医師や検査機器不足の地域に光。進化続ける人工知能診断システム

 

人工知能による診断エラーの予防

最近、中国の広州医科大学の米国のカリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究の結果がNature Medicine誌に掲載された。約130万人以上の小児患者での電子カルテデータをディープラーニングで学習させたシステムによる診断サポートの結果だ。

このシステムは経験ある小児科医に匹敵する95%の正確率を示した。このシステムを構築する際に、専門の医師集団によって、多様な症状と疾患名を一万語のキー用語に整理する電子辞典を作成していた。ビッグデータ由来のシグナルデータについて、キー用語を用いてコンピューターに学習させたのだ。

米国IBMのWatsonもディープラーニングができる人工知能であるが、実際の患者データを入力するのではなく、論文の内容を学習させている点で、今回の米中共同システムとは異なる。東大病院の患者がまれな白血病であることを診断したことで日本のメディアでも話題となった。

また、英国Babylon社が開発した人工知能システムは、すでにルワンダで数万人の人々に利用されている。これは、症例報告論文を学習させたものだ。そのシステムも平均的医師の診断率より良かったという。ルワンダなどのような、医師や検査機器が不足している地域で特に役立つであろう。

日本でも鳥越恵治郎先生らが開発した「病名思い出しツール」は、40年以上前からデータ入力が行われ、和歌山カレー事件での原因毒物の迅速な特定に寄与した世界最高レベルの診断サポートシステムである。このシステム以外にも、阿部吉倫先生や佐藤寿彦先生らのシステムも登場してきている。優れた和製システムが日本も広がることにより、診断改善につながることを期待したい。

文献:Liang H, et al. Evaluation and accurate diagnoses of pediatric diseases using artificial intelligence. Nature Medicine. 2019 Mar;25(3):433-438.

image by: Shutterstock.com

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