園児も「所有」を主張。NY在住日本人社長が幼稚園で見たアメリカ

 

うちには4歳の双子がいます。今月からPre-kindergarten、通称Pre-Kに通い始めました。Kindergarten(小学校)に通う前(Pre)。つまり幼稚園です。通わせているその幼稚園は、妻が入念に下調べをして、マンハッタンでも非常に評判のいい幼稚園。

我が子の教育関連はすべて妻に任せっぱなしの無責任父親の僕も、初日のオリエンテーションには駆り出されました。人生で初めてママから離れて、それぞれひとりずつ教室に閉じ込められます。それ自体は当然なこととしても、うちは双子。それぞれのクラスのオリエンテーションに、親は同席する必要があるため、無責任パパも同行させられたわけです。ママがトイレに行っただけで、どこー!?と号泣する息子のクラスには妻が。おそらく明日からでもひとりで生きていける娘のクラスには僕が入りました。

担任のTammy先生は大きくて、にこやかで、やさしそうな白人のおばさん。とてもいい印象で、外見だけで娘を預ける父としては安心しました。僕自身も、初めてこの国の幼児教育の現場に足を踏み入れました。面倒くささ半分で無理やり連れて行かれたにも関わらず、いざ授業(?お遊戯?)が始まるとかなり興味深く、面白い経験でした。

確かに、軍隊のように、一斉にみんなが同じことをして、同じように座り、同じように先生が読む絵本を囲む日本に比べ、こちらのクラスでは、みんなバラバラ、好きに遊んでいます。わたしたちは、個性を大切にし、その子その子の個性を伸ばしていきます。オリエンテーションが始まる前の、全体挨拶の際、確かに、校長先生はそう言いました。

なるほど、日本よりは前述の見識者が主張するように、好感が持てます。初日から、子どもが幼児の段階ではアメリカ暮らしでよかったかな、と思わされるほどでした。ただ。なんとなく。うまく説明できないのですが。なぁんかね…。日本人の僕には少し腑に落ちない印象も持ちました。

うちの娘が、クレヨンで大きな画用紙にお絵描きをしている時。おともだちのMiaちゃんが金髪をなびかせ、画用紙の上からクレヨンでさーっと線を引いて、こう言います。「Miki!いい?ここからは私のスペースよ。あなたはこっちから向こうで遊んで」と。

なんてシッカリして頭のいい子だろう。おそらく入園の時期の関係で、うちの娘よりはひとつ年上のはず。体がうちの娘より一回り大きいのはアメリカ人だからではないはずです。

「そして、ここからこっちはアタシのスペース。あなたは入ってきちゃいけないの」とても理にかなっています。わーぎゃー泣きわめく日本の幼稚園児より、ずっと賢く、ずっと大人です。親としては感謝しなきゃいけない場面です。本来なら4歳、5歳は即ケンカになってもおかしくない。

クレヨンの取り合いになってもおかしくないシーンです。初日のオリエンテーションから、そんな聞き分けのいい子、うちの双子とはえらい違いです。それを見た僕も感心し、白人の太ったおばさん先生も満足そうな顔をし、白人のおかあさんも誇らしげに笑っています。スペースの取り合いになるより1000倍いいし、なにより正論です。

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