を失脚させ、習近平は自分を総書記に抜擢してくれた江沢民派に対して反腐敗運動を仕掛け、その幹部らを失脚に追い込んだ。面白い話が続々と。この本は小見出しが秀逸、それだけを拾い読みしても、史上最大の嘘集団の実態がわかる。

中国では建国も亡国も嘘から始まる。『三国志』には英雄たちが多く登場する。そのなかで一番教養があって文才、詩才に長け、謀略家であって大政治家である人物といえば魏の曹操だろう。この男の得意技こそ、嘘であった。

その稀代の嘘つきも、二重スパイに騙されて「赤壁の戦い」で生涯最大の敗戦を喫する。ライバルが劉備。『三国志演義』では義理人情に厚く、誠実な主人公として描かれ、殆ど聖人君子だが、現実は騙し討ちで国を盗んだ男である。しかし、今の中国人には優柔不断かつ偽善的とされ、曹操の強いリーダー像のほうが好かれている。

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