どん底モスバーガーと復活マクドナルド、何が明暗を分けたのか?

 

マクドナルドを救った「顧客本位の経営」

KODOの導入で大きかったのが「顧客本位の経営ができるようになったことだろう。導入前までは少なからず「売りたいものを売るといった自社本位の経営」がなされていたように思える。特に商品開発や商品の打ち出しでそれが顕著だった。しかし、KODOの導入で顧客の声を幅広く拾うことができるようになり、次第に「顧客本位の経営」に変わっていった。

そのことが如実に現れたのが、通称「名前募集バーガー」を販売したことだ。同社初の試みとして、新発売するハンバーガーの正式名称を公募し、16年2月から売り出したのだ。話題を集めることが大きな目的だが、商品名を顧客に決めてもらうことで「顧客本位の経営を行なっていることを内外にアピールする思惑もあったと筆者は考えている。商品名は売れ行きを大きく左右する重要な要素となるが、その決定権を顧客に渡すことほど、「顧客本位の経営」を行なっていることを分かりやすい形で人々に印象づける施策は他になかったのではないか。

マクドナルドは「名前募集バーガー」を皮切りに「顧客本位」の打ち出しを次々と繰り出していった。商品の人気投票を行う「バーガー総選挙」やマクドナルドの愛称をかけて商品のツイート数を競うキャンペーンを開催するなど消費者参加型の施策を実施してきた。これらは、顧客本位の考え方がないと生み出せなかっただろう。マクドナルドがKODOなどを通じて顧客と真摯に向き合ってきた賜物ではないか。

こういった施策が功を奏し、全店売上高は鶏肉問題前の水準にまで回復した。鶏肉問題でどん底を味わったわけだが、逆境をバネにできたことが成功の大きな要因だろう。

マクドナルドが好調の一方、ライバルのモスバーガーの業績は冴えない。運営会社のモスフードサービスの18年4~12月期連結決算は、売上高が前年同期比7.7%減の502億円と大幅な減収となった。純損益は2億円の赤字(前年同期は22億円の黒字)だった。

18年8月に複数の店舗で起きた食中毒事故で業績が大きく悪化した。食中毒事故をマスコミが大々的に報じ、モスフードサービスは自社のホームページ上に同問題が起きたことを9月中旬に公表した。これにより、9月の既存店売上高は前年同月比15.1%減と大幅な減収となってしまった。その後も業績は回復せず、10月14.9%減、11月12.9%減、12月8.4%減、19年1月10.8%減と大幅な減収が続いている

もっとも、モスバーガーの不調は食中毒事故の前から起きていた。食中毒事故発生月の18年8月まで既存店売上高は7カ月連続で前年を下回っていた。客数に関しては数年前から現在までマイナス傾向が続いている。客離れは食中毒事故以前からのものなのだ。

print
いま読まれてます

  • どん底モスバーガーと復活マクドナルド、何が明暗を分けたのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け